決定版アジアの怪談本『亜細亜熱帯怪談』が面白すぎると評判! タイの幽霊物件に住む高田胤臣&丸山ゴンザレスインタビュー

11月24日(日)16時0分 tocana



 2019年の9月に『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)という本が発売された。


 タイを中心としたアジアの怪談がたくさん収録されている一冊だ。


 海外の怪談と言っても、図書館で資料を漁って得た情報をただ載せたわけではない。実際に、怪談の現場に足を運び、現地の人に話を聞き、生々しくルポルタージュしている。 ページ数も500ページ強という圧倒的ボリュームで、面白いと評判だ。


 執筆しているのは、タイに在住しながらライター活動を続ける高田胤臣さん。タイに移り住んで、もう20年近くになるという。氏には『バンコクアソビ』(イースト・プレス)、『タイ 裏の歩き方』(彩図社)など、タイのグルメや遊びを紹介した著書が多数ある。


 そして本書の監修をしているのはテレビ、雑誌、書籍などマルチに活躍する丸山ゴンザレスさんだ。『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社)、『世界の混沌を歩く ダークツーリスト』(講談社)など多くの話題書を刊行している。


 今回は、高田さんが日本に滞在しているタイミングでお時間をいただき、丸山さんと2人の対談形式でお話伺った。





——そもそも“アジアの怪談本”を出そうと思ったきっかけはなんだったんですか?


丸山 4年以上前、高田さんとタイを回った時に、路上にシマウマの人形が大量に置いてあるのを見たんですよ。それで高田さんに「これなんですか?」って聞いたら、「タイでは人が死んだ場所にシマウマの人形を置くんですよ」って言われて、なんだそりゃ!? って大いに驚いたんです。


 すべてはそこから始まってますね。


高田 正直、タイでは日常でよく見る光景なので気に留めてなかったんですよ。丸山さんがすごく食いついたのを見て、「そっか興味ある人には、引きがある出来事なんだな」って初めて思いました。





——たしかに、道端に置かれた大量のシマウマの写真は異様でビックリしました。ただあんなに異様で目立つ風習なのに「なぜそんな風習が始まったのか?」を突き止めるのにはとても苦労されていて、意外でした。


高田 タイの人ってすごい怖がりが多いんですよ。みんな怖がってなかなか話してくれない。なんとか話を聞くことができても「その現場に行こうよ」と誘うと、まず絶対に来てくれません。


——タイの新聞には死体の写真がよく載っているというイメージでした。だけど怖がりなんですね?


高田 そこは日本とは逆かもしれません。日本人は死体を怖がりますけど、タイ人はむしろ死体は大好きです。でも霊に関してはとても怖がります。怖がってるため、話を深くまで聞けなかったりして情報収集には苦労しました。また現地に行っても、地元の人はそもそもまったく話を知らなかったり。


丸山 タイの人って過去に関していい加減なんですよね。日本人に比べたらあんまり気にしてない。


高田 そうですね。たとえばタイの国鉄って130年くらいの歴史があるんですが、開通の頃からある駅で駅長さんに「この駅は建って何年くらい経つんですか?」って聞いたら「え? ああ、80年くらいなんじゃない?」みたいに言われました(笑)。こちらの方が詳しいという。鉄道の学校(国鉄入社のための鉄道職員養成学校)を出ているから、絶対に習ってるはずなんですけどね。自分が働いている駅ですら、その歴史には興味がないんでしょうね。


 シマウマも「なぜシマウマを置くのか」にはなかなかたどり着けませんでした。過去のことや起源について、残されてないんです。それでもいくつかの答えにはたどり着くことができました。ただし、これが100%正しい答えというわけではありません。






——それは長年、タイに住んでいる高田さんだからこそできた調査ですね。物見遊山の旅行客では、とてもたどり着けないと思います。


丸山 本当にそうだと思います。ただ、高田さんはタイに住んで長いので、感覚が日本人離れしているんですよね。高田さんに「妊婦は死ぬと悪霊になるじゃないですか?」って普通に言われて、何言ってるの? って思いました(笑)。


 本書のプロジェクトとしてはまず高田さんに、日本人としての感覚を呼び戻してもらうところからはじめました。そして日本とタイとの架け橋になってもらいました。


高田 その悪霊の名前はピー・ターイタンクロムですね。妊婦が胎児を腹に抱えたままなくなると、ピー・ターイタンクロムという悪霊になります。


 タイは仏教国ですけど、そのベースには精霊信仰があります。精霊はどこにでもいるんですね。たとえば神木は日本では基本的には神社にしかありませんが、タイは街中にあります。また祠もそこら中にあります。タイに浸っているうちに、いつの間にかそういう文化に慣れていました。


——本書にはピー・ターイタンクロムのほかにも、内臓をぶら下げた女の霊ピー・グラスー、人にとりつき血や内臓を求めて歩き回るピー・ポープなどさまざまな悪霊が登場します。日本人にとっては、まったく見慣れない悪霊たちは面白くも感じますし、とても怖くも感じました。


 そうした伝統的な怪談も怖いですが、一方で現代の心霊スポットも生々しくて恐かったです。本書を取材する上で何か心霊現象が起こったりしましたか?


高田 ある怪談の現場に行こうとしたら、工事していたり、道が塞がれていたり、でどうしても行けませんでした。こういう時には無理して行っちゃいけないんじゃないかと思い、帰ってきましたね。


 あと、取材中に急に日本語が読めなくなったことがありました。ひらがなすら思い出せないんです。その現場から自動車で2〜300メートル離れたら、パッと日本語が戻ってきました。奇妙な経験でしたね。





丸山 心霊現象と言えば、高田さんのタイの家がすごいですよね? そもそもすごいいわくつきの物件ですよね。


高田 警察による麻薬の押収のニュースを見ていたら、「どこかで見たことあるな?」と思いました。よく見てみると、僕が住むマンションの隣の棟でした。


 後日、隣の隣の部屋に住んでいた黒人が、麻薬の件で逮捕されていました。先の事件のつながりで逮捕されたみたいです。


——そのご自宅で、心霊現象が起きるのですか?


高田 何年か前に日本のラジオに電話出演したんですが、雑音が入らないように家族もいない時に、窓もしめて、テレビも消してから電話を受けました。でも司会者からは「テレビを消してもらっていいですか?」って言われるんです。え? 消してますよ。と言うと、「後ろで女の人がすごい笑ってる声が聞こえます」と言われました。そんなことが何度かあったくらいですね。


——じゅうぶん怖いです……。






——高田さんは日本人唯一の華僑報徳善堂(※)のボランティアスタッフだと聞きました。もう15年も続けていらっしゃるそうです。ボランティアをする中で、何か印象深い経験をしたことはありますか?


(※華僑報徳善堂とはタイの国内に展開する民間のレスキュー組織。けが人の運搬、死体の処理などをする。)


高田 華僑報徳善堂は基本的に死体を片付けるのが仕事です。最初に取り扱った遺体はおじいさんでした。全身真っ黒になっていたのですが、髪の毛だけはキレイな銀髪だったんです。こんな風に髪の毛は残るんだ……と思って近づいて見てみると、銀髪だと思ったものは全部ウジ虫でした。


 そんな死体にまつわるエピソードはたくさんあるのですが、たとえばこんな話もありました。


 とある現場に急行した時なんですが、僕は荷台に乗っていて無線を聞けていませんでした。現場に到着したのですが、無線を聞いていないので、どこに死体があるかわからない。


 周りを見渡すと、上を向いている野次馬のオジサンがいたんです。死体の方見てるのかな? と思って、そのオジサンの横に行って「死体が見えるの? あっちの方?」と話しかけながら、彼が見ている方を見上げていたんです。オジサン、全然答えてくれないなあ? と思っていたら、なんだか周りの人たちがザワザワしている。


 あれ? と思ってよく見てみたら、彼が死体でした。


 工事現場から落っこちて、杭がお尻から脳天まで突き刺さって亡くなった人でした。顔をよく見たらすごい苦しそうな顔をしていました。集まっていた野次馬の人たちからは「あいつ、おもしれえな」って笑いが起こっていました。


——すごいエピソードですね!! 霊とは違いますが、それ以上のインパクトあるお話だと思います。


『亜細亜熱帯怪談』の話に戻りますが、本著の表紙は美人の幽霊が口から血を滴らせたり、黒い骸骨が走ったりと、かなりインパクトがあります。この表紙はどのように作られたんですか?





丸山 そもそもこの表紙の元になった古いホラー映画のポスターがあったんです。表紙にそのポスターを使用したいと思ったんですが、その映画に関係するありとあらゆる会社が全部倒産していたんです。その事実は、ある意味とても恐かったですね。


高田 その看板を描いた人は80歳前後でした。現在生きているか分からなかったですし、同世代の画家たちはすでに王様に絵をプレゼントするような大御所になっていたので、たとえ生きていても許可を取れないんじゃないか? という話になりました。


丸山 勝手に使っちゃう? とも思ったんですが、いややっぱりキチンとしなければいけないと思い、新たな画家を探すところからはじめました。



高田 バンコクにマーブンクロンセンターという巨大なショッピングモールがあります。そこに、画家が絵を売るブースがあるんです。テレビ電話で日本とつなぎ、そこに飾られている絵を写しながら、「どの絵を描く画家がいいかな?」ってネット上で協議しながら探しました。


丸山 近未来なテクノロジーをすごくアナログで使ってましたよね(笑)。そこで、いい感じの人がいたので頼むことにしました。ポスターの絵をモデルにしていますが、新たなイメージで描いてもらいました。


高田 そうしたらなんと、かなり大きな油絵で仕上がってきました。日本にデータ化して送るためにスキャナーを使える場所を探したのですが、その大きさをスキャンできるところがなかなか見つかりませんでした。


 結局、絵の上と下を別々でスキャンして、日本でデザイナーさんにつなげてもらいました。なかなか大変な作業でした。


——苦労なさっただけあって、異国情緒に溢れる素敵な表紙だと思います。


 拝読させてもらったんですが、普通の街中に神木があったり、心霊スポットがあったりするのに驚きました。タイには何度か遊びに行ってるのですが、改めてそういうスポットを巡りたくなりました。


丸山 それこそ、『亜細亜熱帯怪談』の正しい読み方だと思います!! 「ダークツーリズム(※)」という言葉がありますが、本書はそのさきを行く「ゴーストツーリズム」を目指しました。


(※ダークツーリズムとは人が亡くなった場所や災害、戦争のあった場所を巡る観光のこと。)


高田 古典的な怪談から、現代の実話怪談までたくさん収録しました。厚い本ですけど、すっと読みやすく書いています。


 また、この本には地図を載せています。地図を頼りにすれば、読者のみなさんもこの本に書かれた怪談のスポットに行くことができます。本書をガイドブックにしてどんどん旅行してほしいですね。


 これからもライフワーク的にさまざまな怪談スポットへ足を運んで行きたいと思います。



——いつもと一味違うタイ旅行に行きたいと思っている方、日本の恐怖譚では飽き足らないと感じ始めた怪談マニアの方、『亜細亜熱帯怪談』オススメです!!

tocana

「怪談」をもっと詳しく

「怪談」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ