東大推薦合格者に聞いた 総合型選抜に関するよくある「お悩み」とは
2024年12月8日(日)10時15分 リセマム
しかし総合型選抜入試はまだ情報が少なく、また一般入試と違い、「この参考書をやってこれを覚えれば問題が解けるようになる」というような定式がない。採点方式が明確に存在するわけでもないため、対策で悩むことが多い受験生が後を経たない。今回は、東大推薦合格者たちに聞いた、よくある総合型選抜の悩みとそれに対する答えについて共有したい。
悩み1 志望理由書がうまく書けない!
志望理由書がなかなかうまく書けない、という受験生はとても多い。その大学に行きたいとは思っているし、やりたいことも見えているが、なかなかうまく言葉にできない、ということがある。
東大推薦生も、こうした点について苦労していたことは多かったようだ。「なぜその大学に行きたいのか」という質問の答えを考えようとするとなかなか形にならず、質問も漠然としていて、答えが定まらないからである。
その苦難をどう乗り越えていたのか。「なぜその大学に行きたいのか」ではなく、「他の大学ではダメな理由」を考えることがポイントだという。この方が、質問が具体的で、考えやすいのである。
逆に、「その大学・学部でしかできないこと」を考えていないと、たとえどれだけ素晴らしい志望理由書を書いても、「それって他の大学でもできるよね」「その研究だったら、他の大学の方が向いているよね」と言われてしまう余地があるようでは、不合格になってしまうケースが多い。
「その大学・学部でしかできないこと」は何か、という観点で、その大学のホームページやパンフレットを読み込んでみよう。アドミッションポリシーや、その大学で実際に行われている授業・その大学で授業を受けもっている先生の情報を集め、「ここの大学でしかできないことは何か」「ここの大学でないといけない理由は何か」ということを調べていく。さらにその際に、自分の今までの経歴や、自分の将来就きたい職業などを意識することで、「この職業に就くためには、こんな経験をしておくべきだから」というように、だんだんと方向性が見えてくるだろう。
悩み2 他の人が書いていないような内容を盛り込みたい!
志望理由がありきたりなものになってしまう、という悩みをもっている受験生はとても多い。志望理由書を書けたは良いが、他の受験生と被ってしまう内容になってしまっている、と。
特に、東大をはじめとした倍率の高い難関大学だと、差別化しないと志望理由書の時点で落とされてしまう可能性があるため、他の人が書いていないような内容を盛り込みたいという人は多い。東大生も、一度書けた文章を「ありきたりなんじゃないか」と思って書き直した経験がある人はかなり多かった。
こうした場合におすすめなのは、「大学側のメリットを考える」こと。
有名な話だが国際基督教大学(ICU)の願書には、提出時に回答を求められる質問項目がいくつか存在する。その中のひとつに、「ICUにとって、あなたを受け入れることが、重要になると思う理由を答えなさい」というものがある。「あなたにとって」ではなく、「I C Uにとって」という質問はなかなか他の大学では見られない。「こういう理由で、自分を合格させることで大学側にとってもメリットがある」と示すことを求められているわけである。
これは、ICUに限らず、とても重要な観点である。自分のことだけでなく、他の学生にも良い影響を与えられるポイントもしっかり考えられている受験生というのは、とても稀だからである。
悩み3 台本通りにしか喋れない!
面接の準備をする際に、想定質問を用意することはとても有効な手段だと言えるのではないだろうか。「志望理由はなんですか?」「将来何がしたいですか?」のような必ず聞かれる質問に対して淀みなく答えるようになるためには、あらかじめ想定質問の回答を作っておくと良いと、学校や塾で指導されることもあるだろう。
しかし、台本を作ると、それ通りにしか話せなくなってしまって、「志望理由はなんですか? 特に、どういう大学生活を送りたいかということを重点的に教えてください」など、アレンジされた質問をされたときに困ってしまうこともある。実際、台本を覚えてしまっているために、変則的な質問に対してうまく回答できず、面接で失敗してしまう受験生が後を絶たない。特に、東大推薦に臨む人は、東大教授からいろんな角度から質問をされることが考えられるので、台本通りではなくきちんといろいろな角度からの質問に対応する必要があり、この点で非常に苦慮する場合がある。
解決策のひとつとして東大推薦生たちが行っていたのが、「絵を描く」というものだ。スクリプトにして文字で覚えるのではなく、絵で自分の今までのことを描く。高校まで何をして来たのか、もし留学のプログラムに参加したらどんな活動をするか、大学時代にどのような生活を送っていると想像できるか、絵や図表にする。こうすることで、台本的な回答ではなく、そのイメージを共有する喋り方ができるようになる。
少し時間はかかるが、自分の中でのイメージをまとめるための手段にもなる。実際、東大以外にも早慶に選抜入試で合格した受験生にも、この方法を実践していた受験生がいた。直前まで絵を見ておいて、イメージを重視した対策をしていたとのこと。確かにこの方法なら、固定化された回答ではなく幅をもった回答が可能になる。
今回3つのよくある悩みを紹介したが、今回の3つの悩みを通して考えられることは、「総合型選抜入試においてしっかりと『相手からどう思われているのか』を考えることは重要だ」ということだ。志望理由書で他の人が書いていないようなことを書いて独自性を出すことや、台本通りではない話し方をすることは、「面接官からどう思われるのか」を意識する中で生じる悩みである。東大推薦生もこうしたことに最後まで悩んだうえで合格していた。そう考えると、悩みと真摯に向き合う中で、合格への道が開けてくるのかもしれない。