世界初の人工冬眠を利用した手術が行われる。血液を氷冷生理食塩水に置き換え急速冷却(アメリカ)

11月27日(水)20時30分 カラパイア

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 患者を人工冬眠で眠らせるという、世界初の手術がアメリカで行われたそうだ。

 手術を行った医師はまだ詳しいことを話せないようだが、銃やナイフなどで大量に出血してしまった患者にとっては、今後は生死を分ける重要な手術になるかもしれない。

・出血多量で心停止した患者を救え!

 「外傷によって心臓が停止してしまったときの生存率は乏しいものです。20に1回未満でしょう」とアメリカ・メリーランド大学のサミュエル・ティシャーマン氏は話す。

 しかし、そうした瀕死の患者であっても、体を急速に冷却することで失血を食い止め、蘇生する可能性を高めることができるのだという。

 アメリカ国防総省から助成を受けてティシャーマン氏らが開発したこの手術は、「緊急保存・蘇生手術(emergency preservation and resuscitation/EPR)」といい、ニューヨーク科学アカデミーで報告された。

 その初となる実施例では、貫通性外傷、つまりは銃やナイフによって怪我を負い、出血多量で心停止にいたった患者に対して行われた。

 じつはこの手術は食品医薬品局からの特別な許可の下、患者の同意を得ないまま行われた。EPR法を試すには、患者の心臓がすでに止まっていなければならなかったからだ。そして、すでに心臓が止まってしまった患者を救おうというのならば、事態は一刻を争う。

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Image by Chalabala/iStock

・大動脈に直接挿管、冷えた生理食塩水を流し込む

 EPR法は、一般的な手術と同じ手順で始められる。傷の状態を調べ、患者の呼吸を確保するために挿管し、輸血し、必要に応じて胸を開き、直接心臓をマッサージすることで血流の改善を試みる。

 EPR法を実施するのは、こうした通常の手順を踏んでもなお効果が得られないときだけだ。その目的は、出血部位の処置を終えるまでの時間稼ぎをすることだ。

 いざEPR法の決行が決断されれば、大動脈に直接挿管して、よく冷やした生理食塩水を大量に送り込む。これによって、脳と心臓をはじめとする重要な器官にできるだけ早く冷水を流す。


・Doctors put first ever human in suspended animation - TomoNews



・その成果は2020年後半に公表

 なお、その成果であるが、2020年後半に公表される予定で、現時点でティシャーマン氏は詳しいことを話せないそうだ。

 ただ、一応念のためここで説明しておくと、EPR法はSF映画でお馴染みの冬眠ポッドで人体を凍結するといった類のものではない。

 冬眠ポッドのような極端な冷却を行なって生化学プロセスを低下させれば、損傷が余計に早く進行する可能性すらあるという。

 EPR法はあくまで時間稼ぎとしての手段だ。”EPR"という名称にしたのも、できるだけSFのイメージがつかないよう考慮したからなのだとか。

 ティシャーマン氏によれば、冷却は非常に骨が折れ、しかもむずかしい作業なのだそうだ。今の段階では冷却水で体を冷やしているが、いずれは細胞の活動を停止させて同じ効果を得られるような薬剤の開発をしたいと考えているとのことだ。

References:smithsonianmag/ popsci/ written by hiroching / edited by parumo

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