立ち飲み居酒屋で警察沙汰に巻き込まれた話。痴話げんかでわが子を警察に通報する母親に一同あ然…
2024年12月21日(土)12時30分 婦人公論.jp
イメージ(写真提供◎Photo AC)
世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第45回は「居酒屋で警察沙汰に巻き込まれる」です。
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前回「今の時期に訪れたくなる京都!詳しい地元民に聞いた、京都っぽいことができる場所。のんびりゆったり&パワースポットと渋いお土産は?」はこちら
思わぬアクシデント発生〜……
居酒屋で警察沙汰に巻き込まれてしまった。
その日、私が常連の立ち飲み居酒屋でいつものように飲んでいると、70代くらいの威勢の良さそうな婦人と、40代くらいの男性(息子)の親子が入店してきた。見たことのない客だったので、会話を交わすこともなかった。
しばらくして会計を済ませて、帰ろうとすると親子とタイミングが同じに。なぜか勢い良く歩いてきた息子と私がうっかりぶつかった。
(なんだよ〜……)
ふらついた自分の体勢を立て直す。まあ、酔っ払いなのでよくあることだと、帰ろうとすると、店員と息子が互いにメンチを切っていた。は?ほんのわずかな時間にこのふたり何があった?
どうやら息子、理由は知らないけれど、私に故意にぶつかったらしい(記憶薄)。そのまま謝罪もせず、フラフラしながら退店していく様子を店員は「おかしい」と胸ぐらを掴んだ……というか、常連の私をかばってくれたのだろうか。
とはいえ、ふたりはいつ殴り合いになってもおかしくない緊迫状態。「けんかをやめてby竹内まりや」と歌うには主旨がズレている。どうしよう、困ったな。店内の客も「どうした」とこちらの状況を覗き込んでいる。
なぜ我が子を警察に?
店外にいるのは酔っ払った親子と、完全に酔いが冷めてしまった私と、店員。4人中、3人にアルコールが入っているという収拾のつきにくい状態だ。
そんな状況の中、母親が何かを恨んでいるような怖い形相で、電話をしていると思ったら、なんと警察へ連絡をしている。
「あ、もしもし、110番ですかッ! 今ですね、居酒屋で男ふたりが喧嘩をしてましてねッ! 怪我されちゃ困るもんですからねッ! 止めに来てくださいッ! 住所言いますよッ!!」
ああ、また事態が面倒なものになってしまうじゃないか。そんな大ごとにしなくても、息子の腕を引っ張って帰ってくれ。
「おまえ、ぶつかったんだからちゃんと謝れよ」
「は? なんだと? てめえ。お姉さん(私)がもういいって言ってるじゃねえか。おまえが気に喰わねえんだよ」
もう喧嘩の議題は私を通り越して「ただお互いが気に喰わない」というフェーズに突入していた。その間も母親は「この子を! この子を警察に突き出してくださいッ!」とご乱心。店内の客が制止に入ってくれるワンシーンもあったけれど、収拾がつかない。こりゃ、警察に来てもらったほうがいいのかも…?と考えているところにほどなくして、ふたりの警察官がやってきた。母親は状況説明をしようと、警察官を相手に声を荒げている。
「今日、今日ね、やっと帰ってきたんですよッ! なのにこんなバカ息子でもう……」
息子がどこから帰ってきたのかは聞き取れなかった。私は私でその場から少し離れた場所で、事情聴取を受けた。なぜ離れたのか。警察沙汰になると、名前と連絡先に加えて生年月日も伝えることになる。たとえ酔っていようと公衆の面前で年齢は言いたくないという、かすかな乙女心は忘れない。生年月日だけは小声で、そして早く帰りたいとも伝えた。おばさんは深夜に弱いのだ。
反面教師としたい
結局、事情聴取は1時間に及んだ。私は1番先に帰らせてもらい、その後は警察に任せたので、息子がどうなったのかはわからない。
今回の件、私としては巻き込み事故を喰らったようなもの。酒のある場所でのことだと、気にしてはいない。ただひとつ脳裏から離れないのが、母親の様子である。入店したときから話し声も大きく、大ぶりのアクセサリーをつけていて、やや派手な印象があった。途中、何度も笑い声も聞こえてきたので「元気な人」と思っていたけれど、結果的にそうではなく「迷惑な人」だった。
「この子を、この子を捕まえちゃってくださいッ!」
周囲に許可も得ずに警察へ通報して、事態を大騒ぎにして何がしたかったんだろうと思う。私は親ではないけれど、もし愛する甥っ子が同じように巻き込まれたら、とっとと謝罪をさせて、自分も謝る。その場から早く撤収することを考えるだろう。そんなふうに判断できなかったのは、酔っていたせいだけではないだろう。
あの息子はどこから帰ってきたのか。母親はなぜ通報したのか。想像は膨らむが今となってはなにもわからない。
こういった仕事をしているせいか、それとも飲ん兵衛なだけなのか?たま〜にこんなトラブルに巻き込まれることがある。普段なら傍観者として「いつか原稿のネタにしよう」と観察するだけなのだが、当事者となると話しは別。
今回の件で「巻き込まれそうになったら即! 帰宅!」だ。下手に残ると時間がかかるだけで、酔いは冷めるし、疲れるしで得るものはない。立ち飲み居酒屋でも、息子が私にぶつかったことよりも、店員VS息子のケンカがメインテーマになっていた。よく考えたら自分が事情聴取を受ける必要はなかったと今さらモヤモヤ。とにかく逃げるは恥だが役に立つ、である。
いまだにあの母親がなぜ警察を呼んだのかはわからないけれど、反面教師としておく。
年末年始、宴会シーズン、真っ盛り。どうかみなさま、酒量とマナーにはお気をつけください。自戒をこめて。
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