骨が分泌するホルモン 筋肉や精子も増加させる注目物質

12月8日(金)11時0分 NEWSポストセブン

健康を支える「オステオカルシン」とは

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 NHKスペシャルで全8回にわたって放送中のシリーズ『人体 神秘の巨大ネットワーク』は、これまであまり知られてこなかった「臓器や体組織の間での情報伝達」のメカニズムを明らかにし、話題を呼んでいる。


 これまで医学界では、脳が指令塔となり、体の各部位に様々な指令を出して健康状態をコントロールしていると考えられてきた。ところがNスペでは、各臓器や体組織も独自に「メッセージ物質」を分泌し、ほかの臓器などと直接やり取りをしている──という学説を取り上げ、関心を集めている。


 来年1月7日に放送予定のシリーズ第3弾『“骨”が出す! 最高の若返り物質』では、骨が発する“メッセージ物質”が取り上げられる。


 骨が分泌する代表的なメッセージ物質(ホルモン)である「オステオカルシン」には、糖尿病を改善する働きがあると指摘されている。


 それが知られるきっかけとなったのは、40年以上にわたって骨の研究をしてきたコロンビア大学遺伝発達学のジェラルド・カーセンティ教授が2007年に発表した研究である。『“骨ホルモン”で健康寿命を延ばす! 1日1分「かかと落とし」健康法』(カンゼン刊)の著者で、福岡歯科大学客員教授の平田雅人氏が説明する。


「カーセンティ教授の研究は、それまで“動かずに体を支える硬い無機質なもの”だった骨に対する研究者の考え方を一変させる画期的なものでした。その後、10年間の研究で様々な知見が積み重なり、いまやオステオカルシンは世界の医学界から注目されるホルモンとなりました」


◆「長寿ホルモン」の分泌


 オステオカルシンは、骨全体の質量の約0.4%しか存在しない。そのうち血液を介して様々な臓器に運ばれるのはさらにわずかな量とされている。なぜ、骨から分泌される微量なホルモンが糖尿病を予防するのか。


「オステオカルシンは膵臓と小腸に直接働きかけます。膵臓ではランゲルハンス島β細胞を増殖させ、血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌量を増加させる。小腸では、同じくインスリン分泌を促すホルモンであるインクレチンの分泌量を増やします。オステオカルシンの濃度が低い人は、糖尿病診断の指標として用いられている『ヘモグロビンA1c』が高いケースが多いこともわかっています」(前出・平田氏)


 東北大学大学院医工学研究科教授の永富良一氏は、「脂肪細胞」への働きかけにも着目する。


「オステオカルシンは、脂肪細胞が出すアディポネクチンの分泌も促します。アディポネクチンはインスリン感受性を高めるため、血糖値の改善を促すと考えられます。また、アディポネクチンには多すぎると筋力が弱ってしまうという弊害もある一方、『長寿ホルモン』とも呼ばれており、動脈硬化や脂質異常症を抑制する効果があります」


◆「筋肉」も「精子」も増加


 オステオカルシンが動脈硬化を防ぐのは、血管内の一酸化窒素の産生を促進する働きがあることも大きいという。前出・平田氏がいう。


「血液内の一酸化窒素の量が増えると、血管平滑筋という血管の内側の筋肉が弛緩することが確認されています。その結果、血流がスムーズになると考えられている。動脈硬化を予防することで、その先にある心筋梗塞や脳梗塞など、命に直結する危険な病気の予防にもつながります」


 マウスでの研究段階ではあるが、オステオカルシンには認知症の予防効果も期待されている。


「カーセンティ教授の実験では、オステオカルシンを分泌しないよう遺伝子操作したマウスに、脳の神経細胞の働きの低下が認められた。そのマウスにオステオカルシンを注射したところ、記憶力や認知機能が回復されたとしています。詳しいメカニズムは解明されていませんが、同教授は、“脳の神経細胞死を抑制する何らかの効果があるのではないか”と分析しています」(同前)


 神経だけではなく、オステオカルシンには筋肉への作用も確認されているという。


「筋繊維を増やすたんぱく質の合成能力の向上にも効果があると見られています。カーセンティ教授が老化マウスにオステオカルシンを注射したところ、マウスの骨格筋量が増え、運動機能が回復したとの結果が出ています」(同前)


 さらにカーセンティ教授以外にも、多くの研究者が「オステオカルシンには男性ホルモンのテストステロンを増やす働きがあり、男性の生殖機能を回復させる可能性がある」と発表している。


※週刊ポスト2017年12月15日号

NEWSポストセブン

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