子どもへの「甘やかし」と「寄り添い」の違いは?「どうせダメと言ったらめんどくさいことになる」と先入観がある場合は<甘やかし>かも。子どもが自立・自律に向かう考え方とは
2024年12月6日(金)12時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
「習い事やスポーツ、知育など詰め込みすぎていないか不安」「子育てに毎日一生懸命で疲れている」など、<詰め込みすぎの子育て>に悩んでいる方もいるのではないでしょうか。1万人以上の子育ての悩みを聞いてきた、モンテッソーリ教師あきえさんによると、自信をもって子育てするためには、<子育ての引き算>が大切なのだそう。世界の約140ヵ国で行われている、子どもの自立と自律を助ける教育方法・モンテッソーリ教育から分かることは——。今回は、あきえさんの著書『詰め込みすぎの毎日が変わる! 子育ての「引き算」』から、一部を抜粋してご紹介します。
* * * * * * *
Q.何でも子どもに寄り添うべき?
A.「寄り添う」ことと「何でもOK」は違います
子育てをしていると、「子どもには何でも寄り添うべき?」「でも、甘やかしてはいけないし……」と悩むことがあるかもしれません。
子どもの成長のために良いかかわりをしたいという思いはきっとみなさん同じだと思います。
実は、この悩みは「寄り添う」と「甘やかし」を区別することで解消できます。
「寄り添う」ことと「何でもOK」はまったく違うものなのです。
「寄り添う」と「甘やかし」の違いとは
子どもの育ちに必要なのは、「寄り添い」です。
「子どもに寄り添う」とは、子どもの気持ちを受け止め、共感し、支えることです。
たとえば、子どもに悲しいことがあったときに、「そんなこと言ってないで」などとあしらうのではなく、「悲しかったね」「何が悲しかったの?」とその感情に共感し、寄り添います。
そうすることで、子どもは「自分は大切にされている」と感じ、安心感を抱くことができます。
このような共感を通して、子どもが他人や自分をとりまく環境への信頼感を育んでいくことにもつながります。
一方で、「甘やかし」とは、子どもの欲求や主張に無条件で応じることです。
たとえば、「今すぐお菓子が食べたい!」と言われて、何でも許してしまうと、子どもは「自分の要求は常に通る」と誤解してしまうこともあります。
ここで大切なのは、「寄り添う」ことと「甘やかす」ことの違いを理解することです。
「引き算」で見える真の寄り添い
「寄り添う」と「甘やかし」を区別するためには、大人の「決めつけ」を引き算することがおすすめです。
どのような決めつけかというと、「甘やかし」の場合は「どうせこれをダメと言ったらめんどくさいことになる(子どもが泣いて怒る)」という気持ちが先入観としてある場合が考えられます。
(写真提供:Photo AC)
または、「物でつれば子どもは簡単に動く」と考えてしまうことがありますが、それは実は大人の決めつけかもしれません。
たとえば、夕食の時間に子どもが「今から絵の具で遊びたい」と言ったとき、以下のような違いが生じます。
【甘やかす】
「(ご飯の時間なのに、どうしよう……でも、どうせダメって言ったらもっと大変だ)うーん、本当はご飯だけど、じゃあ今やる?」
【寄り添う】
「絵の具で遊びたいんだね! でも今はご飯の時間だから、食べ終わったらやろうか」
この例では、「寄り添う」方は、子どもの気持ちを受け入れつつ、大切なルールを守るための制限も示しています。一方、甘やかす方は、子どもの要求にそのまま応じてしまい、制限を設けていない状態です。
制限がもたらす安心感
実は、「寄り添う」ためには、「決めつけ」を引き算することにあわせて、適切な「制限」が必要です。
この「制限」は、決して子どもの自由を奪うものではなく、むしろ安心感を与えるものです。たとえるなら、広い海で何の制限もなく泳ぐのは不安ですが、遊泳区域が決まっていれば安心して自由に泳ぐことができるように。
子どもも「ここまではOK」という範囲があると、安心してその中でのびのびと過ごすことができます。
「決めつけ」を引き算して、まずは子どもの欲求を見てみる。その上で子どもの自立と自律を助けるためにどうかかわると良いかを考えることがおすすめです。
暮らしていくために必要な制限があることで、子どもは自己決定力や内発的動機づけを育みながら、徐々に自立・自律へ向かっていくことができます。
「寄り添い」と「甘やかし」の違いを理解するためには、大人の「決めつけ」を引き算すること、必要な制限をもつことがポイントでした。
この2つの違いが明確になることで迷いが少なくなり、行動(かかわり・声かけ)が減り、実は私たち大人も楽になれるのです。
※本稿は、『詰め込みすぎの毎日が変わる! 子育ての「引き算」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
関連記事(外部サイト)
- 子育てに自信がもてず、あれこれ詰め込みすぎてしまう…。親の不安を軽くする「子育ての引き算」の考え方とは。1万人以上の悩みを聞いてきたモンテッソーリ教師が伝授
- 「算数が解ける子」はどんな力を持っている?10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIXが教える、算数の力を伸ばす「センス」の身につけ方
- 子どもを理不尽に怒ってしまい後悔…小児精神科医と考える、ストレスを抱えない親子のコミュニケーションの取り方とは
- 約9割の子どもが中学校までに「いじめの加害・被害」のどちらか、または両方を経験。「いじめが起こりにくい環境」を作るために大人ができることとは
- 何度言っても、子どもが言うことを聞かない時にかけるべき言葉とは?内向型の子どもに向けて、専門家が提案する「叱る」以外のコミュニケーション術