総選挙の「結果」を踏まえ、新しい資本主義から、地球環境問題、米民主党の政策から、対中国の立ち位置まで。

12月5日(日)12時0分 ソトコト

横浜市・日ノ出町の京浜急行電鉄の高架下にある、小さな焙煎所に併設したコーヒーショップ『Chair』。自家焙煎した淹れたての一杯を味わいに、近隣の常連客から遠方のコーヒー好きまで訪れる。田中さんと浅田さんはソファ席に腰を下ろし、水質浄化が進んだ大岡川沿いの風景を眺めながら、日本の政治や世界のこれからについて語り合った。

新自由主義からの転換は、実現できるか?

浅田 黒澤明監督『天国と地獄』の舞台となった初黄・日ノ出町地区に前回訪れたのは2019年5月号。この隣の『Tinys』で対談したけど、再訪すると新しいカフェもできて賑わってるし、いろんな建物を使った「黄金町バザール」って芸術祭もやってて面白い。いい感じだね。

田中
 この近くには僕の支援者の一人がサイフォンで淹れてくれる『珈琲山』という喫茶店もあってね、昔ながらの内装なのにデヴィッド・ボーイのポスターが飾られた店内でドイツの電子音楽グループのクラフトワークが流れていて、日本ナポリタン学会認定のスパゲッティも評判だよ。山下公園向かい側の『ホテルニューグランド』が敗戦でGHQに接収され、ケチャップを使って出したパスタがナポリタンの始まりらしい。
浅田 さて、安倍晋三から菅義偉へと続く“無能な強権支配”で国民の支持を失った自由民主党は、表紙を岸田文雄に替え、衆議院選挙に打って出た。岸田が1980年頃から続く新自由主義からの転換を唱えるのは正しいけど、中曽根康弘や小泉純一郎に続く肝心の安倍を否定しようとはしない。菅の推す河野太郎や応援団の小泉進次郎を降したのはいいのだけれど、安倍の言いなり(甘利明自民党幹事長は選挙区で負けて幹事長辞任に追い込まれたけど)。一方、日本共産党と共闘した立憲民主党が議席を減らしたんで、少し議席を減らした自民党も悠々と政権を維持。他方、4年前の総選挙では11議席だった右翼「改革」派の日本維新の会が4倍近い41議席に増やした。でも2012年に、「たちあがれ日本」を改名した太陽の党と合併して石原慎太郎が代表となった『旧・日本維新の会』が獲得した54議席よりは少なく、その後、みんなの党を除籍されて結いの党を結党した江田憲司が合流して橋下徹と二人で共同代表に就任した2014年の維新の党と同じ41議席に戻っただけ。しかも、全国での比例票は前回の2017年よりも減っている。

田中
 なのに躍進と見出しを打っちゃう「誤送船団・記者クラブ」の洞察力ってすごい。とまれ、7月の都議会議員選挙と似た有権者の絶妙な“無意識の判断”だったのかもね。45議席から激減必至と言われていた都民ファーストの会が蓋を開けたら31議席で第二党に踏み留まり、前回惨敗の25議席から倍増かと当初は思われた自民党は第一党に返り咲いたものの、33議席で拮抗する結果だった。今回の総選挙では自民15・立民13の減少分が維新に流れた形だ。都政では都民ファ、国政では維新が、現状の自民にも立民にも飽き足らない「swing voter=浮動票層」の受け皿となった。
長らく自民党本部で選挙を取り仕切ってきた久米晃・元事務局長が「無党派層」に関して興味深い分析をしていてね、かつては自民6割、野党2割で、残り2割が政治問題や学生運動に関心を示さぬ「ノンポリ」だった。ところが1988年のリクルート事件以降、自民支持が40パーセント前後に下がり、無党派層が4割以上を占めるようになる。こうした特定の支持政党がない「無党派層」の中で実際に投票所に向かう有権者はその都度、お灸をすえたり、期待を込めて一票を投じる。
今回で言えば、アベノミクス以来の自民の路線にお灸をすえたいけれど、「野党共闘」のイデオロギーにも食指が動かなかった層が都民ファや維新に「期待」した。両党は「自助」という名の経済的新自由主義を掲げる政党だけど、そこまでは見極めることなく、「守旧派」に対抗する「改革派」のイメージで捉えた人々が投票した。2005年に小泉純一郎が仕掛けた郵政選挙では自民に、その自民出身の小沢一郎と鳩山由紀夫がアイコンだった2009年当時の民主党に大勝をもたらしたのも「無党派層」だ。歴史は行きつ戻りつ、なかなか前には進まない。

浅田
 岸田の言う「新しい資本主義」はまだ全然中身がない。むしろ、「新自由主義の前のケインズ主義に戻り、資本主義の暴走を制御する」ぐらいのことでも言っときゃいいのに。とはいえ、宏池会の先達である池田勇人・元首相の所得倍増計画に戻るのは無理。むしろ地球環境問題や人口減少に見合った低成長経済を目指すべきなんだよ。
ちなみに、渋沢栄一ブームは「昭和前期はひどすぎた、明治はまだよかったはずだ」っていう“司馬遼太郎史観”の焼き直し。アダム・スミスは『諸国民の富(国富論)』で自由競争を説く前に『道徳感情論』で共感(他人の身になってみること)を説いた。自由競争による格差拡大は共感で制御するってことになってたわけ。渋沢が経済と道徳は一体だって言うのは儒教からきてるけど、スミスと通ずるところはある。問題は、資本主義が本格的に暴走し始めると共感ではとても制御できなかった。それでマルクスが登場することになったんだけどね。

田中
 なるほど。「市場万能主義=私益資本主義」の暴走と破綻を事前に回避する「消費者資本主義」という概念を僕は提唱しているんだ。米国型の「株主資本主義」と中国型の「国家資本主義」のいずれもが壁に打ち当たっている。とするなら、利益を求める欲望経済を利用しつつも、社会にとって有用な企業を生み出す経済システムを創出するうえでの基本理念を共有すべき。それが「消費者資本主義」。この地球上で呼吸をしている老若男女は、乳幼児も年金生活者も非正規雇用者も経営者も宰相も、誰もが分け隔てなく一人の消費者だからね。「公益資本主義」や「納税者資本主義」という言葉もあるけど、前者は公益という名の「国家益」に、後者も富める個人や組織の「私益」に化けてしまう蓋然性が高い。

浅田
 労働に重点を置いた古典派・マルクス派に対し、消費による効用に重点を置いた新古典派の延長線上の現在の主流派も一応「消費者主権(お客様は神様です)」を原則としている。それとの差別化は必要だね。たとえばGAFAMの市場独占に関しても「消費者の効用を損なうどころか、安価で便利なサーヴィスが増しているからいいだろう」という論理で規制が見送られてきたけど、最近欧米は供給サイドにおける独占企業の「優越的地位の濫用」を規制する方向を打ち出している。

田中
 なるほど。消費者は生産者でもあるという視点に立ち、環境を汚染する企業や、第三世界の人々に劣悪な労働条件を押し付ける企業の製品は、安価で便利でも購入しない意識を一人ひとりが持つべきだと。
話を戻すと、岸田の政治理念が今ひとつ曖昧なまま、新しい資本主義実現会議に続いて、デジタル利権の縄張り争いになりそうな「デジタル田園都市国家構想実現会議」、「デジタル臨時行政調査会」、「全世代型社会保障構築会議」と3つも会議を新設。しかも安倍内閣の「未来投資会議」や「国家戦略特別区域諮問会議」の構成員だったパソナ会長の竹中平蔵、その竹中が引き続き10年は総務大臣でいるべきだったと公言するKADOKAWA社長の夏野剛、岩手県知事時代に起債残高(借金)を倍増させた日本郵政社長の増田寛也といった“昔の名前で出ている面々”を選任した。それでなくとも18歳以下に10万円支給する「目玉政策」の5万円クーポンは、デジタルと真逆な金券と封筒の印刷代、袋詰めの人件費に郵送代、事務局を務める代理店の中抜き費用が馬鹿にならぬと悪評紛々。「30兆円超、見えぬ政策目的 寄せ集めの経済対策 効果薄い給付金、繰り返す」の見出しで日本経済新聞も、最初に金額ありきの大型補正予算を酷評する有り様だ。

浅田
 安倍的なものがさらに俗悪化したドナルド・トランプ的なものは、日本維新の会と減税日本が体現してる。両者の支持者である高須克弥が「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の自由展・その後」をめぐって起こした大村秀章・愛知県知事リコール運動でも、事務局長が署名の大半をアルバイトに偽造させた。トランプ陣営のやり口に匹敵する。それに乗った河村たかし名古屋市長はオリンピックで優勝した選手の金メダルをかじって批判を浴びたけど、彼こそリコールすべきでしょ。ところが、こういう右翼ポピュリズムは広がる一方。横浜市長になった山中竹春だって、吉村洋文大阪府知事のイソジン会見の元ネタを提供した、維新が担ぐにふさわしい人物で、それを立憲民主党と日本共産党が総選挙の前哨戦と称して野党統一候補にしたあたりで今回の敗北の兆候が見えてた。岸田が穏健な保守本流に回帰しかねてる一方、右翼ポピュリズムが広がっていく状況は、危険だと思うね。

目指すべき社会像が、見えてこない野党陣営。

田中 立民、共産、社会民主党、れいわ新選組の4党が総選挙前に、「かなりくたびれたけど、まだ闘う政治学者」と自虐的プロフィールをツイッターに載せている山口二郎が呼び掛け人の「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」と調印した6項目の「野党共通政策」は香ばしすぎる。「1. 憲法に基づく政治の回復 2. 科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化 3. 格差と貧困を是正する 4. 地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行 5. ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現 6. 権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する」。
立民・共産・社民の熱心なコア支持者は「よし!」と拳を突き上げるかも知れないけど、目指すべき社会のあり方と経済の果実が“飛び出す絵本”のようには一向に見えてこない抽象的なお題目だと、れいわサポーターや良質な無党派層は引いちゃったと思うよ。
上から目線で「#政権取ってこれをやる」タグまでつくった立民で代表代行の江田憲司が自民党総裁選の最中に発表したアベノミクス検証委員会の報告書も、A4サイズで裏表1枚ポッキリ。江田は行財政改革が売り物だった橋本龍太郎内閣で総理大臣秘書官を務めた旧・通産官僚なのに、単なる批判の羅列ばかりで具体的な処方箋が皆無。

浅田
 野党が候補者を統一するのは、小選挙区制での選挙戦術としては正しい。問題は中身だよね。

田中
 御意。「有権者は野党共闘にお灸をすえた」と、したり顔で「天声人語」が“怪説”した朝日新聞は何だろね。東京が大雪に見舞われた1994年1月28日深夜に小選挙区制比例代表並列制が成立して四半世紀、1989年に始まった『憂国呆談』で当時も我々は「多様性」が失われる愚策だと反対した小選挙区制の導入が、政治に留まらず日本全体の劣化を招いた。日経以外の全国紙4紙(朝日・産経・毎日・読売)が、派閥政治と金権選挙の温床が中選挙区制で小選挙区制になれば政策本位の政治になると主張した小沢一郎と一緒に旗振り役を務めた製造物責任は再検証されるべき。
今も金銭スキャンダルは絶えないのだから。どんな社会を創るか、その手段としての選挙なのに、野党も与党も相手を打ち負かすことが目的になって、有権者の心を動かすだけの理念と言葉を持った候補者を発掘・育成する手間暇を四半世紀、怠ってきたとも言える。

浅田
 55年体制は二大政党制じゃなく、アメリカで言えば“共和民主党”のような、自由民主党の内部の擬似政権交代で進み、3分の1強の野党が改憲に歯止めをかけてた。それに代わる構造ができないうちに改憲勢力が3分の2を超えてきたわけだ。
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「ブラ・ブラ・ブラ」と、グレタ・トゥーンベリが喝破。

浅田 同種の矛盾は地球環境問題についてもあって、温暖化が進むなか、脱化石燃料による二酸化炭素排出削減は遅すぎるんだけど、「COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)」を控えて急にそれを進めようとしたところへ、パンデミックのショック(サプライ・チェーンの寸断、いったん落ち込んだ消費や投資の急激な回復等々)がぶつかって、この冬は各地でエネルギー不足・物資不足に。短期的には、難しい局面だね。

田中
 チャールズ皇太子の息子のウィリアム王子が「世界最高峰の頭脳と知性を持つ人々は、次の目的地と居住地を探すのではなく、この地球を修復することに集中してもらいたい」と宇宙旅行分野で加熱する投資競争を非難し、エリザベス女王もCOP26に関して「話すばかりで行動に移さないのは実に苛立たしい」と“会議は踊る”状態に不満を述べ、グレタ・トゥーンベリも「段階的廃止=フェーズ・アウト」から「段階的削減=フェーズ・ダウン」へと石炭火力発電利用に関して表現を変えた「グラスゴー気候合意」を「ブラ・ブラ・ブラ=ぺちゃくちゃ話しただけ」と皮肉った。ジャーナリズムが述べるべき諫言を英王室や、年明けに19歳を迎える少女が代弁するとはイヤハヤ。とはいえ、化石燃料から再生可能エネルギーに舵を切ろうと世界中の指導者が唱和し始めたのは確かだ。

浅田 
中国は「2060年に二酸化炭素排出をゼロに」って習近平の鶴の一声で急激に舵を切ろうとし、結果、停電が続発する事態に。エコロジストにとってはピンチと言えばピンチで、「お前らの言うとおりにやってたら凍え死ぬ」と非難されかねない状況。そこで、「やっぱり二酸化炭素を出さない原子力発電が不可欠だ」、「新しい小型原子炉を普及させよう」とかいう声が強くなる。フクシマ後の日本では難しいだろうけど、政府が脱二酸化炭素のために出した電源構成案は、原発の再稼働や新規建設なしには達成できない。政治的にも河野や小泉が敗北して、原発推進派が勝利したし……。

田中
 僕が代表だった新党日本は3.11後の2012年の総選挙で「廃炉こそ新しい公共事業」を掲げ、でも選挙区だった兵庫8区で僕は敗退しちゃった(涙)。相変わらず原発依存をエマニュエル・マクロンが宣言したフランスはともかく、ドイツも米国も中国も新しい産業構造を創出する好機として気候変動問題を捉え、脱炭素に向けての莫大な投資を行おうとしている。献金という与野党政治家への“勧進元”は電力会社と『電力総連』だから急に舵は切れないという摩訶不思議な「常識」が日本では罷り通っているけど。
北海道、沖縄を含めてほかの9電力会社は東北、中部、北陸、関西、中国、四国、九州と全部地域名なのに関東だけは『東京電力』。1987年4月にJRグループ各社へ分割・民営化された『日本国有鉄道』が『日本国有鉄道清算事業団』へ名称変更して11年半、残務処理を担ったように、『東京電力』をフクシマ問題の精算会社にして、新たに「関東電力」をつくってやり直せばよかった。

浅田
 あるいは、すべての電力会社の原発部門を切り離し統合して国有化するか行政法人にすればよかった。民間営利企業である限り、原発を使い続けて元を取らなきゃいけないわけだから。
アメリカではジョー・バイデン大統領が新自由主義からの転換を目指し、5年で1兆ドル規模のインフラ投資法案を通した。ただ、セットになってた2兆ドル規模の育児支援や地球温暖化対策なんかの予算は先送りに。子どもや老人のケアも働く人を支える大事なインフラだってのは正しいのに、党内右派が頑強に抵抗している。

田中
 老朽化した道路や橋梁の改修と電気自動車の充電設備が目玉の1兆ドルは、全米各地に確実な雇用を生み出す。5万円クーポンとマイナンバーカード保有で最大2万円分のポイント付与が目玉な“極東の島国”とは月と鼈だけど、思い起こせば民主党のビル・クリントンと労働党のトニー・ブレアも、マーガレット・サッチャーの「サッチャリズム」やロナルド・レーガンの「レーガノミクス」の経済的新自由主義からの転換を就任時には掲げたのにね。

浅田
 むしろ、ブレアやクリントンが新自由主義を完成させたとも言える。バイデンはそこからの転換を目指してるわけだね。それにしても、民主党は党内抗争なんかしてる場合じゃない。トランプ・前大統領は大統領選挙の敗北を認めず、1月6日には支持者を連邦議会襲撃へと煽った。内乱教唆・煽動の現行犯だよ。もちろん、脱税問題なんかも含めてトランプが訴追される可能性はある。ただ、いまのところ共和党がやってるのは、トランプ弾劾に賛成した党員をパージし、トランプ支持で一丸となること! 他方、パンデミックで郵便投票なんかを導入してマイノリティの票が増えた失敗に学び(苦笑)、共和党が支配する州の多くで、マイノリティが投票しにくくなる選挙制度改悪を着々と進めてる。このままだと2022年の中間選挙は危ないし、24年のトランプ再選だって考えられる! 民主党が、延々議論してる暇なんかないっての。

田中
 不在連絡票と共に免許証や保険証の提示を求める郵便局と異なり、「投票のご案内」を差し出すや、本人確認もなく投票用紙を手渡す日本も胸を張れないよ。しかも「経費削減」を理由に今回、全国4万6466か所の3分の1もの1万6967投票所で閉鎖時刻を繰り上げた。午前7時に開き午後8時に閉じると公職選挙法で規定されているのに。いずれにせよ、バイデン政権で労働長官となったマーティ・ウォルシュが2014年からボストン市長として「市民に扉を開く公正な市政」をつくり上げる様子を描いたフレデリック・ワイズマン監督のドキュメント映画『ボストン市庁舎』が日本でも話題なんだから、もう少しバイデンは踏ん張らねば。

浅田
 安倍がまともに見えるほどのトランプのごとき潜在的独裁者に対し、紳士的にやってたんじゃ埒が明かない。岸田とバイデンは善かれ悪しかれ紳士なんだよ。
とはいえ、外交ではアメリカに追随して中国と対決するタカ派路線を修正したほうがいい。たしかに貿易戦争を招いてまで香港や台湾への圧力を強める中国の覇権主義は目に余るし、虎の子のIT企業にも鉄槌を下す、不動産バブルも規制するといった一連の引き締めには驚くけれど、それで経済が失速しかけると慌てて手綱を緩めるところを見ると、経済を犠牲にしてまでタカ派路線に突進することはないでしょう。アメリカが圧力を強める一方、日本は中間的な立場で中国の自由化を促すほうがいい。そのほうがアメリカにも役立つんだよ。中国に対して豪・英・米がAUKUS(オーストラリア+UK+US)で対抗するとか、それでイギリスの原子力潜水艦を買うことになったオーストラリアに、潜水艦購入をキャンセルされたフランス(太平洋にも領土をもつ)が激昂するとか、それは欧米帝国主義の再来で、日本が歓迎すべきものじゃない。南北朝鮮が国際連合に同時加盟したように、中国と台湾をTPPに同時加盟させるくらいの大技ができたらおもしろいが、まあ絶対無理だな(苦笑)。

田中
 その中国の習近平は毛沢東、鄧小平と同格に自分を位置付ける第3の「歴史決議」を中国共産党中央委員会で採択して虚勢を張ってる。ちっちぇえなぁ(爆笑)。

浅田
 習をクマのプーさんになぞらえた風刺画を禁じたときにわかったよ。つねに威張ってないともたない小者だって。革命と戦争を生き抜いた鄧小平は肩書なんか必要ないカリスマだったけど、習は「紅二世代」、つまり革命家の息子でしかなくて、任期の制限を撤廃し来年3期目を狙ってるものの、実は反対派も多いらしい。それを見越してのことか、「共同富裕」と称して金持ちの富の社会還元を求めるとか、スター崇拝、とくにメイクまでした「女々しい」イケメン・スターを非難するとか、塾を規制する一方でオンライン・ゲームの時間を制限し、競争から逃げる「寝そべり族」を叱るとか、最近の「ソフトな文化大革命」みたいな動きは確かに変。ただ、「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義」と憲法に謳いながら、実際は資本主義で、さっき言ったように本当に経済を犠牲にする覚悟はないはず。その点で、日本が水を向ければ乗ってくる余地はあると思う。むしろ、「台湾有事に際して米軍が日本にある基地から出撃する場合、日米安保条約に基づく事前協議の対象となる」くらいのことは言ってもいい。むろん台湾の民主主義は全面的に支持するけれど、それを戦争で守れるわけじゃない。

田中
 「祖国の完全なる統一」と強気な発言をする習は、返還50年後の2047年までは高度な自治を香港に認める「1国2制度」を反故にした“成功体験”を、武力衝突なしに台湾でも活かしたいと思っている気もするよ。
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photographs by Hiroshi Takaoka text by Kentaro Matsui
記事は雑誌ソトコト2022年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

ソトコト

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