「算数が解ける子」はどんな力を持っている?10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIXが教える、算数の力を伸ばす「センス」の身につけ方

2024年12月5日(木)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

「うちの子、とくに算数が苦手で……」「私自身、算数が苦手だから、子どもも嫌いになってしまうのでは……」など、親子ともに算数への苦手意識を持っている家庭もあるのではないでしょうか。教育ライターの佐藤智さんは、このような悩みの声を受けて、難関中学受験で高い合格実績を誇る塾「SAPIX小学部」で算数を担当する先生を取材しました。今回は、佐藤さんの著書『10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIXだから知っている算数のできる子が家でやっていること』から、SAPIX流・算数を嫌いにさせないメソッドを一部ご紹介します。

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算数の力を伸ばすのに「数的センス」は必要?


数的センスのある子は、ほとんどいない

「数的センスがないから算数も数学も苦手です」

たまに、そんな発言を耳にすることがあります。

みなさんは「数的センス」という言葉に、どんなことをイメージするでしょうか?

難しい問題でも天啓を受けたようにひらめいて解いてしまうタイプの子をイメージするかもしれません。しかし、SAPIXに通う子どもたちの中でも、そうした子はほとんどいません。

では、算数が解ける子たちは、どんな力を持っているのでしょう。

突然ですが、「3は10の何倍ですか」と尋ねられたら、何と答えますか?

みなさんならば、すぐに「0.3」と答えるはずです。

そのとき、3割る10を計算して「0.3」と答えましたか?

たぶん、ほとんどの人は、計算せずにパパッと「0.3」だと思い至ったでしょう。

なぜ、計算もせずに答えを導きだせたのか。

それは、さまざまな経験が問題を解く「感覚(センス)」につながっているからです。算数では、この経験に基づく感覚が重要になってきます。

経験がセンスにつながる


つまり、算数を解くために必要なのは、天啓を受けるような天才的な才能ではなく、経験を重ねて得た感覚です。

先程の「3は10の何倍ですか」という問いに対して、「0.3」とすぐに答えをだせたのは、たとえば「スーパーで3割引のお惣菜を買っていた」といった経験からきています。

買い物だけではありません。果汁30%のジュースは、どんな味がして、100%のジュースとの値段の違いはどの程度か。あるいは、重さ2トンのトラックの「2トン」とは自分が何人分の重さなのか、といった生活の中にある数字に興味を持つことが経験として蓄積されます。

生きていく中での、さまざまな経験が問題を解くセンスにつながっているのです。

もちろん机に向かう学習も必要ですが、それだけが「学び」ではありません。算数を解くセンスを磨くのは、問題集を解くことだけではないのです。

家具を買うときにサイズを測ったり、バスケットボールのシュート率を考えたりするなど、実体験をともなった理解があると、学びはどんどん骨太になっていきます。

体験は、頭で理解することだけでは得られない「センス」を身につけられるものになるのです。

Check!
・算数を解くセンスとは、経験に裏打ちされたもの
・生活の中で体験を通した数的センスを磨くことができる

算数は「思考」と「習得」の両方大事


「習得」した知見を、「思考」して活用する

「学びて思わざれば則(すなわ)ち罔(くら)し、思うて学ばざれば則(すなわ)ち殆(あやう)し」


(写真提供:Photo AC)

これは論語の一説で、「基本的な習得はするけれど、自分なりに考えることをしなければ、つまり聡明ではない」と伝えています。そして、自分で考えることはするけれど、基本的なことを学ぶ姿勢を持たなければバランスが悪いともいっています。

つまり、この文章では、学びとは「思考」と「習得」がセットであると説明しているのです。

「思考」とは、考える力のこと。自分の持っている知識を掛け合わせたり、過去の経験から仮説を立てたりする能力です。

「習得」とは、コツコツと勉強や練習を積み重ね、身につけていくことです。

この2つのバランスをとることは、算数を学ぶときにも、とても重要になります。

しかし、現在の日本の教育はどうしても「習得」に重きを置きがちになっています。

学生時代を思い返すと、試験前日に徹夜で公式を覚えた人もいらっしゃるかもしれません。多くの大人たちはインプット中心の学びの中で生きてきました。そうした経験から、どうしても「習得」中心に考えてしまうところがあるのです。

丸暗記して詰め込むといった「習得」の比重が大きくなる問題点は、「思考」に結びつきにくくなることです。

本質的な「習得」とは


ただ、本質的な「習得」とは、丸暗記することではありません。

数学の定理や公式は、過去に数字に向き合ってきた人が効率的に問題を解けるように体系的にまとめたものです。そのおかげで、私たちは算数や数学に関連する問いを短時間で理解したり解決したりすることが可能になりました。

少し大げさですが、人類の進歩により、現代の私たちは合理的に算数・数学の問題に取り組めるようになったのです。

これらの定理や公式を覚えることが「習得」だと思われるかもしれませんが、本来の「習得」とは、詰め込み型の暗記ではなく、先人がまとめた知見を適切なポイントでいかす力のことを指します。

つまり、算数の練習問題は、過去にまとめられた知見を「習得」しながら、それを活用できるように「思考」していくことが目的になってくるのです。

Check!
・「思考」とは、考える力のこと。「習得」とは、少しずつ勉強を積み重ねて知見を身につけること
・「習得」は単なる暗記ではなく、過去に導きだされた知見を適切なポイントでいかす力でもある

※本稿は、『10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIXだから知っている算数のできる子が家でやっていること』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

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