「火星に生命が存在する証拠写真を見つけた」と主張する昆虫学者だがそれって実は...(アメリカ)
11月29日(金)20時30分 カラパイア

Ohio university/NASA
地球と火星が再び最接近を果たす2020年、NASAは探査機「マーズ2020」の打ち上げを予定している。2021年1月に到着すれば、ただちにそこに生命の痕跡がないか捜索が開始される。火星ファンが首を長くして待っている瞬間だ。
だが、この調査を待たずして、ある昆虫学者が火星に生命が存在する証拠写真があると主張している。
米オハイオ大学の名誉教授ウィリアム・ロモザー博士によれば、ネットで公開されている火星の写真を長年研究した結果、これまで見過ごされてきたあるものを発見したのだという。それは化石と現生の生命である。
それだけではない。ロモザー博士は、爬虫類やハチに似た非常に複雑な生命まで発見したのだというのだ。これってどういうことだってばよ?
・火星には複雑な生命が存在する?
声明の中でロモザー博士は次のように述べている。
火星には過去にも、現在にいたるまでも生命が存在する。火星の昆虫型動物相が非常に豊富であることは明白だ。
そして翅、翅の屈曲、敏捷な滑空/飛行、多様な構造を持つ肢など、それらには高度とされる地球の昆虫に似た特徴が見られる。
はたして、これほど明確な証拠があるというのに、優秀なNASAの科学者たちはなぜ気が付かなかったのだろうか?

Ohio university/NASA
・それって実はパレイドリア
ただの物体の中に見慣れたパターンが見えてしまう現象のことを「パレイドリア効果」という。ただの石ころなのに、そこにある模様のせいで顔に見えてしまったことはないだろうか? パレイドリア効果とはそれのことだ。
奇妙な現象であるが、進化の視点から見ればしごく合理的なことだ。
たとえば、私たちの祖先は茂みの中にライオン”らしき”ものが隠れていると思えば、一目散に逃げ出したことだろう。
本当にライオンが隠れているかどうかは定かではない。それでも念のため逃げておくに越したことはない。それがただの見間違えならそれでかまわないのだ。
だが、そのライオン”らしき”パターンを認識できなかった者は、本当にライオンが隠れていた場合、あえなく捕まって食べられてしまった。こうして後世にの残される遺伝子は、危険なパターンを認識できるものだけになる。
ロモザー博士が主張する生命の証拠は、どうやらパレイドリア効果によるもののようだ。

Ohio university/NASA
・優れた昆虫学者だからこそのあやまり
天文学者の故カール・セーガンは、その有無にかかわらずパターンを発見する能力は、重要な生存スキルだったと述べている。
しかし、そのおかげで、私たちの目には光と影の無意味なパターンが、顔やよく見慣れた物体に見えるようになった。
今回のケースでは、優れた昆虫学者の目に、火星に存在する無意味なパターンが昆虫に映ったのだろう。昆虫を研究し続けている名誉教授にとってそれらの形状は、アメリカ昆虫学会で発表するくらい本物そっくりに見えたのだ。

Ohio university/NASA
きっとロモザー博士は、火星で生命が発見されることを心待ちにしているに違いない。むろん、私たちだってそうだ。答え合わせまで、あと数年の辛抱だ。
References:researchgate/ iflscience/ written by hiroching / edited by parumo