家系ラーメンの四天王「はじめ家」はなぜ富山県魚津市にあるのか

12月5日(木)11時0分 文春オンライン

 富山県魚津市には、行列の絶えないラーメン屋がある。国道の交差点の角に、その店は赤い看板を掲げている。曰く「家系総本山 吉村家四天王 ラーメンはじめ家」。





 吉村家といえば、いわずとしれた横浜駅西口にある人気ラーメン店だ。ラーメン好きならば、一度は耳にしたことがあるだろう。豚骨醤油ベースのこってりしたスープと太麺を特徴とする、いわゆる「横浜家系ラーメン」の総本山だ。しかし、なぜその家系ラーメンが魚津にあるのか——。


 実は、「○○家」と屋号を掲げる「家系ラーメン」の店の大半は、吉村家とは直接の関係はない。数少ないのれん分けされた店のみが「直系」を名乗れるが、それにしても「四天王」が横浜から遠く離れた北陸の地にあるのは不思議な光景だ。


「はじめ家」を2001年にオープンした店主の小沢肇さんに話をうかがった。



一番美味しかったのが吉村家だった


——吉村家では、どれぐらい修行されたのでしょうか。


小沢 1年半、2年近くかな。当時32歳ぐらいでしたね。


——小沢さんは、もともとこちらのご出身ですか?


小沢 生まれも育ちも魚津ですよ。海の方だから、魚を食べて育ちました。


——横浜に行かれたのは、どういうきっかけだったのでしょうか。


小沢 若いころ、しばらくトラックの運転手しとったもんやから、それでご縁があったんです。



飛び込みでお願いしたら、1カ月ぐらい連絡がなかった


——確か吉村家のご主人もトラックの運転手を……。


小沢 ああ、そうです。それで、意気投合といいますか……。前々からラーメンのお店を自分でやりたいと思っていて、いろいろな店を食べ歩いたんです。そうしたら、一番美味しかったのが吉村家だった。どうせならば吉村家で修行させてもらいたいと思って、社長にお願いしました。


——飛び込みですか?


小沢 飛び込みで行ったんやけど「また連絡するわ」って言われてから、1カ月くらい連絡がなかった(笑)。だから痺れを切らして、「ちょっとやりたいんですけど」とまた電話したら、「じゃあ来いよ」と言われて修行が始まりました。本気でやりたいのかどうか、様子見ていたんじゃないでしょうか。



1年経ってからようやく「皆伝」


——もともと、修行を終えたら地元に戻るつもりだったのでしょうか。


小沢 そうやね、やっぱり地元だから魚津でやりたいなと。田舎だけど、生まれ育ったところやからね。水もうまいし、米もうまい。立山(連峰)が守ってくれるから、大きな災害もないですし。


——独立されるときには、創業者の吉村さんからは何かお言葉はありましたか。


小沢 いやもう、やるしかないからね。店を出して1年ぐらい経ってから、ようやく認めてもらえました。ほら、あそこの壁に家系皆伝があるでしょう。



——あれがもらえたら直系ですか?


小沢 そう。それでやっと認めてもらったの。


——確かこちらは直系では2店舗目ですね。


小沢 そう、杉田家さんの次ですね。今の直系店は、そこのTシャツが飾ってあるところですべてですね。それ以外のお店のことは、たまに聞かれますが多すぎてよく知らないんですよ。



当初、お客さんの反応は……


——吉村さんは、よくいらっしゃるんですか。


小沢 いつもきていますよ。3カ月に1回ぐらい。他の直系同士でも、年に1度ぐらい集まったりして、ご飯食べたりしていますね。


——なるほど、まさにファミリーなんですね。富山はラーメン店が多い土地柄ですが、さっぱり系の味が多い印象です。


小沢 そうやね。昔ながらの醤油ラーメンが多いでしょうかね。



——最初に家系ラーメンを魚津で出したときには、お客さんからはどのような反応でしたか。


小沢 みなさん「おいしいよ」って言ってくれるんですけど、やっぱり賛否両論もあるだろうと思うしね……。最初は話題にもなってワッと来てもらえたけど、やっぱりちょっと一旦はギューンと落ちた。それから徐々に広まって、今はもうだいぶ受け入れられたと思います。支持してもらってありがたいです。



中毒性あるよね、ラーメンって


「はじめ家」は、18席ある長いカウンターと小上がりにテーブルが2つ。オフピークの時間帯も客足は途絶えることはない。週末になれば、駐車場は県外ナンバーの車でいっぱいになる。


 ところが、オープン当初からともに店を切り盛りしている女将さんは、「最初のころは、客足はさっぱりでしたよ。これで大丈夫かなと思いましたから」と陽気に振り返る。



——やっぱり慣れ親しんだ味とはちょっと違うという方が多かった。


小沢 そうやね、そういうのは最初あったと思いますよ。そのうち、少しずつ土曜日、日曜日にお客さんが並ぶようになって、だんだん平日にも行列ができるようになって……。


 おれも最初、吉村家で食べたとき「えっ、なんやこれ。こんなラーメンあるんや!」って衝撃やったからね。この辺のラーメンしか食べたことなかったから、「ラーメンってこんなものなのか」って。「えっ? すっげえ!」っていう感覚は、お客さんも最初あったのかもしれないですね。


——じわじわと増えていったと。


小沢 中毒性あるよね、ラーメンって。おれもさ、吉村家で食べて「あれっ、何これ?」って思って、それからしばらく通った。すると、不思議と「えっ、もう一回ちょっと食べてみたい」っていう気持ちになって、さらに食べているうちにもう中毒になっているんです。



店主自らが一つひとつを盛り付ける


——県外からのお客さんも多いようですね。


小沢 すごく多い。特に土日になったら、もうすごいですね。石川、新潟、岐阜とか、近隣県の人がほとんどですけど、なかにはとんでもない遠くのお客さんもおりますね。


 魚津はなんといっても魚が美味しい。ノドグロなんか、東京で食べたら高級魚でしょう。いいお寿司屋さんも多いですし、せっかく県外からこられたら、魚も食べて帰ってほしいですね。


◆ ◆ ◆



 肝心のラーメンは、しっかり丁寧に取った豚骨だしが感じられる、深味のあるスープ。そこに本場に勝るとも劣らない太麺がうまく調和している。繁盛店となった現在も、店主自らが一つひとつを盛り付けている様子が印象的だった。“北陸の虎”による手間がかかった一杯、一度は食べておきたいラーメンである。


写真=山元茂樹/文藝春秋



INFORMATION



はじめ家


住所 富山県魚津市吉島67-1


営業時間 11:00〜23:00(月曜定休。祝日の場合は翌日が休み)




(「文春オンライン」編集部)

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