【開催告知】大北朝鮮帝国展「切断芸術」が首領様をぶった切る! 「1000年残るモニュメント」「芸術理論なんか糞食らえ!」(現代美術家・生須芳英)

11月26日(日)15時0分 tocana

撮影=酒井透

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 北朝鮮情勢が緊迫する中、東京都中野区にある中野ZERO 展示ギャラリーで、「大北朝鮮帝国展」と題された現代アート展が行われた。この展示を行ったのは、生須芳英(なます よしひで)‏さん(26歳)という現代美術家だ。

 誰もが会場に入って驚かされていたのは、正面に展示されている3点の作品。中央に掲げられている金正恩の写真は、鼻の部分で縦に切り裂かれ、耳と耳の部分で繋げられている。また、金成日も同じように鼻の部分で横に切り裂かれている。金日成にいたっては、顔を斜めに切り裂かれ、それぞれが切り離された部分とは反対の部分で繋がれている。北朝鮮の3人の首領の顔は、どれも真っ二つだ。一体どんな発想をもってすれば、このような現代アートができるのだろうか。

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「北朝鮮は、ただいま窮地に陥っています。ABCD包囲網に囲まれた大日本帝国のような状態になっています。ただ、北朝鮮は核兵器を持っているため、大日本帝国よりもずっと交渉上手です。しかし、今後どういったことになるかは分かりません。クーデターが起きて日本に大量の難民が来るかもしれません。今という時代は、激動の真っ只中にあります。 “切断(の)時代”ということもできます! これらの作品は、北朝鮮情勢の本質を突いたものだと思います。現実を芸術に映しとっています。哲学者のプラトンが言うように芸術というものは、現実の(中にある)本質を模倣するものです」(生須芳英)

 会場にやって来た人たちを見ていると、その多くが「何故、切断されているのか?」という質問をしていた。そこには、我々、日本人の持っているイメージがあるからだろう。それは、「将軍様は絶対的な存在であり、その写真や肖像画は、とても大切にしなければならないもの」だと考えることができる。

「私は、現在の北朝鮮の輝きを永遠にしたいと考えています。美術史の観点から申し上げますと、これらの作品は、1910年代半ばに起こったヨーロッパの芸術運動のダダイズムに通じるものがあります。ダダイズムには、ユーモアがあります。第一次世界大戦では、国家総動員体制によって強制徴兵された人たちが大勢いました。この戦争では、新兵器や機関銃が導入されたことによって死体の山ができました。レジェという画家は、『戦中にモップで血と死体をかき集めたことがあるよ!』と話すような人です。そうした時代背景の中でピカビアという画家は、機械の油圧ピストンをキャンバスに描いて「女」というタイトルをつけています。新しい機械兵器の残酷さを背景にしたユーモアです。私の作品もそれと同じです。国際情勢の中における悲惨さを見つめながらユーモアを感じさせるものとなっています。そして、モニュメントとして1000年間残り続けるものと思っています。こうして作品を切っているのには意味があります。切断芸術といいます」(生須芳英)

 生須さんは、テーマが美術史に及ぶと、突然、快活に話を始めた。その姿は、ナヨナヨとしていたが生き生きとしてもいた。彼は、美術史家体質なのだ。

 切断芸術というのは、普段、聞くことのできない言葉だろう。そこには、主に3つの意味があるとされている。それは、「時代の激変としての切断」や「時代が変わることによって、作品の制作に”切断”という方法が用いられる」というもの。それから、離婚のように「人間の繋がりが断たれるという切断」だ。生須さんは、彦坂尚嘉氏が主導者となっている、切断芸術をテーマとしたグループ展にも作品を出展している。しかし、日本国内のアートの世界では、3人の首領の顔をモチーフにしたものはなかったという。今回の「大北朝鮮帝国展」には、北朝鮮のプロパガンダ絵画にペイントした作品も並んでいた。この絵画には、3人の首領が描かれている。

 「(3人の首領の右にある壁に並んでいる)プロパガンダ絵画にペイントした作品は、東側と西側のアートを合体させたものと考えてもらえるといいと思います。東側の絵は、社会主義芸術というものです。つまり、プロパガンダ・キッチュアートです。西側の絵は、ジャクソン・ポロックなどアメリカの抽象表現主義を代表とするアバンギャルドアートです。両者を合体させたのがこの作品になります。近代の芸術理論なんか糞食らえといった趣で作っています。こういう作品があってもいいと思うのですよね」(生須芳英)

 この作品は、12点ほど壁に掲げられていた。そのペイントの方法は、アメリカのあちこちで見られるようなスプレーペンキで描かれている落書きのようにも見える。これらの作品からは、生須さんが美術史家体質というよりも、”美術史マニア”でもあるという一面を感じることができた。

「私は、群馬県生まれで海外経験はゼロですが、北への憧れがあります。北朝鮮には主体性があると思います。そうした主体性は、尊敬しています。もちろん、3人の首領に対しても尊敬の念があります。韓国は主体性を持った北朝鮮の姿に羨望があるのではないでしょうか。北朝鮮の3人の首領の顔を真っ二つにした作品は、私自身と世間の戦いです。皆様にもこの戦いに参加してもらいたいと思っています。是非、作品を買っていただいて、リビングに飾って欲しいのです。ご友人を招いてホームパーティーをしていただければ、ご友人からも一目置かれると思います。グループ展は何度かやっていますが、個人の展示としては、1回目の2013年のものに続いて、今回が2回目です。あぁ〜、彼女はいますよ。童貞でもないです(笑)」

 会場には、北朝鮮の紙幣などをコピーして貼りつけた柱状の立体作品や北朝鮮の歌番組を素材にした切断映像作品なども展示・設営されていた。また、キャンバスの生地を固めて作ったという過去の作品も展示されており、生須さんの回顧展の体も成していた。

 この展示は、ほぼ同じような形で、11月28日から30日まで東京都杉並区にある「素人の乱12号店」でも開催される。将来を期待される若手現代美術家の挑戦は、これからも続く。
(文・写真=酒井透)

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