<フィフィ・佐藤大和弁護士対談>今、芸能人の権利を守るユニオンが必要な理由

12月8日(金)16時0分 週刊女性PRIME

フィフィと佐藤大和弁護士

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芸能人の権利を守る「日本エンターテイナーライツ協会」の発起人でもある佐藤大弁護士フィフィが、今後の芸能界について考える「どうなる、これからの芸能界」。第三弾では、日本の芸能界にユニオンが必要な理由について、海外と比較しながら分析していきます。

◇ ◇ ◇

ーーなぜ芸能人の権利を守る“ユニオン”を作ろうとされているのかについて伺っていきたいと思います。

佐藤:契約書ひとつとってもそうですが、日本のエンタメ文化のなかに、契約文化、法律文化を育てていかないと、いくら魅力があってもタレントさんは海外で闘えなくなってしまうと思うんですね。

フィフィ:日本のタレントさんは、自分たちに権利があることを知らないことが多いですよね。

佐藤:その理由のひとつとして、マネジメントとエージェント(※注1)が一緒になっていることがあげられると思います。いまは事務所のなかにどちらも入ってしまっている。

 だけど、たとえばアメリカの場合は、マネジメントとエージェントが別々なんですよ。タレントさんは何か相談したいことがあったとき、事務所を通さずエージェントに直接相談することができるわけです。

フィフィ:実際、私たちには相談相手がいないのよ。もちろん私自身、別に不満なことはないけどね(マネージャー苦笑)。なかには髪型ひとつ変えただけで文句をいってくる事務所もありますからね。

 けど、もし私が何か不満をもったとしても、友だちに相談しようにも業界のことはわからないし、問題解決にはならないんですよね。

佐藤:タレントさんの権利について、日本でもやっと公正取引委員会が動き出そうとし始めています。なぜいままで動き出さなかったかというと、タレントさんと事務所の契約が、個人事業主としてなのか、労働者としてなのかで裁判所の判断も変わってしまうからなんですね。

 個人事業主の場合は対等な関係での契約になるので、労働基準法で取り締まりすることができない。独占禁止法などの対象になるんです。

 そのため裁判所が判断するときに、その契約内容によって監督官庁も別々になってくるんですね。そうした複雑な状況もあって、公正取引委員会は動きづらかったわけです。

 だけどオリンピックに向けて、スポーツの活動禁止規制を崩したいという意図があって動き始めた。芸能もそれに付随して動き始めたともいわれています。

フィフィ:公正取引委員会だけでなく、佐藤先生のようにユニオンを作ろうとしている方たちも、芸能人たちの権利を守ろうとしてくれているんですよね?

佐藤:そうです、ただこの動きに賛同してくれるタレントさんがまだまだいないのが現状です。

フィフィ:事務所の顔色を見ないといけませんからね。それに入ってしまうと、いつでも訴えますよ、という姿勢だと受け取られてしまいかねませんから。

 事務所と敵対関係になってしまうのではないかというイメージがまだあるので、ちょっと入りづらいところがあると思います。



ーー芸能界、芸能人といっても幅広いと思うのですが、そのユニオンでまず救いたいと思っていらっしゃるのは、具体的にはどのような人たちなのでしょうか?



佐藤:僕たちが一番救いたいのは、これから芸能界に入りたい方、そして悪徳芸能事務所に入っている方たちですね。

 ユニオンを作るというと、どうしても大手事務所を敵に回すのでは? と誤解されてしまいがちな節もあるのですが、そうではなく、地下の芸能事務所(※注2)に入っている方たちを守りたいと考えています。

フィフィ:大きな事務所はトラブルになると報じられてしまうので、トラブル自体を避けているような印象がありますね。

佐藤:大手の事務所のトラブルで多いとすれば、マネージャー主導の芸能人の独立、移籍です。タレントさんが主導することは少ないです。本人の意思というよりも、周囲からいわれて動くというパターンが圧倒的に多いんですよね。一流芸能人は周りが騒ぐんです。

 芸能事務所は悪役ではありませんし、独立、移籍をするのであれば、うまくやることが重要だと思います。交渉をしっかりする。

 対話と調和を大事にするというのは芸能人にとっては重要なことなんですよね。そういった意味でも、これから5〜10年後には、芸能エージェントというのがたくさん出てくるでしょうし、タレントさん自身が交渉をしようと声を上げることができるようになると思います。

フィフィ:タレントさん自身も勉強する必要がありますね。

佐藤:そうなんです。ユニオンに入る以前の問題として、タレントさんたちが権利に関して教育を受ける必要性も強く感じています。

 というのも、何かトラブルが起きる場合というのは、事務所ではなく、芸能人の方に落ち度がある場合も多いんですね。事務所も会社ですから、タレントさんの育成、マネージャーなどの人件費を払っているわけです。

 そうしたなかで、タレントさんが覚せい剤、不倫、独立など勝手に動いてしまい、トラブルになって弁護士に相談してくる。いくらユニオンに入っているからといっても、これではやはり事務所に対しての筋が通っていないので、タレントさんもそうしたところはきちんと教育を受ける必要があると思うんです。

 実際、破産してしまう事務所を見ていると、タレントさんのわがままが多くてこじれた結果、ビジネスとして立ち行かなくなるケースが多いですし。

ーーしっかりと自らの権利について学んだうえで、ユニオンに入る、と。



佐藤:お勉強会を非公開でやることもありますので是非。12月13日にもまたシンポジウムをやるので、そこでもご説明できればと思っています。

 その際、特別ゲストを呼んで芸能界について語っていただきたいと思って、タレントさんにもお声がけしたんですが、みなさんなかなかOKが出なかったんですよね。まだまだハードルが高そうです。

フィフィ:私は出るよ(笑い)。外国人として、日本の芸能界を海外との比較から語ることができるから、反発もこないんじゃないかな(笑い)。

ーー日本と海外の芸能界を比較したとき、やはり権利に関する意識は違いますか?

佐藤:違いますね。海外のタレントさんは、自立していますよね。SNSも含めて、自らのブランディングができている。最近では海外のドラマを見ていると、日本人役を中国の俳優さんが演じていたりしますよね。そういうケースを見るたび、日本の芸能事務所は、日本のタレントさんたちの海外での活躍のさせ方がまだまだ不十分だなと感じます。

 同時に、それをサポートできるエンタメ分野専門の弁護士もいないんですよね。弁護士も育成していかなければいけないし、タレントさん自身も勉強して自立する必要がある。そのためにもユニオンは必要だと思うんです。

フィフィ:海外ってギャラ交渉から入って仕事を受けることが基本なんです。それに対して日本の芸能人は、ギャラ交渉も芸能事務所に任せっきりでしょ。それだけでも意識の弱さがわかりますよね。海外は自らブランディングして売りにいかなければ、事務所の売り方で売れるなんていう甘い世界ではないです。

佐藤:マネージメントとエージェントが一緒になっている日本の芸能事務所のこれまでの体制では海外では戦えない。そのためにも、まずは芸能人と芸能事務所が対等な交渉、競争が育つような環境作りがしたいんですよね。

ーー12月13日に行われるというシンポジウムは、どういった構成になっているのでしょうか?

佐藤:シンポジウムを主催する日本エンターテイナーライツ協会は、僕が発起人として、中心になって設立した団体です。ユニオンについて事務所の立場にも配慮しつつ、知ってもらうため、今回は昼と夜に講演を行います。昼講演については業界関係者、夜は一般の方を呼んで講演を行おうと思っています(※注3)。

※ 注1 弁護士や税理士など、タレントが活動を行う上で専門的な知識・職能をもとに業務を遂行する代理人のこと。日本の芸能事務所の場合、顧問弁護士以外にタレントと個別に契約する弁護士がいるケースは希少である。

注2 対談第二弾の記事を参照のこと。

注3 詳しくは、http://era-japan.org/にて。

<構成・文/岸沙織>

週刊女性PRIME

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