救世主となるか?発泡スチロールを食べてくれるアフリカ原産のミールワームが発見される
2024年11月26日(火)19時0分 カラパイア
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プラスチックごみ問題に立ち向かう新たな救世主となるかもしれない虫の幼虫がアフリカのケニアで初めて発見された。
これまでもプラスチックを食べる虫[https://karapaia.com/archives/52288641.html]は見つかっているが、アフリカに生息する種としては初の発見となる。
ゴミムシダマシ科の幼虫、レッサーミールワームが食べるのは、発泡スチロールの原料となる「ポリスチレン」というプラスチックの一種だ。
非常に使い勝手のいいプラスチックなのだが、耐久性が高く微生物や自然分解では何百年もかかる厄介者。薬品や熱で処理するとコストが高くし、汚染物質が発生してしまう恐れがある。
だが数ミリサイズのレッサーミールワームなら、もりもりと食べて消化してくれるというのだからありがたい。
アフリカで初めて発見されたプラスチックを食べる幼虫
ケニア、国際昆虫生理生態学センターの研究チームが発見した発泡スチロールの原料となるポリスチレンを食べてくれるのは、ゴミムシダマシ科の甲虫、ガイマイゴミムシダマシ(Alphitobius diaperinus)の幼虫、レッサーミールワーム(lesser mealworm)だ。正確にはその亜種である可能性が高いそうだ。
この幼虫がよく見られるのはニワトリの飼育場だ。そこは暖かく、エサも豊富にあるのだから、彼らにとっては理想的なゆりかごとなる。
プラスチックを食べる幼虫がアフリカで発見された意義は大きい。
アフリカ諸国の中には、プラスチック汚染が非常に深刻な地域がある。プラスチック廃棄物は世界中で起きている環境問題だが、とりわけアフリカはプラスチック製品の輸入が多く、その一方で再利用やリサイクルはあまり進んでいない。
そんな状況を天然のプラスチック処理生物が解消してくれる可能性があるのだから、期待されるのも当然だろう。
発泡スチロールのゴミの山 Photo by:iStock
ポリスチレンにエサを組み合わせることで消化効率がアップ
研究チームは期待のレッサーミールワームを1か月以上飼育し、その食べっぷりを確かめてみた。
具体的には、この幼虫を3つのグループに分け、「ポリスチレンのみ」「”ふすま”(小麦のカラのくず。栄養価が高いエサ)のみ」「ポリスチレンとふすまの組み合わせ」のいずれかを与え、その様子を観察してみた。
その結果わかったのは、ポリスチレンだけを与えるより、ポリスチレンとふすまの組み合わせの方が、幼虫の健康状態が良かったことだ。
また組み合わせのエサは、ポリスチレンの消化を良くしてくれることもわかった。
つまりレッサーミールワームは確かにプラスチックを食べてはくれるが、それだけでは栄養が十分ではないということだ。
ポリスチレンを効率よく食べてもらうためには、バランスの取れたエサも与えることが重要になる。
きちんとバランスの取れたエサ(つまりポリスチレンとふすま)を食べた幼虫は、実験中に全ポリスチレンの11.7%を分解したという。
苦手な人に配慮したレッサーミールワームがポリスチレンを食べる姿のイラスト
プラスチック消化の秘密は消化器官内の細菌
レッサーミールワームがプラスチックを食べられる秘密は、体内の細菌にあるという。与えたエサによって、消化器官にひそむ細菌の構成が大きく変化するのだ。
たとえばポリスチレンを与えられた幼虫の消化器官では、「Proteobacteria」や「Firmicutes」が多くなる。これらの細菌は、さまざまな環境に適応し、さまざまな物質を分解することで知られている。
「Kluyvera」「Lactococcus」「Citrobacter」「Klebsiella」といった、合成プラスチックを消化する酵素を作る細菌も増える。都合がいいことに、これらの細菌は、昆虫や環境に害をなすこともない。
研究チームによると、こうした細菌の豊富さは、幼虫がプラスチックを食べるうえで彼らが大切な役割を果たしているだろうことを示しているという。
そもそも幼虫は生まれつきプラスチックを消化できるわけではないのかもしれない。だが、プラスチックを食べうちに、消化器官内の細菌が変化して、その消化を助けてくれるようになるのだ。
こうした細菌の働きを理解するのは重要なことだ。と言うのも、プラスチックを食べる幼虫そのものを大量にごみ処理場に放つのは実用的ではないからだ。
それよりも、その体内にいる細菌やそれが作り出す酵素を利用して、プラスチックごみを処理するやり方のほうが理にかなっていると、研究チームは説明する。
今後の課題はプラスチック分解細菌と酵素の特定
プラスチックを食べる虫はこれまでにも発見されているが、今回はアフリカに生息する昆虫という点で大きな意味がある。
地域によって環境はそれぞれ異なるので、ある地域に生息するプラスチック食虫をまた別の地域でも利用できるとは限らない。だから、その地域ならではの助っ人を見つけることが大切になるのだ。
研究チームの今後のテーマは、ポリスチレンを分解する細菌とその酵素の分離・特定をすることであるそう。具体的には、プラスチックごみを処理するために、そうした酵素を大量生産できるかどうかを解明したいとのことだ。
またレッサーミールワームを大量に飼育した場合の安全性や、それがポリスチレン以外のプラスチックを食べてくれるのか調べることも大切であるそうだ。
この研究は『Scientific Reports[https://www.nature.com/articles/s41598-024-72201-9]』(2024年9月12日付)に掲載された。
追記:(2024/11/26)タイトルを一部訂正しました。
References: Plastic-eating insect discovered in Kenya[https://theconversation.com/plastic-eating-insect-discovered-in-kenya-242787]