カー・オブ・ザ・イヤーの輸入車部門受賞! 最新「ミニ」(MINI)購入ガイド
2024年12月26日(木)8時0分 マイナビニュース
ドイツのBMWが開発と販売を行う「ミニ」(MINI)」が10年ぶりにフルモデルチェンジした。2024年12月5日に発表となった「2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー」では「ミニクーパー」(MINI COOPER)が輸入車部門を受賞。本稿では勢いに乗るミニのラインアップを解説していきたい。
ミニの現行ラインアップは?
ミニはもともと、英国のブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)が1959年に発売したクルマだ。構想から設計までを担ったギリシャ系イギリス人、サー・アレック・イシゴニスの傑作である。ミニは2000年にBMWに買収されたが、その後も基本的な機構は変わっていない。BMW製の初代ミニが誕生したのは2002年のことだ。
今回のモデルチェンジでBMW製ミニは4代目となった。新型ミニの話題のひとつは、量産市販車としてミニ初の電気自動車(EV)が加わったことだ。
ミニには車種の選択肢がいろいろある。
基本となるのは3ドア(2ドア+リアハッチゲート)だ。BMC時代から続くミニのど真ん中である。ただし、英国ミニはハッチゲートではなくトランクリッド式だった。
3ドア車の全長は4mを切る3,875mm。車幅こそ1,745mmと3ナンバー車サイズだが、都会でも取り回しやすい車格だ。パワートレインは排気量1.5Lと2.0Lのガソリンエンジンのほか、EVの選択肢がある。駆動方式は英国ミニの時代と同じ前輪駆動。幌の屋根の「コンバーチブル」(オープンカー)も設定されている。
3ドア車の全長を伸ばして4,035mmとし、後席にもドアを取り付けたのが「5ドア」(4ドア+リアハッチゲート)だ。後ろにもドアがあるので後席への乗降性がよくなる。それだけでなく、あえて荷室に入れるほどではない手荷物を先に後席へ置き、手ぶらで運転席に座れる快適さもある。3ドアは後席への乗り降りも考慮してドアが長くなっているが、5ドアは前後それぞれにあるので1枚のドアが短く、狭い場所で乗り降りしやすいという利点もある。車幅は3ドアと変わらない。
5ドアの魅力をベースとしてSUVの装いにしたのが「カントリーマン」だ。従来は「クロスオーバー」という呼び方だった。
カントリーマンの見栄えは5ドアに似ているが、実は車体寸法が異なる。カントリーマンは5ドアより大柄で、全長は4,445mm(+410mm)、全幅は1,845mm(+100mm)とずいぶん違う。
ガソリンエンジンの選択肢は5ドア同様2種類で、加えて2.0Lのディーゼルエンジンも選べる。なお、2.0Lのガソリンエンジン車は4輪駆動車だ。カントリーマンにはEVの選択肢があり、4輪駆動の設定になる。
ここまでがミニの基本構成だ。
そこに新しくEV専用として誕生したのが「エースマン」である。見かけは5ドアとカントリーマンに近いが、ホイールハウスにプロテクターの加飾がつき、別物であることが一目でわかる。カントリーマンはSUV、エースマンはクロスオーバー車という位置づけだという。
車体寸法もほかのミニと若干違い、全長は4,080mm、全幅は1,775mmだ。モーター出力と車載バッテリー容量それぞれに2種類の設定があり、一充電走行距離は欧州の測定値で310〜406kmと発表された。
最後に、ミニの高性能モデル「ジョン・クーパー・ワークス」(JCW)について触れておきたい。
英国時代のミニには、F1でレーシングカー製造者として王座を獲得したジョン・クーパーが手掛ける高性能仕様があった。イシゴニスとクーパーが友人だったことから、ミニの魅力をより高めたクルマを作ろうという話が持ち上がったのだ。以来、ミニの高性能車にはクーパーの名が付くようになった。より高度な技術を織り込んで高性能化した車種には「クーパーS」の名を与えた。
現在も、ミニの高性能車は「クーパーS」と名乗る。さらに走りを追求し、高速走行を目指したのがジョン・クーパー・ワークス(JCW)になる。
現行のラインアップで「JCW」グレードが選べる車種は、ミニクーパー3ドア(コンバーチブルを含む)とカントリーマンだ。
どのミニを選べばいい? 各モデルの特徴は
ミニは多種多彩なラインアップが魅力だが、いろいろありすぎて、どれを選んだらいいか迷ってしまうという人もいるはず。ここからは簡潔に各モデルの特徴を紹介していこう。
最も身近な3ドアの1.5Lガソリンエンジン車は、ミニの原点を味わうのに最適だ。
そもそも、英国時代のミニは「廉価な庶民の足」というのが基本構想だった。原価低減のため、例えばサスペンションにバネはなく、ゴムのブッシュで振動を吸収し、乗り心地をまとめた。それが逆に「ゴーカート」のような俊敏な手応えの走り味を生み、安くて楽しいミニの象徴となった。
BMWの手によって再出発したミニも「ゴーカートフィーリング」を最大の持ち味とする。最新のミニでも、3ドアに乗ればその面白さが味わえるはずだ。
その上で、高速道路での移動が多く、加速にゆとりが欲しいのであれば、2.0Lエンジン車にしてはどうだろうか。
5ドアは前後にドアがある利便性が最大の利点。狭い駐車場などで隣のクルマや壁をあまり気にせず乗り降りできる使い勝手のよさが魅力だ。
カントリーマンは今日のSUV人気を受けた車種。4輪駆動も選べるので、未舗装路や雪道などの走りも重視するなら最適だろう。ディーゼルエンジン車を選べば、繊細なアクセル操作が求められる滑りやすい路面でも素早く的確に十分な力を発揮してくれるので、安心して移動できるのではないだろうか。
3ドアとカントリーマンではEVを選べるが、EV専用という点を意識するならエースマンだろう。ホイールアーチの加飾を含め、独特な存在感がある。
ミニのEVについて、ひとつ付け加えておきたい。
そもそもBMWは、EVの開発に乗り出す際、「メガシティ・ヴィークル」(大都市に最適なクルマ)の概念を打ち出し、ミニで試作車を作って世界各地を走らせ、商品性の検証を行ったという経緯がある。そこから生まれたのがBMW初のEV「i3」だった。そんな背景も踏まえると、ミニ3ドアのEVも相当に魅力的だと思う。
「とにかく壮快に走りたい!」と思うならジョン・クーパー・ワークスがいい。走りの追求に投じる100万円以上の差額に納得できる人向けだ。
どれにするか迷うほど車種が多い理由は、ミニが小型で多くの人の身近にあるクルマだからだ。それは英国ミニ時代からの伝統であり、老若男女を問わず、人々を魅了し続ける理由でもある。
御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら