「パーマカルチャー」って知ってる? 消費者から創造者になって循環する生き方 2023年11月29日(水)16時30分 ソトコト 「パーマカルチャー」という言葉を聞いたことはありますか? ここでは、2023年に千葉県鴨川市で開かれた「PDC(パーマカルチャー・デザイン・コース)」の様子を交えながら、パーマカルチャーの言葉の意味とその内容について、実践者たちの言葉を借りながら紹介していきます。パーマカルチャーについての記事・パーマカルチャーに魅せられ、消費者から創造者になった3人の暮らし・パーマカルチャー実践者に聞く、すぐに始められるパーマカルチャー的行動6例パーマカルチャーとは?「パーマカルチャー」は、「パーマネント(永続性)」と「アグリカルチャー(農業)」、「カルチャー(文化)」を組み合わせてつくられた言葉です。1970年代にオーストラリアのビル・モリソン氏と、デイヴィッド・ホルムグレン氏によって提唱されました。1993年に農文協から翻訳出版されたビル・モリソン氏の著書、『パーマカルチャー—農的暮らしの永久デザイン』によると、以下のように説明されています。パーマカルチャーというのは、人間にとっての恒久的持続可能な環境をつくり出すためのデザイン体系のことであるvia『パーマカルチャー—農的暮らしの永久デザイン』ビル モリソン (著)、 レニー・ミア スレイ (著)、農山漁村文化協会(出)例えば、料理をして出た生ゴミを燃えるゴミとして棄てるのではなく、コンポストキットを使って生ゴミを自宅で堆肥化して、そこで得た堆肥を使ってプランターで野菜を育てます。できた野菜を収穫して料理をし、生ゴミを再びコンポストキットに入れて堆肥化すると、そこに循環が生まれ、スーパーで買ったものを消費するだけの消費者ではなくなります。土地があればトイレをコンポストトイレにして、コンポストステーションを作り、堆肥を作ることも可能。お店から購入して物を得るだけではなく、自然界と共存できる環境をデザインし、持続可能な循環を増やすヒントを与えてくれるのが、パーマカルチャーなのです。「3つの倫理」と「12の原則」パーマカルチャーには「3つの倫理」と「12の原則」があります。●3つの倫理地球への配慮人々への配慮余剰物の共有●12の原則観察と相互作用エネルギーの獲得と貯蓄収穫自律とフィードバックの活用再生可能な資源やサービスの活用と尊重ゴミや無駄を出さない全体から細部までをデザイン分離より統合ゆっくりと小さな解決を目指す多様性の活用と尊重境目の活用と辺境の尊重変化に創造的な対応と利用かんたんに言いかえると「地球や環境のことを考えながら、尊重し合って循環する豊かな生活を営もう」といった感じでしょうか?そんな「パーマカルチャー」を座学と実践を交えて学べる場が、「PDC(ピーディーシー)」です。パーマカルチャー・デザイン・コース(PDC)の様子。PDC講師が考える「パーマカルチャー」とは?PDCの講師は、本間・フィル・キャッシュマンさん、カイル・ホルツヒューターさん、ソーヤー・海(かい)さんの3人。開催場所を変えながらPDCを実施し続けている彼らにとってのパーマカルチャーとは、いったいどんな世界観なのでしょうか。フィルさんにとってのパーマカルチャーは「一つの道具」2007年にビル・モリソン氏からパーマカルチャーを学んだ本間・フィル・キャッシュマンさん。フィルさんは、「どうやったら地球を破壊せずに生きていけるか」を探し求めていると言います。「パーマカルチャーのやり方」にこだわらずに自然をよく観察し、自然を先生として、そこから学びを得てフィールド作りに生かしています。できるだけ自然を破壊せず、ゴミを出さず何かに利用するという考えで、庭師が剪定して出る大量の葉っぱ付きの枝をフィルさんが引き取って、フィールドにあるコンポストステーションに入れます。葉っぱや枝が少しずつ発酵していく発酵熱で、2〜3週間は40度のお湯を作ることができる「コンポスト風呂」の熱源として利用。最終的に、発酵したコンポストは堆肥として畑に入れ、そこで野菜を育てます。使用済みパレットで囲われたコンポストステーションから、堆肥を運ぶところ。コンポストの中にホースを入れ、水を循環させて発酵熱で温め、壁の向こう側にあるお風呂の蛇口を開けばお湯が出る仕組み。身の回りの環境をよく観察することで、不要に思えるものでも暮らしに役立つものに変換して利用することができます。フィルさん「ぼくにとっては、どうやって地球を破壊せずに人が生きていけるかを探求する旅のなかの一つの道具として、パーマカルチャーがある」カイルさんにとってのパーマカルチャーは「五つのジェイ」ロケットストーブ作りの指導をする、カイル・ホルツヒューターさん。岡山県にある『パーマカルチャーセンター上籾(通称パミモミ)』の代表を務めている。カイルさんが言う「5J(ファイブ ジェイ)」は、自給、自立、循環、持続、Joy(喜び)の五つです。パーマカルチャーをするためにどこかに移動する必要はなく、今いる場所の資源を生かして生活することが「平和への一歩」だと言います。無いからほかの土地やほかの国から手に入れようとすると、資源の奪い合いになって戦争につながってしまうから。今ここにあるものを生かすことが大切ですが、全てを自給することは無理なのでコミュニティが必要になります。カイルさん「コミュニティのなかで、お互いに貢献したり助けたり。それができたら本当の自立になる。日本のパーマカルチャーの軸は、里山でも都会でも『循環』だと思う。循環を取り戻すと、持続可能にできる」カイルさんのフィールドは自給率が高く、米、味噌、醤油、野菜や果物だけでなく、建物も9割はその土地にある山の木を使って建てています。これから電気も自給して、「資源を外から奪わない」を実践し続けていますが、苦労ばかりだと続かないので「Joy(喜び)が必要。カイルさんにとってのJoyは、夕方に自分の敷地を歩いて散歩をすることだそうです。海さんにとってのパーマカルチャーは「豊かな暮らしの道」ソーヤー・海(かい)さん。『東京アーバンパーマカルチャー(TUP)』の創始者であり、いすみ市に『パーマカルチャーと平和道場(以下道場)』を仲間と立ち上げた。私たちは基本的に、仕事をしてお金を稼ぎ、そのお金で誰かが作った物を購入して消費する“消費者”ですが、パーマカルチャーは「自分で自分の理想を作る(創造者になる)ことで、やればやるほど楽しくてパワーが湧いてくる」と海さんは言います。海さん「家を建てることに憧れていたから、雑誌を見て建ててみちゃった。電気を自給したくてやってみたら、発電できちゃった」道場に設置された太陽光発電システム新しいことに挑戦するのは大変ですが、やっていくうちにその大変さが「楽しい」に変わっていく。一つの専門家になるのではなく、暮らしに必要ないろいろなことができるようになっていくのは、百のことができるようになる「百姓の世界」と似ています。海さん「パーマカルチャーは、出費を減らして豊かさを増やすのが特徴。循環で心や時間、お金の余裕ができる。地球を楽しむために人は生きていると思うから、そこを取り戻せる人生の道」鴨川で初めて開催されたPDC。消費者から創造者になる冒険に34人が参加PDCは、自分らしい豊かな暮らしと生態系を再生する「生き方のデザイン」を学ぶ集中講座で、講師陣たちは「消費者から創造者に変わる冒険」と表現しています。PDCが開催された『鴨川SupernaturalDeluxe(スーパーナチュラルデラックス)』はフィルさんが運営に関わっている場所で、敷地には茅葺き屋根の母屋、離れ、蔵があります。参加者たちはこの場所で、朝も夜も共に暮らしながら学びを深めます。『鴨川SupernaturalDeluxe(スーパーナチュラルデラックス)』の母屋。フィルさん「ここは参加者全員が一緒に宿泊できて、一緒に過ごせる場所です。鴨川駅が近くて移動に便利なので、ここを拠点に、パーマカルチャーを実践している6つのフィールドを訪れることができて、海が近い環境も魅力です」そんな場所で開催されるPDCの説明ページには、以下のように書かれていました。自分らしい豊かな暮らしと生態系を再生する「生き方のデザイン」を学ぶ集中講座です。パーマカルチャーの現場で、世界各国で実績を積んだパーマカルチャー実践者から自然と調和のある暮らしを味わう、消費者から創造者に変わる冒険。via2023 PDC JapanPDCで道場を見学した日のランチは、みんなで台から作った流しそうめん。PDCは各地で開かれていますが、「鴨川で開かれるこの講師たちのPDCに参加したい」という参加者たちが34人、遠方からも徒歩圏内からも集まりました。最年少は22歳。否、妊婦さんも参加していたので、彼女のお腹の子が最年少でしょうか?PDCで訪れたパーマカルチャーのフィールド紹介は、記事「パーマカルチャーに魅せられ、消費者から創造者になった3人の暮らし」でお伝えします。パーマカルチャーセンター上籾web:https://pamimomi.com/Facebook:https://www.facebook.com/PermacultureKamimomi/パーマカルチャーと平和道場web:https://peaceandpermadojo.wixsite.com/home東京アーバンパーマカルチャーweb:https://tokyourbanpermaculture.com/鴨川SupernaturalDeluxeweb:https://super-deluxe.com/取材協力:PDC@鴨川SupernaturalDeluxe関係者・受講者の皆さま写真・文:鍋田ゆかり 関連記事(外部サイト) パーマカルチャー実践者に聞く、すぐに始められるパーマカルチャー的行動6例 パーマカルチャーに魅せられ、消費者から創造者になった3人の暮らし 天然資源を活用したエネルギーで、道の駅の電力を補う「道の駅むつざわ つどいの郷」 想定される災害リスクに、ICTを活用して解決を目指す「道の駅すさみ」 海洋立国ポルトガルに学ぶ、持続可能な海洋環境やエネルギー、ツーリズムの未来