【事故物件】 “誰かが死んだ部屋”に住み続ける芸人・松原タニシが体験した“なんでもなくない”日常

12月8日(金)7時0分 tocana

僕の“居住なう”の事故物件(撮影/村田らむ)

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——【新連載事故物件に住み続ける芸人・松原タニシが綴る、事故物件における事故物件ならではの“なんでもなくない日々”。

事故物件。誰かが死んだ部屋。僕はそこに住んでいる。

今や空前の事故物件ブーム。ここ数年で「事故物件」というワードは事故物件公示サイト『大島てる』の浸透もあり、最早世間に十二分に認知されたと思う。しかし、まだまだ一般的には分からない部分が多いであろう事故物件。

「事故物件に住まない為には?」
「事故物件の見分け方は?」
「一回誰かが住めば告知義務が無くなるって本当?」

などなど、事故物件を“避ける為”に気になる点はいろいろあると思うが、それらの専門的な部分は事故物件公示サイト『大島てる』の管理人・大島てる氏に任せるとして、僕が言えるのは、

「事故物件って住んでみたらどんな感じ?」

のオカルト的知的好奇心の部分。

「事故物件住みます芸人」として、今まで5年間で5軒の事故物件に住んできた僕が、いわゆる「事故物件」と呼ばれる物件に実際に住んでみて感じた事、そして体験した現象を、これからお伝えしていこうと思う。

まず一番気になるのはやはり「幽霊が出るかどうか」ではないだろうか?

事故物件に纏わる怪談話は巷に山ほど存在する。あたかも世の中全ての事故物件には必ずや幽霊が現れるかのように。

そして残念な事に大抵は「ある知人」の話だったりする事が多い。当事者の話であったとしても、昔住んでいた部屋であったりとかで、「居住なう」はあまり聞かない。

 よくあるパターンとしては、ベランダの窓に首を吊っている人影が映ったり、押入れから誰かが覗いてたり、金縛りに遭って女が首を絞めてきたり……。で、「後にわかった事だがこの部屋は数年前ある女性が自殺をした部屋だった」みたいに締め括る話が多いように思う。

しかし、正真正銘「居住なう」である僕が言えるのは、「ほとんど出ない」という事である。


■事故物件に幽霊は出ない?

事故物件に住んできた5年間、僕は一度も幽霊を見なかった。定点カメラに変な映像が映ったり、携帯電話に謎の留守電が入ったり、エレベーターが存在しない階から降りてきたり、マンションの入口で車に轢かれたり、事故物件に住むようになってから神社仏閣に入ると突風が吹き荒れたり、なぜか携帯電話で写真を撮ろうとすると膝ばかり顔認証したりとかはあったけど、はっきりとした人型の幽霊は見た事がない。

皆さんが思っているほど、事故物件だからといって簡単に幽霊は現れないのである。

ただし、「ん?」と思う事はよくある。

例えば、「何か視線を感じる」といった人の気配。あるいは、「後ろを黒い影が横切った」といった人の気配。もしくは、「さっきまでそこに誰か居たような…」といった人の気配。

これらの人の気配は、確かに生活の中で感じたりする。「この部屋で人が死んでいる」という事実がより一層この気配に現実味を持たせる。ただ、この事実があるからこそ、自ら勝手にその「気配」を作り出している可能性は否めない。

あとはラップ音。いわゆる「家鳴り」というやつだ。

これに関しては正直、事故物件じゃなくても鳴る。普段生活を続けている中で、さりとて気にならないから気付いていないだけである。しかし、事故物件に住んでいると意識が変わる。ほんの些細な物音でも「誰か居る?」と、無意識のうちに怪奇現象の方へ意識を引っ張られてしまうのだ。一度気になってしまうともう全部怖くなる。怖いほうへ怖いほうへ繋げてしまう。普段聞こえているけど気付いていないだけの音も、意識して聞いてしまうようになるのだ。

つまりは「気の持ちよう」の部分は大きいと思う。「そうかもしれないし、違うかもしれない」の「そうかもしれない」に引っ張られると、怖い。実際、何か部屋の中に気配を感じている時に突然「パーン!」とラップ音が鳴った時があって、その時はおしっこをちびりそうになった。

でも、その怖さも、日々の生活に忙殺されると、気にならなくなる。

人間は慣れる生き物だ。一度体験した恐怖は、それを超えてこない限り「そんなもんか」と思えるようになる。人の気配やラップ音は、もしかすると「気のせい」ではない事もあるかもしれないが、大丈夫、それ以上悪さをしてこない。むしろ半年も住めば愛着さえ湧いてくるものだ。家に帰って「ただいま」と言ったら「バンバンバンバン」と4回ラップ音が鳴った時は、「ああ、おかえりって言ってくれてるんだ」と妙に嬉しくなったりしたものだ。

そして何より、僕は生きている。事故物件を転々と住み渡り、未だこうして存命中だ。究極、事故物件に住んで怪奇現象が起きたとしても、死なない。だから大丈夫。

「幽霊が怖いから事故物件は嫌だ」という人は、安心してほしい。そもそも幽霊は、そんなに出ない。し、命に別状はない。

僕は職業上、事故物件に住んで幽霊を撮影しなければならない。1軒目の事故物件でオーブ(丸い発光体)が乱舞する映像を撮影するのに成功したが、それ以降は今のところバンバン撮影できているわけではない。だから幽霊にはできれば現れて欲しいのだが、なかなか思い通りにはいかないものである。

今現在日本は少子高齢化が進み、独居老人が増え続け、結果的に事故物件もたくさん余っている状態である。その全ての物件に僕が住むのは不可能だ。だから皆さんにはどんどんと事故物件に住んでほしい。借り手が見つからず困っている大家さんはたくさん居る。何より「安さ」は魅力的である。

これから、この連載では僕がこれまでに住んできた事故物件で起きたことや、住んではいないものの、これまでめぐってきた事故物件について綴ってみたいと思っている。記事を読んで、もし事故物件に住む人が増えてくれればありがたい。何がありがたいかというと、なかなか現れてくれない幽霊に、もしかしたら出会ってしまう人もいるかもしれないから。もし幽霊に出会えたなら、僕に教えて欲しい。定点カメラを持ってお宅にお邪魔させていただきたいので。
(文=松原タニシ)

tocana

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