清水建設の執行役員が下請け企業に実家の「草むしり」させる…法的な問題は?

12月18日(月)10時12分 弁護士ドットコム

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清水建設は12月11日、福島県の除染工事を担当していた執行役員が、取引業者に無償で同県内の実家の草むしりや雪下ろしをさせていたと発表した。執行役員は8日に辞表を提出して辞任した。


報道によると、執行役員は2015年1月、業者に福島県西会津町で空き家となっていた実家の雪下ろしを依頼。その後、今年4月まで計4回にわたって業者が自発的に草むしりなどを行った。執行役員は問題が発覚してから、費用33万2千円を業者に支払ったという。


ネット上では「辞任で済むのか」「氷山の一角」など執行役員の行為を非難する声が多く上がっているが、下請法違反など法的には問題ないのだろうか。公正取引委員会での勤務経験がある籔内俊輔弁護士に聞いた。


●独占禁止法で『優越的地位の濫用』が禁止されている

今回の行為、法的に問題はあるのか。


「まず、下請法は、建設業法における建設工事の下請取引には適用がありませんので、除染工事が土木工事(建設工事)にあたるのであれば、下請法の適用はなさそうです。


他方で、独占禁止法では、不公正な取引方法の1つとして『優越的地位の濫用』が禁止されています。これは下請法の規制と同じ趣旨ですが、取引上の関係を背景に取引相手に不利益を押し付ける違反行為を規制しています。これは建設工事の下請取引についても適用があります。


そして、取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、不当に『継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること』は、優越的地位の濫用として問題になります」


●取引先に不利益を与える行為であれば、『優越的地位の濫用』として問題になりうる

今回、清水建設の執行役員は、実家の草むしりや雪下ろしを下請け業者にさせていた。個人で行っていたわけだが、この行為は「優越的地位の濫用」にあたるのか。


「今回の事案では、まず、『優越的地位』を利用して作業を実施させたといえるかがポイントになります。つまり、取引上の力関係が強い(取引業者は清水建設からの発注工事に依存しているなど)ことを背景にして、経済上の利益が提供されたのかどうかということです。この点は、取引の実態を詳しく見てみないと分かりませんが、優越的地位がなければ、一種の営業上の行為として問題ないといえるかとは思います。


次に、清水建設が優越的地位にあるとしても、『自己のために』利益を提供させたといえるかが問題になるかと思います。この要件は、取引業者が経済上の利益提供をしても、その見返りとしての利益が具体的に見込まれるなど、取引業者のためになる(直接の利益になる)場合は、優越的地位の濫用にあたらないとするための要件と考えられています。


そのため、優越的地位を利用して経済上の利益が提供されていたとすれば、その利益を、優越的地位にある事業者ではなく他の者(執行役員など個人)が受け取っていたとしても、劣位にある取引業者にとっては不当な不利益を押し付けられるものですから、『自己のために』提供させたといえると考えられます。


今回のケースは、問題の執行役員個人が利益を得ただけかもしれませんが、無償で草むしりや雪下ろしをした取引業者にとっては自己に具体的な利益が見込めない作業のようにみえます。こうした作業依頼が、除染工事等に関する取引で清水建設が有する優越的地位を利用して行われた場合には、理論上は『優越的地位の濫用』に当たる余地は否定はできないと思われます。ただ、利益提供の件数や金額が大きくなければ、公正取引委員会などによる調査の対象にならない可能性も十分にあるかとは思います。


なお、事前に相応の費用を支払っている場合には、取引業者にとって不利益とはならないので優越的地位の濫用に当たらない可能性が高まりますが、事後的に費用が支払われたとしても、そのことでただちに違反でなくなるわけではありません」


利益が会社にもたらされていなくても、独禁法上、問題となる余地はあるということだ。


「はい。現時点では、除染工事でない作業について除染工事を装った補助金の不正請求が、清水建設を介して国になされたといったことは確認されていないようです。そのような行為があれば、除染工事を装って請求した業者は詐欺、補助金適正化法違反等で、問題の執行役員もこれらの共犯や背任等で、刑事責任を追及される可能性もあるかと思います。


また、多くの企業では、取引先の企業から仕事上の関係を背景にして私的に利益提供を受けることを禁止している例が増えていると思います。そのような過剰な接待を企業の役職員が受けることによって、本来は会社の利益を考えて、取引先を選んだり取引条件を決定したりすべきであるのに、便宜を図ってくれる取引先を優遇するなどの不適切な行為が誘発されるので、禁止されています。


民間企業ですので、贈収賄として法律違反にはならないかもしれませんが、こうした社内ルールにも抵触している可能性はあるのではないかとも思われます」


(弁護士ドットコムニュース)


【取材協力弁護士】
籔内 俊輔(やぶうち・しゅんすけ)弁護士
2001年神戸大学法学部卒業。02年神戸大学大学院法学政治学研究科前期課程修了。03年弁護士登録。06〜09年公正取引委員会事務総局審査局勤務(独禁法違反事件等の審査・審判対応業務を担当)。12年弁護士法人北浜法律事務所東京事務所パートナー就任。16年〜神戸大学大学院法学研究科法曹実務教授。
事務所名:弁護士法人北浜法律事務所東京事務所
事務所URL:http://www.kitahama.or.jp

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