【医師監修】自然分娩と無痛分娩、メリットとリスク・費用や方法の違いは?

11月27日(月)16時25分 マイナビウーマン子育て

どのような出産方法を選ぶかは、妊婦さんにとって大切な問題です。分娩方法には大きく分けて自然と無痛の2つがありますが、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?気になる出産費用も含め、詳しく説明します。









この記事の監修ドクター

東峯婦人クリニック 松峯美貴先生

日本産婦人科学会専門医 東峯婦人クリニック

思春期から老年期の女性の悩みをささいなこと、恥ずかしくて聞けないことでもざっくばらんににきける身近な外来をめざしています。女性ならではのライフイベントを素敵にこなしながら、社会の一員として悠々と活躍するあなたのお手伝いをします。

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自然分娩と無痛分娩の違い

なんとなくイメージはあっても、分娩の具体的な方法や違いがわからない方は多いはず。まずは、自然分娩と無痛分娩がそれぞれどのような出産方法なのかを解説します。
自然分娩とは?自然分娩とは、医療介入を行わない経腟分娩です。医療介入をしないといっても、まったく行わない、促進剤の使用までは含まれる、吸引や鉗子までも含むなど考え方はさまざまで、はっきりとした定義はありません。主には、病院側の都合による医療介入は行わない分娩と考えられるでしょう。例えば、予定日になったからと人工的に陣痛を起こしたりはしないということです。問題がなければ自然の流れに任せ、赤ちゃんと母体に危険があると判断された時のみ、促進剤や吸引、鉗子などの医療的措置が行われます。

本来、出産とは自然の営みです。自然分娩はその考えに相反しない方法なので、薬などに頼らず自分の力で産みたい、それが本来の形であると考える妊婦さんに適しています。大きな痛みはともないますが、だからこそ産まれた時の感動もひとしおと言えるでしょう。

ただし、出産は命がけの行為です。医療の発達により周産期(妊娠28週以降)に亡くなる命は少なくなりましたが、危険がないわけではありません。無事に産むには妊娠中の管理が必要不可欠ですし、万が一のことがあれば医療的処置が必要です。このように大変な行為であるため、何時間もの痛みを耐え抜いて産んだ後の母体はダメージが大きく、回復にも時間がかかります。デメリットを考慮し、体の状態を見て判断しましょう。特に、痛みに人一倍弱い、何らかの持病がある、高齢出産で体力に自信がないという方は、医師に相談しながら慎重に決めてください。
無痛分娩とは?無痛分娩とは、薬剤などで陣痛や出産時の痛みをやわらげる分娩方法です。最も一般的なのは麻酔薬を脊髄神経に注射する方法で、その他に麻酔ガスを吸引する方法などもあります。ラマーズ法や水中分娩など、薬剤を使わずに痛みを緩和させる方法もありますが、これは「和痛分娩」と呼ばれ、医学的に「麻酔を使った分娩」と認識される無痛分娩とは異なります。ただし、産院によっては広い意味でこれらも無痛分娩としているところがあるので、薬を使った方法を求める方は内容をしっかり確認して産院を選びましょう。

日本ではまだ一般的でない無痛分娩ですが、そのメリットから先進国ではかなりポピュラーな方法となっています。アメリカでは望めば誰でも無痛分娩ができますし、フランスでは実に97%の妊婦さんが選択しています。無痛分娩のメリットとは?主には以下の4つをあげられます。
メリット1:呼吸器、循環器への負担を軽減できる陣痛が激しいと呼吸回数が極端に増えたり、血圧が上がることがあります。痛みをやわらげることで、その危険を減少させることができます。
メリット2:精神面へのストレスを緩和できる痛みへの不安や恐怖が少なくなるので、心身共に落ち着いた状態でいられます。緊張がやわらぐと産道が開きやすくなり、上手にいきむこともできるので、出産時間の減少につながります。
メリット3:産後の回復が早い痛みが少なく出産時間も短くなる分、体力の消耗が減り、産後の回復が早まります。
メリット4:万が一のトラブルに迅速に対応できる手術麻酔への移行がすみやかにできるので、何かしらの理由で帝王切開などの緊急オペが必要になっても、すぐに開始することができます。
もちろんデメリットがないわけではありませんが、無痛分娩にはこのように多くのメリットがあります。麻酔薬による赤ちゃんへの悪影響の心配や、自然に反する行為との考えもあって、日本ではまだ選択する人が少ない傾向にあります。ただ、薬による赤ちゃんへの影響は現在のところ報告されていませんし、逆に自然分娩によってリスクを担う妊婦さんもいます。薬に頼るのはおかしいと決めつけず、それによるメリットも見て総合的に判断することをおすすめします。
無痛分娩の方法とリスク

それでは、無痛分娩は具体的にどのような方法で行われるのでしょうか?陰部神経麻酔(陰部神経に注射をする方法)、吸入麻酔(ガスで吸入する方法)、点滴注入など、麻酔の方法はさまざまですが、ここでは最も一般的に行われる持続硬膜(こうまく)外麻酔について説明します。
無痛分娩の麻酔方法無痛分娩における麻酔の方法は、一般的に持続硬膜外麻酔が用いられます。これは、他の方法に比べて麻酔薬が赤ちゃんへ移行しにくいためです。安全面を考慮し、ほとんどの産院で第一選択法となっています。

麻酔薬は、腰から針を刺し、脊髄硬膜外にカテーテルを挿入して注入します。針は、横向きになっておへそを見るように体を丸めた状態で刺します。これは、背中を丸めた方が針が進みやすいためです。針を挿入している間は動かないようにします。動くと針先が定まらず、危険な場合があるそうです。

子宮・産道へとつながる神経への働きかけで、注入後およそ5分で腹部と下半身に麻痺が起こります。麻酔が効いている部分は温冷覚がなくなるので、冷たい物をあてるなどの方法で麻酔の広がりをチェックします。広がりが十分でない時は、点滴で鎮痛剤を追加することもあります。
リスクはあるの?メリットの多い無痛分娩ですが、リスク(デメリット)がないわけではありません。無痛分娩のリスクには、主に下記のようなものがあります。

・陣痛が弱まり、分娩遷延(ぶんべんせんえん:分娩が長時間にわたること)になり、分娩が翌日に持ち越されたり、帝王切開術に切り替わる可能性がある。

・体質によっては、血圧の低下や嘔吐、感染症、神経障害などの副作用が起こることがある。

・まれに、背部痛や頭痛などの合併症を引き起こすことがある。

この他、場合によっては鎮痛が対応できないケースがある、数万円の別途麻酔費がかかることで出産費用が高額になるなどのデメリットもあります。
気になる費用はどれくらい?

出産方法を決めるにあたってもう一つ重要なのが、お金の問題です。自然分娩、無痛分娩は、それぞれどれぐらいかかるのでしょうか? 気になる費用について見ていきましょう。
自然分娩の費用自然分娩の費用は、およそ42万円が目安です。それ以外に入院費、差額ベッド代、新生児入院費がかかります。出産総費用は、出産する都道府県や施設によって異なってきます。例えば、東京で出産する場合の平均総費用はおよそ65万円と最も高く、最も低いのは鳥取県でおよそ39万円となっています(厚生労働省/平成22年度 第40回社会保障審議会医療保険部会資料より)。

また、どの施設で出産するかによっても費用は変わってきます。分娩ができる施設は以下のとおりです。

・病院…ベッド数が20床以上あり、入院医療が主体となっている施設。

・診療所…入院施設がない、もしくはベッド数が19床以下の施設。

・助産院…産婦人科医がおらず、助産師が分娩のお手伝いと妊産婦・赤ちゃんの保健指導を行う施設。

費用は、医療体制がしっかり整っている病院が最も高い傾向にありますが、設備や待遇などによっては診療所の方が病院より高額になるケースもあります。病院でも自治体の運営か民営かによって費用には開きがあります。また、施設によっては、平日の9時〜17時以外に出産した場合に、およそ1割の時間外手当が上乗せされることもあります。

出産費用には保険が適用されず、民間の医療保険からも給付金は出ません。ただし、自治体から出産育児一時金として一児あたり42万円が支給されます。多くの医療機関で直接支払制度や受取代理制度を取り入れているので、退院時はかかった費用から42万円を引いた額だけを準備すればよい場合がほとんどです。

ただし、出産費用は分娩・入院費用に加え、妊娠中の健診代もかかります。また、何かしらのトラブルにより帝王切開などのオペが必要になった場合は、その手術費用も必要です。合併症や切迫早産での出産の場合は、通常の費用に10万円ほどの上乗せがあるでしょう。万が一のことも想定し、予算を組んでおきましょう。
無痛分娩の費用無痛分娩の費用は、自然分娩費用にいくらかプラスされることがほとんどです。最も一般的な硬膜外無痛分娩の上乗せ額は、以下が目安となります。

・個人施設(民間病院、診療所):10〜15万円

・総合病院:10 〜15万円

・大学病院:10 〜15万円

(硬膜外無痛分娩を実施する46施設の調査結果)

ちなみに、総合病院と大学病院はどちらも主な診療科目を持つ大病院ですが、以下のような違いがあります。

・総合病院…許可病床数が100床以上で、主な診療科(内科、外科、眼科、耳鼻咽喉科、産婦人科)を持つ病院。

・大学病院…医科大学や総合大学の医学部・歯学部の付属施設で、診療と共に研究、教育・研修を担う病院。

地域の最先端医療という意味では大学病院が上かもしれませんが、大学生の研修が行われる場でもあるので、不安がある場合は総合病院が無難かもしれません。

ただし、どちらの大病院であれ、無痛分娩を行っているところは限られています。日本産科麻酔科学会のHPによると、無痛分娩を行っている施設は、平成25年10月の時点で150施設しかありません。地域によっては、無痛分娩を行う施設が1〜2つしかないこともあるでしょう。希望する場合はできるだけ早く健診の担当医に伝え、対応できる施設を探しましょう。
まとめ

自然分娩、無痛分娩のどちらを選ぶかは、産む本人が決めることです。いずれの方法にもメリット・デメリットがあるので、より優れた方法というのはありません。大切なのは、本人が納得した出産ができること。総合的に判断し、一番安心で自分に合った方法を選択してください。

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