森の豊かな原体験を次世代に紡ぎ、長浜を元気にする『MORITOWA』~100DIVEのローカルビジネス事例~

2023年11月30日(木)11時30分 ソトコト


ローカルで持続可能な事業をつくるプロジェクトで、プラットフォームでもある「100DIVE」。今回は「100DIVE」から誕生し、滋賀県長浜市公認の事業として採択された『MORITOWA』が進めているプロジェクトを紹介します。



話をしてくれた人:一般社団法人『MORITOWA』代表理事・北川勇夫さん
滋賀県長浜市出身。森林保全や森と産業遺産をめぐるツアーガイドを行う団体を2021年に設立、代表を務める。「人起点で考えるローカルビジネス」を生み出す100DIVEが、滋賀県長浜市の森林をテーマに行われることを知りこのプロジェクトに参画。プロジェクト終了後すぐに100DIVEのメンバーと任意団体『MORITOWA』を設立し、ビジネスプランの実現に向けて活動中。2023年12月には法人化。


『MORITOWA』は、森林と都市とをつなぐプロジェクト


『MORITOWA』で正面から向き合っているテーマは「森林資源を活用して森林と都市とをつなぐ」こと。これを考える上で私たちを悩ませているのが、滋賀県長浜市における



  • 森林資源を有している地域課題とは何か

  • 森林と都市をつなぐための課題とは何か


を明確につかむことです。



生活スタイルの変化で森離れが進んでしまった長浜では、「森」と聞いてもなかなかイメージができないのではないかという仮説を立て、この問題を解決するために森の資源を使った「商品」「サービス」「森の知識」を、まちの消費者に届けるプロジェクトを進めています。これは「森からもらう事業」と、そこで得た資金と人を森に還元する「森にかえす事業」を循環させるビジネスモデルで、今も日々ブラッシュアップを重ねています。


「森からもらう事業」と「森にかえす事業」で構成される「MORI-GOTO PROJECT」の概要。

森からもらう事業「Kimama-Beverages」では、クロモジの木の香りを活かしたビールの製造・販売をしています。長浜を訪れる観光客や都市部の人をメインターゲットに、クロモジの上品な香りを楽しんでもらいながら素材となるクロモジを植樹することで、長浜の森と自然環境に関心を持ってもらう循環のストーリーを提供しています。


クロモジの木の香りを活かしたビールで、循環のストーリーをデザインする。

森にかえす事業「音羽の森ジョイパーク」では、子どもたちに、気軽に遊べる森を提供しています。森はかつて、子どもたちが木登りをしたり木の実を取ったりした自然の遊び場でしたが、今では管理する人もいなくなり、暗く怖い場所に変わってしまいました。そんな森を遊び場に変えるイベントを通して、子どもたちに自然体験をしてもらおうというわけです。


子どもに自然で遊んでもらいながら、植樹イベントなど、森をまもるイベントも実施。

持続可能性が大事だけど、「ワクワクする気持ち」がないとダメ


現在、『MORITOWA』は一般社団法人化を進めています。これから、酒販免許の取得、製造と進み、来年の夏に向けて販路を広げていく予定です。「音羽の森ジョイパーク」も2023年の春から、子どもたちと一緒に森を整備するイベントを続けています。11月には長浜市から依頼で、「音羽の森ジョイパーク」に企業や一般の方を招待して植樹イベントを開催しました。


私たちがコンペティションを経て、長浜で新しいビジネスを立ち上げるために大切にしたのは実現可能性。具体的には、人員リソースを加味した事業スケジュールとマネタイズするための収支計画のバランスです。さまざまなことを検討し検証することで、持続可能なバランスポイントを必死に探りました。


そしてもうひとつ、実現可能性と同じくらい大切なのが「ワクワク感」。私たちが熱を持ち続けられるビジネスであることが重要です。プレゼンの場でもこの「ワクワク」が伝わらないと受け入れる側もしらけてしまいますし、事業が実現したあと、消費者のみなさんに支持してもらうためにも「ワクワク」は欠かせないキーワードになります。


「MORITOWA」のスタッフたち。

長浜に限らず、地域でビジネスをするためには、まちのみなさんの理解や協力、ある種の熱が不可欠です。歴史や文化、ライフスタイルを尊重したうえで、地域課題に向き合い、尚且つワクワクするビジネスであることが、地域に受け入れてもらうポイントだと思います。


『MORITOWA』は、森の原体験を紡いでワクワクするまちをつくる


森にかえす事業(音羽の森ジョイパーク)のプランを考えているとき、「なぜ私たちは森のことを考え、保全していきたいと思っているのか」という問いと改めて向き合う機会がありました。自分が子どもだった時のことを思い返し、そこには友だちと一緒に森で遊び、家族と山菜採りをした豊かな情景があって、「それは無くしたくない」という気持ちがありました。


でも実際には森は荒れ、生活スタイルの変化で森ばなれが進み、子どもたちから「森に触れる」という原体験が失われています。このままでは森の必要性や価値が忘れられ、森の荒廃は加速する一方です。


「音羽の森ジョイパーク」のミッションは、子どもたちが安心して遊べる森を提供すること。失われつつある豊かな原体験をとおして、森を大切に思う大人になってもらえたら嬉しいですし、「音羽の森ジョイパーク」で遊んだきっかけから『MORITOWA』の運営に携わってくれる人材が生まれたら……。これが私たちの「ワクワク」であり、事業の原動力になっています。このワクワクを胸に、「音羽の森ジョイパーク」「Kimama-Beverages」の広報とコンテンツづくりに日々邁進しています。


ソトコト

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