戌井昭人氏 飲み会で嫌な先輩がいる時の自身の対処法

12月18日(月)7時0分 NEWSポストセブン

飲み会で嫌な先輩が横に座ったら?

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 散歩ばかりしているという作家で劇団「鉄割アルバトロスケット」主宰の作家・戌井昭人氏による週刊ポスト連載「なにか落ちてる」より、忘年会で嫌いな先輩と同席しなくてはならなくなった時はどう対処すればよいか──この難題についての戌井氏の考えを紹介する。


 * * *

 忘年会シーズン、そろそろ街には酔っ払いが溢れ出している頃だと思います。しかし忘年会だからといって楽しいだけではありません。行きたくない人もいるかもしれません。なぜなら酒の場で、先輩からの説教など、面倒なことが勃発するかもしれないからです。


 最近のお相撲さんのように、先輩の小言に不貞腐れたら殴られてしまうかもしれません。後輩の方々は気をつけましょう。そして先輩の方々も暴力問題にならないよう、モノで殴らないようにしましょう。


 わたし自身、いままでフザケタ生き方ゆえ、随分と学校の先輩や仕事先の先輩、劇場関係者の方々などに色々と説教されてきました。


 あれは大学の頃、いつもリーゼントを決めた山形訛りの先輩に、何かと文句を言われていたのですが、あるとき「オメエは、俺のこと嫌いだろ」と言われ、「はい、嫌いです」と答え、余計怒られたことがあります。


 そもそも、その先輩は、「カッパを見たことがある」というのが自慢で、後輩にカッパのことを熱心に語っているような人でした。いま考えれば、とてもユニークな先輩だったのですが、当時のわたしは、リーゼントで先輩風を吹かせながらカッパのことを語るというのが、どうにも気に食わなくて、馬鹿にしていたのです。その後は、目が合えば睨み合い、一触即発の状態でした。


 あるとき、飲み会で、カッパの先輩の隣の席になってしまいました。最初は無視をしてたのですが、酔っ払ってきたのもあって、わたしは、「そんでカッパはどうなんですか?」と馬鹿にしたように訊いてみました。すると先輩は、これまでのことは無かったかのように、熱心にカッパのことを語りだしてくれ、しばらくするとわたしは、山形弁で語るカッパの話に聞き入り、彼のことを好ましく思えてきたのです。


 そして、いままで馬鹿にしていた自分が馬鹿だったと思えてきました。先輩は言います「カッパは本当にいるんだからな」、わたしは答えます「はい」。けれども、わたしは相当のひねくれ者だったので、「でも、先輩はカッパは好きでも、俺のこと嫌いでしょ」と言うと、「いや、オメエは、俺のことを嫌いかもしれないけど、俺は嫌いじゃないよ。興味がある」と言われました。


 そうか、この人はカッパに興味があるくらいだから、わたしのようなひねくれたものに寛大な心を持っていたのだと反省しました。


 とにかく嫌な先輩がいても、飲み会の席では、このような和解もあるので、先輩の小言がはじまっても、後輩の皆さんカッとならず、「先輩はカッパはいると思いますか?」と、カッパの話でもしてみると良いかもしれません。もしかしたら殴られるかもしれないけれど、そのときは先輩をもっと嫌いになりましょう。


●いぬい・あきと/1971年東京都生まれ。作家。「鉄割アルバトロスケット」主宰。2008年小説家デビュー。『ひっ』『ぴんぞろ』『まずいスープ』『どろにやいと』が芥川賞候補に。『すっぽん心中』で川端賞受賞。著作『俳優・亀岡拓次』が映画化。現在DVDが発売中。『のろい男 俳優・亀岡拓次』で野間文芸新人賞受賞。新刊に『ゼンマイ』(集英社)。散歩ばかりしている。


※週刊ポスト2017年12月22日号

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