【子ども・若者の痴漢被害】15歳以下では「乗り物内」よりも別の場所での被害が多く、約4割を占める―その場所とは?
2021年12月27日(月)16時30分 マイナビ子育て
痴漢犯罪は人混みにまぎれて実行されることが多いためか、人が多い場所で発生しやすいという特徴があります。今回はそれを裏付けるようなデータをご紹介します。内閣府が実施した「若年層の痴漢被害等に関するオンライン調査」をもとに、痴漢の発生している場所を見ていきましょう。
スクリーニング調査を経て、2,346人に本調査を実施
内閣府では、若年層の痴漢被害の実態やその傾向及び痴漢被害に対する認識を把握し、痴漢被害撲滅のために効果的な施策のあり方の検討に役立てることを目的に、「若年層の痴漢被害等に関するオンライン調査」を実施。全国の16〜29歳の男女を対象とし、スクリーニング調査で痴漢被害にあった経験のある人を抽出したのち、本調査が行われました。
本調査の有効回答数は2,346人となっており、性別(性自認含む)は女性91.5%、男性7.6%、その他0.9%でした。本記事では本調査をもとに、被害の起きている場所や時間帯に着目し、結果をご紹介します。
※画像はイメージです
痴漢にあったときに住んでいた場所、「東京都」が突出
痴漢被害(※)を都道府県別に見てみると、何か違いは見られるのでしょうか? 痴漢被害にあったときに住んでいた都道府県を聞いたところ、「東京都」が20.3%で突出する結果となりました。次いで「神奈川県」10.6%、「大阪府」10.0%がほぼ同率で続き、以下、「愛知県」7.4%、「千葉県」5.3%、「兵庫県」4.4%となっています。
やはり、大都市圏において被害が多いことがわかります。人口密度が高い、電車などの公共交通機関を利用する人が多いといった、大都市圏の特徴と関係がありそうです。
—————–※痴漢の定義:路上や商業施設などの公共の場所または電車やバスなど公共の乗り物において、衣服の上から触られたり、同意がなくされたわいせつ行為をさす。なお、ぶつかられた、怒鳴られた、じっと見られたなどの迷惑行為は除く
被害にあったときに住んでいた都道府県(n=2,346)—内閣府「若年層の痴漢被害等に関するオンライン調査」より
注)なお、スクリーニング調査時における、回答者の現在住んでいる都道府県の割合は、「東京都」(12.2%)、「大阪府」(7.2%)、「神奈川県」(6.8%)、「愛知県」(6.5%)、「埼玉県」(6.1%)、「千葉県」(5.1%)、「兵庫県」(4.5%)の順であった。
三大都市圏での被害が7割以上
さらに、前問の都道府県別の回答を「三大都市圏」と「地方圏」に分類して集計した結果がこちらです。これを見ても「三大都市圏」が73.4%、「地方圏」が26.6%となっていて、明らかに都市圏での被害が多いということがわかります。
被害にあったときに住んでいた地域区分(n=2,346)—内閣府「若年層の痴漢被害等に関するオンライン調査」より
被害は朝の通勤・通学時間帯に集中
次に、被害に遭ったときの時間帯について見てみましょう。最も多かった時間帯は「6:00〜9:00」で34.5%、次いで「18:00〜21:00」18.2%、「15:00〜18:00」17.3%という結果でした。
朝の通学・通勤の時間帯での被害がとくに多く、次に、夕方から夜にかけての帰宅時間帯に起きやすいことが示されています。この時間帯は電車が混雑しやすい時間帯とも重なります。
被害にあった時間帯(n=2,346)—内閣府「若年層の痴漢被害等に関するオンライン調査」より
三大都市圏では「乗り物内」での被害が7割超
ここで、実際にどのような場所で痴漢被害が起きているのかを確認してみましょう。
被害に遭った場所を「乗り物内」「路上」「店舗・施設内」に分類し、三大都市圏と地方圏で比較した結果がこちらです。
どちらの地域区分でも、やはり最も多いのは「乗り物内」であることがわかりました。しかし、三大都市圏と地方圏でその割合に違いも見られます。三大都市圏では「乗り物内」の割合がより多く、20ポイントもの差に。これは、地方圏では電車やバスではなく、自家用車や自転車、徒歩で通勤・通学している人が、都市圏に比べると多いということも関係しているのかもしれません。
また、地方圏では「店舗・施設内」の割合が三大都市圏より多く、3割を超える結果でした。痴漢は電車内で起こるイメージが強いですが、電車内以外の場所でも被害が生じていることが示されています。
地域区分別、被害にあった場所の分類(n=2,279)—内閣府「若年層の痴漢被害等に関するオンライン調査」より
15歳以下では「店舗・施設内」での被害が最多
さらに、被害にあった場所を「乗り物内」「路上」「店舗・施設内」に分類し、年齢層別に集計した結果を見てみます。
すると、16歳以上では「乗り物内」での被害割合が7割超と多くを占めていますが、15歳以下では「店舗・施設内」での被害割合が38.7%と約4割で、最多となることがわかりました。「乗り物内」は36.8%となっています。また、路上も24.5%と少なくありません。
これには、15歳以下の中には電車通学をしておらず、ラッシュ時の混雑した乗り物を利用する機会が少ない人も、一定数いることが考えられるでしょう。その一方で、満員電車に乗らないから安心とも言えないことがわかります。
年齢層別、被害にあった場所の分類(n=2,279)—内閣府「若年層の痴漢被害等に関するオンライン調査」より
学校や家に向かっていたときに痴漢にあうケースが多い
最後に、被害に遭ったときに向かっていた場所を聞いた設問では、「学校」32.3%、「自宅」31.5%がいずれも3割超で、特に多いことがわかりました。登下校中に被害を受けているケースが想像されます。
次いで「遊び」15.6%、「勤務先」9.7%、「その他」5.8%となっていて、「その他」には具体的に「買い物」や「ライブ会場」などが挙げられています。
被害にあった際、向かっていた場所(n=2,346)—内閣府「若年層の痴漢被害等に関するオンライン調査」より
まとめ
ターゲットにならない工夫も意識したい
今回は若年層の痴漢被害が起きている場所や時間について、お伝えしました。これらの調査結果から、やはり通学や通勤時の電車内での被害が多いことがうかがえます。
警察が発信する痴漢被害対策には「混雑する時間帯・路線を避ける」「友人などと一緒に乗る(犯人が近付きにくい)」などとともに「毎日同じ電車・同じ車両に乗らないようにする」というものがあります。朝の通学・通勤時間というのはたいていの人がある程度行動が決まっているものですが、中には同じ人を付け狙う痴漢も。卑劣な犯行から身を守るためにも、これらの対策を参考にしたいですね。
また、15歳以下の場合は、路上や店舗内での被害の割合も少なくありませんから、電車内以外で被害を受ける可能性も頭に置いておくことが必要です。
警視庁のサイトには被害を防ぐ対策として、警視庁のサイトなども参考にしてください。警視庁防犯アプリ「デジポリス」には痴漢撃退機能が搭載されています。
▶警視庁:痴漢等の性犯罪被害防止対策▶防犯アプリ デジポリス
(マイナビ子育て編集部)
調査概要
■若年層の痴漢被害等に関するオンライン調査/内閣府調査対象:オンライン調査の登録モニターの全国の16〜29歳の男女調査時期:2024年2⽉6⽇〜29⽇有効回答数:スクリーニング調査=36,231、本調査=2,346
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