【本音レビュー】映画『隠れビッチやってました。』はラブコメではなくホラー映画 虐待されて育った主人公の心の葛藤が描かれています

12月9日(月)17時45分 Pouch[ポーチ]

【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。


今回ピックアップするのは映画『隠れビッチやってました。』(2019年12月9日公開)。あらいぴろよさんの同名コミックエッセイの実写映画化です。原作コミックエッセイは未読だった私は、タイトルやポスターの雰囲気からてっきりラブコメだと思っていたのですが、全く違いました。男にモテることで承認欲求を満たしているヒロインの生き様を描いた、女性のダークサイドを描いた映画だったんです!

【物語】

荒井ひろみ(佐久間由衣)は26歳、シェアハウスで木村彩(大後寿々花)と小島晃(村上虹郎)と3人暮らしをしています。男ウケする服、さりげない露出、可愛い仕草など、計算しつくして男に接近し、告白されたらバイバイするという、ヒジョーに自己中女のひろみ。

しかし、彼女が男にモテることを生きがいとしているのは、壮絶な過去から逃れるため。心の隙間をモテ女になることで埋めていたのです。

【強烈な二面性を持ったヒロインがいろいろスゴい!】
ヒロインの生き様がけっこうハードで、意外性があるところが良かったです! まずひろみの二面性がスゴイ。狙った男の前では、ひたすら可愛く振舞って、自分にグイグイ引き寄せて、相手が自分に夢中になって告白してきたら「ごめんなさ〜い」と、パっと手を放して、次のターゲットに向かっていく。本当に「ど〜ゆ〜こと?」って感じですよ。だから「隠れビッチ」なんですね。

おまけに私生活ではずっとビール飲んで酔っ払って、大声でおしゃべりして、行動から何から超ガサツ! 友人からたしなめられても「これが私」と聞く耳持たない頑固さがあって、ギャップがハンパない。このキャラを「おもしろい!」と感じるか「苦手」と感じるかで、この映画の評価は左右されるかもしれません。

【過去の悲劇が隠れビッチを生んだ】
実はひろみが隠れビッチになったのは、幼少期の親の虐待が原因。自己肯定感を得られなくなっていた彼女だったけど、告白されると「求められている自分」を感じられるから、男相手に隠れビッチであり続けるというわけ。

つまり男に告白されることは、彼女にとって生き続ける為に必要なことであり、止められないクスリ的な効果があったんですね。

【ひろみは真の恋愛ができない女?】

そんな彼女に、本当のダメな自分をさらけ出しても「好きだ」といってくれる職場の上司の三沢(森山未來)が現れます。でも、彼の愛をなかなか信じ切れないひろみは、愛情確認を繰り返した末に、暴言はいたり、暴力を振るったりしちゃうんです。親の虐待に苦しんでいたのに、自分が好きな男にDVしているという事実が悲しい。「ひろみはどうしたら、この泥沼から抜け出せるのだろうか」と映画を観ながら考えちゃいましたよ。

【観る人を選ぶ映画かも】
正直、観る人を選ぶ映画だとは思います。男の気持ちを振り回して、シェアハウスの仲間と飲んばかりいる前半の彼女のガサツで奔放なふるまいを「ワガママ」と思ったり、後半のひろみの本質に迫っていくダークサイドのエピソードを「重い」と感じたりする人もいるでしょう。でもこの手のやっかいなメンタルを持つ人物を描いた映画って、ドハマりする人もいるんですよね。ハマると、グサグサ刺さる映画なのかもしれないと思いました。

ちなみに私は、最後までひろみに共感できなかったです。悲しい過去があったにせよ、もう少し彼女に他者を思いやる心が見えたら、好きになれたのになあと思う。共感できる人とできない人が真っ二つに分かれる賛否両論映画と言えるのではないでしょうか。

執筆:斎藤 香 (c)Pouch

『隠れビッチやってました。』
(2019年12月9日より、新宿バルト9ほか全国ロードショー)
監督・脚本:三木康一郎
出演:佐久間由衣 / 村上虹郎 大後寿々花 小関裕太/ 森山未來
原作:あらいぴろよ「“隠れビッチ”やってました。」(光文社刊)
©2019『”隠れビッチ”やってました。』フィルムパートナーズ/光文社

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