ダウン症児育てる奥山佳恵、「何もできないと押し込むのは危険」

12月4日(火)7時0分 NEWSポストセブン

障害児の母である奥山佳恵がベテラン小児外科医と対談(撮影/浅野剛)

写真を拡大

「発達障害」に関して、親のあり方や周囲の応じ方が論じられている。そんな中、自閉症として生まれてきた少年・勇太くん(仮名)とその母を取材した単行本『発達障害に生まれて』(中央公論新社刊)が版を重ねている。障害児を授かった親は、周辺社会は、どのように歩を進めるのがいいのか──育児や日々の生活を綴るブログで多くのファンを持つ女優・奥山佳恵さんと同書の著者であるベテラン小児外科医・松永正訓(ただし)さんが対談した。


 奥山さんは2011年に誕生した次男・美良生(みらい)くんが生後1か月半の時にダウン症と告げられた。


奥山:美良生が生まれたばかりの時は漠然と将来が不安になったりしました。将来の展望が見えづらいから。でも、ある時から考えないようにしたんです。想定できない未来を考えても仕方ない。将来も笑顔でいるために、今日明日を心から楽しもう、と。


松永:まったく問題ないと思いますよ。ただ、長く生きる中で節目があって、それがたぶん就労と住まいだと思うんですよね。親亡き後のわが子の人生。その節目にはたぶん深く考えることになるのでは、と思います。


奥山:制度も年々変わっていきますよね。それも想定できないものの1つです。


松永:たしかにそうですね。福祉の制度はコロコロ変わる。


奥山:年単位で変わります。


松永:逆にいうとあんまり先のことを考えても意味がない。


奥山:そうなんです。なので楽観的ではあるんですけど、まだ7才、小学校に今年入ったばかりの美良生がいて。本当だったら就労先とか、グループホームとかいろいろ考えなきゃいけないのかもしれないけど。


松永:そうですね。法律もどんどん変わっていくし、障害者差別解消法(※)だって、そんな法律ができるなんて数年前までは、あまりみんな思っていなかったと思うんですよね。でも、時代は変わっていきますよね。歴史って必ず進歩していくんです。


※平成28年4月から施行。役所や会社や店などの事業者が、障害のある人に対して、受付対応を拒否したり、本人を無視して介助者や支援者、付き添いの人だけに話しかけたりする行為などを禁じている(「不当な差別的取扱いの禁止」)。また、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているという意思を障害のある人から伝えられた時に、負担が重すぎない範囲で対応することが求められる(「合理的配慮の提供」)。


奥山:子育てする母としては、健常でも健常でなくても、家を飛び出して街に出た方が親子のためであると思っているんです。母親も体の中の空気を入れ換えることができるし、どんな子であれ知ってもらうことが親も子も救うことになると思うんですよね。


 狭い家の中で完結する親子関係だけだと救いの手が出しにくいし、SOSも出しにくいと思うので。情報とか言葉の支える力とか、発信できる場所とか。そういうものを少しでも多く持っている方がいいと思うし、お母さんが笑顔になったら子どもも幸せになれると思う。



松永:SOSを出すというのは非常に大事なことで、SOSを出すことによって、その子どもと社会との接点がどんどん太くなっていくんですね。病気を公表してSOSを出すということは、社会とともに生きることですから。それが共生することですよね。障害を持っている子とか弱い立場にいる人って、結局孤立して生きることはできないし、孤立しちゃいけないんです。社会と一緒に生きなきゃいけない。


 社会と一緒に生きている姿こそが本当の意味の自立なんだとぼくは思いますね。自立というのはひとりぼっちで家の中に閉じこもっているわけではなくて、いろんな人に助けてもらって、いろんな人と一緒に生きる。みんなとともにあることが本当の意味での自立だと思います。


奥山:自己完結する力を親がいなくなる前に能力として子どもにつけさせたいと思っていたんですけど、そういう側面だけではないんだな、と思いました。周りに助けてもらう、助けてくださいと言うことも自立なんですね。


松永:そうですね。だって結局、この部屋にいるスタッフを含めた全員、高齢者になってヨボヨボになって、自分のことを自分でできなくなるんですから。その時に周りの人に支えてもらう。そうやって社会って成り立っているわけですから。障害児はわれわれの社会の“水先案内人”のような言い方がありますけど、われわれがこの後生きていく社会のあるべき姿を、障害児が教えてくれているんだとぼくは思います。


奥山:水先案内人っていい言葉ですね。私も今はとりあえず支障なく電車に乗って生活して、仕事場に行って帰って、ということができていますけど、いずれ何かしらできなくなることが多くなってくることを考えたら、誰かに頼らざるを得ない時期はきっとくる。


 それが誰しも言えるとしたら、今何もできない人をできないところに閉じ込めて、できる人だけここに、という考えはすごく恐ろしいものだと思います。いろんな人が世の中にいて、共存し合って、助け合って、できる人ができることをやって、できない人が助けてくださいということが当たり前になれば、いずれ自分ができなくなった時に自分が生きやすくなるんですよね。


松永:おっしゃる通りです。社会の意識が少しずつでも、そういう方向に向かっていくことを期待したいですね。


【プロフィール】

◆小児外科医・松永正訓さん/1961年、東京生まれ。「松永クリニック小児科・小児外科」(千葉県千葉市)院長。2013年に『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』(小学館刊)で第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。読売新聞の医療・介護・健康情報サイト「yomiDr.(ヨミドクター)」で連載を持つなど、命の尊厳をテーマとした記事や作品が各所で好評。


◆女優・タレント・奥山佳恵さん/1974年、東京生まれ。2001年に結婚。2002年に長男・空良(そら)くんを、2011年に次男・美良生くんを出産。美良生くんが生後1か月半の時、ダウン症と告げられる。著書に、美良生くんの育児日記を公開した、ドキュメンタリーエッセイ『生きてるだけで100点満点!』(ワニブックス刊)がある。


※女性セブン2018年12月13日号

NEWSポストセブン

「奥山佳恵」をもっと詳しく

「奥山佳恵」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ