原曲をたどったらあの曲だった!クラシック音楽とポップ・ミュージックの関係
2023年11月30日(木)6時0分 JBpress
(小林偉:大学教授・放送作家)
クラシックをカバーした名曲
「この曲、どこかで聴いたことあるなぁ」なんてこと、結構ありますよね?
その原曲をたどってみたら、クラシックの名曲だったなんて例も少なくないものです。
そこで、クラシック音楽とポップ・ミュージックとの関係というテーマでお送りしたいと思います。
今回は、その数ある例の中から、クラシックの曲を引用し、それに独自の歌詞を乗せてカバーしている曲を中心に注目してみましょう。
まずは有名な、こちらの曲から。
女性ジャズ・ヴォーカルの大物=サラ・ヴォーンの「ラヴァーズ・コンチェルト」。日本ではCMソングやドラマ(TBS系『不機嫌なジーン』2005年)の挿入歌に採用されたりしている人気ナンバーですが、
こちらの原曲は・・・
音楽の父とも言われるヨハン・セバスチャン・バッハの「メヌエット」。近年の研究では、作曲者はバッハ自身ではなく、クリスチャン・ペツォールトというバッハと同時代の方の作品だとされているようです。
この曲を元に、サンディー・リンザーとデニー・ランドルというコンビが歌詞を乗せ、チャーリー・カレロという方が編曲し、「ラヴァーズ・コンチェルト」という曲に生まれ変わったというワケ。その後、多くの歌手がこの曲を歌ってきた中で、先ほどのサラ・ヴォーンのヴァージョンが決定版になったんですね。
続いては、あのエルヴィスの名曲です。
エルヴィス・プレスリーの「CAN’T HELP FALLIN’ IN LOVE(好きにならずにいられない)」。1960年代終盤から晩年に至るまで、エルヴィスのコンサートではラストに歌われることが多かった名曲ですが、この曲も元はクラシック音楽。
原曲はこちら。
18世紀にフランスで活躍したジャン・ポール・マルティーニが作曲した「愛の喜びは」という曲で元々フランス語の歌詞もついていたようです。これを元にヒューゴ・ペレッティ、ルイージ・クレイトアー、ジョージ・ワイスという3人が英語詞とアレンジを施したそう。それが、エルヴィス主演の映画『ブルー・ハワイ』で使用され、大ヒットとなりました。
次は、こちら。
年明け1月に14年ぶりの来日公演も予定されているビリー・ジョエルが1984年にリリースした「THIS NIGHT(今宵はフォーエバー)」。
この原曲はご存知の方も多いでしょう。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーベン作曲の「悲愴ソナタ」の第2楽章ですね。
ビリーは、オールディーズ・ナンバーのように巧みにアレンジしていて、引用の上手さには思わず膝を叩いてしまいそうです。
さて、今度は原曲から聴いていただきましょう。
19世紀から20世紀初頭にかけて、モラヴィア、現在のチェコで活躍した作曲家レオシュ・ヤナーチェクの管弦楽曲「シンフォニエッタ」。
この曲が、こんな感じに生まれ変わりました。
イギリスのプログレッシブ・ロックの大人気トリオ=エマーソン・レイク&パーマーの「ナイフ・エッジ」という曲です。ヤナーチェクの原曲を元に、独自の歌詞を乗せ、自分たちのオリジナルにまで昇華させている見事な引用だと思うのですが、いかがでしょうか?
エマーソン・レイク&パーマーの中心人物であるキーボードのキース・エマーソンはクラシックから引用することが多く、20世紀アルゼンチンのクラシック作曲家、アルベルト・ヒナステラの「トッカータ」。
こちらのカバーでも見事なまでにロックへアレンジ。
クラシック音楽というと敬遠してしまう方も多いでしょうが、思っているほど、クラシックとポップ・ミュージックの距離は、それほど遠くはないんですよね。
例えば、17世紀ドイツの作曲家であるヨハン・パッフェルベルの「カノン」。
こちらのコード進行は、数多くのポップスに引用。山下達郎の「クリスマス・イヴ」も、オアシスの「DON’T LOOK BACK IN ANGER」も、あいみょんの「マリーゴールド」も、ボブ・マーリーの「NO WOMAN, NO CRY」も、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」も、この“カノン進行”で作られていますしね。
今回ご紹介した曲から、
筆者:小林 偉