この一言で「部下との1on1」に絶大な効果…「よろしくお願いします」ではない、頭のいい人が用いる"最初の言葉"
2025年3月5日(水)16時15分 プレジデント社
※本稿は、心理コーチとよかわ『マウント取る人 消す魔法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo
■誰もが“マウント加害者”になることは避けられない
「自分も無意識のうちにいっぱいマウントを取っているかも」と不安になった優しい人もきっといますよね? その自覚があれば、相手にクリティカルヒットするマウント攻撃はしていないはず……といいたいところではありますが、実際のところはわかりません。
なぜなら、相手の状況や受け取り方によっては、なんてことのない世間話もマウントだと受け取られてしまうことがあるからです。
寝不足で疲れているときや、仕事が立て込んで脳がパンクしそうなときなど、脳が「生命維持を脅かされている」と感じていると、まわりの人を嫌いになりやすいとお伝えしましたよね。(第1回参照)
普段なら気にならない相手の言葉に悪意を読み取ってしまったり、敵意を感じたりして、相手の意図にかかわらず、勝手に「マウントを取られた」と感じてしまう可能性があるのです。つまり、誰もが、マウント加害者になることを避けられないのです。
そうであるなら、「マウントを取ってしまったらどうしよう」と悩んでもあまり意味はありません。どんなに気をつけても相手のコンディション次第でマウントと判断されることがある前提で、コミュニケーションを取るほかないのです。
もし、相手が傷ついた顔をしたり、悲しそうにしていたりしたら、そこはもう2秒で謝りましょう。秒速、いや、光の速さで謝りましょう。「そんなつもりやなかったけど、傷つけてしまったなら本当にごめんなさい」って謝ればいいのです。そして、「次からは○○します」と改善案を伝えられればなおいいですね。要は、誠実であることです。
■リスクを避けるとコミュニケーションは取れない
人の数だけスポットライトと優先順位があれば、人と人のコミュニケーションには必ずリスクがあります。思っていることが正しく伝わらないかもしれないし、誤解されてしまうかもしれません。傷つけてしまうかもしれないし、傷つけられるかもしれません。
でも、それを気にし過ぎていたらまともなコミュニケーションを取ることができません。リスクを恐れて積極的なコミュニケーションを避けていたら情報交換もできませんし、おしゃべりも楽しめませんし、視野や価値観を広げることもできません。
コミュニケーションには、リスクがあるのは確かです。だったら、そのリスクを負って正々堂々とコミュニケーションを取ればいいんです。人とかかわる醍醐味(だいごみ)は、リスクなしには手に入りません。
「それはわかったけどさ、マウントになりにくいテクニックとか、なんかあるんやないの?とよかわさん、頼みますよ」と声が聞こえてきました。わかりました! そんなわがままな人のために、ちょっとだけコツを伝授しましょう。
■「マウントを取られた!」と思われない魔法フレーズ
一対一で話しているときに効果的なのは、会話の折々で「自分は現時点ではこう思っているけど、あなたはどうですか」と差しはさむことです。
あなたの意見は固定的なものではなく、相手の意見を聞く準備があることを示すのです。敵ではない姿勢を示すことができれば、「マウントを取られた」と思われる可能性を少なくできます。
また、会議や講義など、複数人に向けて話すときは、「ここまでの内容は大丈夫そうですか?」などと問いかけると、全員を気遣っている姿勢を見せることができます。要は、相手を置いてけぼりにしないことが大事なのです。
よくわからないまま一方的にまくしたてられると、「マウントを取られた」と感じやすいのは、みなさんも経験上なんとなく理解できますよね。「相手の気持ちに寄り添う」というと、あまりにありきたりのことに聞こえますが、要は、そういうことです。
目の前の人をしっかり観察し、相手の幸せや優先順位を想像したうえで発言することは、人とうまくコミュニケーションを取るうえで欠かせません。
■「マウントの活用」でやり取りをスムーズにできる
ここまで、マウント行為を「嫌なもの」「できれば避けたいもの」という文脈で話してきましたが、実は、マウントをうまく活用し、コミュニケーションをスムーズにする術があります。いうなれば、マウントの平和利用です。
マウント行為とは、相手より自分を優位に置く言動のことでした。別の言葉でいうと、相手を自分の支配下に置く行為です。この技術をうまく活用すると、場を上手にコントロールできるようになります。
例えば、次のような状況に陥って困ったことはありませんか?
・後輩や部下にビシッといいたいけど、パワハラだと思われるのが怖い
・会議で参加者がバラバラに発言して収拾がつかず、時間通りに進まない
・話し合いで誰も発言してくれなくて場が盛り上がらない
「こういうとき、ある、ある。でも、マウントしたら余計に悪化しそうやん?」と思ったかもしれません。そうですよね。「マウントは悪いもの」と思っていたら、そう感じるのも無理はありません。
でも実は、マウント技術は使いようなんです。相手を傷つけることなく自分の支配下に置くことによって、このような状況でも場がうまく回るようになります。
■これを付け加えるだけ! マウント活用テクニック
まず、一対一のシチュエーションでやってほしいのは、話の最初に「あなたは大切な人なので、少し厳しい話もします」と添えることです。
「えっ、それだけ?」と思われたかもしれませんが、本当にそれだけです。それだけで、配慮することに気を取られ過ぎず、いうべきことをきちんと伝えられるようになります。
なぜかといえば、本来であれば傷つくような言葉も「自分のためにいってくれている」というマインドセットで相手が受け取ってくれるようになるからです。マウントを取られたくないと思っている相手にマウントを取るから、嫌がられるのです。
上から目線の発言をすることを事前に伝え、許可を取っていれば、多少強い言い方をしたとしても「マウント行為」とは受け取られません。むしろ、「こんなことをいってくれて、ありがたい」と思われる可能性だってあります。
■会議では「ルール」を設ける
次に、会議や話し合いの場など、不特定多数に向けてのシチュエーションについてです。この場合のコツは、話の最初に「ルール」を伝えることです。
写真=iStock.com/Jay Yuno
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jay Yuno
ただし、ひとつだけでなく、複数のルールを設定してください。いくつ用意しても構いませんが、重要なのは、はじめのほうは誰でも簡単に守れるものにして、重要なものを後ろに持ってくることです。次のように伝えられるといいですね。
「今回の場をいい時間にしたいと思うので、最初にルールを5つお伝えしますね。まずひとつ目は、『居眠りをしない』です。ふたつ目は、『おなかがすいてもここでハンバーガーを食べたりしない』です。3つ目は、『聞きたいことは質問タイムに発言する』です。4つ目は、『発言の際は手を挙げる』です。最後の5つ目は、『ワークにきちんと取り組む』です。よろしくお願いしますね!」
こんな感じです。ふたつ目は冗談としても、前半のルールは常識的な内容であり、守るのが簡単であるのに対し、後半になるにつれて少し難易度が上がっているのがわかりましたか?
■マウントで場をコントロール=全員にメリットがある
これは、最初に簡単な要求を承諾させ、だんだんと要求のレベルを上げていき、最終的に本命の要求を承諾させる手法で、心理学で「フット・イン・ザ・ドア」と呼ばれるテクニックです。
営業やセールスでよく利用されており、訪問販売の際に、「ほんのちょっと、お話だけでも!」と玄関ドアに足先を挟み込むことに由来してネーミングされています。
実は、人には一貫していたい心理があり、何度か「イエス」を繰り返した後に、急に「ノー」を示すのは心理的ハードルが高くなるのです。その心理を利用して、最初は簡単な要求からスタートして「イエス」をいわせ、後半で本命の要求を突きつけるわけです。
話を元に戻しますね。不特定多数に向けてのシチュエーションで、最初に場のルールを伝えるか否かで、場の進み方は明らかに変わります。
ノールールの無法地帯だとなかなかうまくいきにくいのは、場の支配者が誰であるかが明確になりづらいからです。あなたが決めたルールを最初に示すことで、場のコントローラー(支配者)があなたであることを、明確にする作戦です。
これは相手の優位に立って見せる意味で、マウンティング以外のなにものでもありません。でも、不快な思いをする人はいませんよね?
あなたがマウントを取って場をコントロールすることで会議や話し合いがスムーズに進むのですから、全員にメリットのある素晴らしい方法なのです。
■物を使って心理的なマウントを取る方法
また、物を使って物理的にマウントを取るテクニックもあります。人と向かい合って話をしているとき、テーブルの上にあるコップや書類、筆記用具などを相手の側へ少しずつ寄せていくことで、あなたの“陣地”を広げていくのです。
あからさまにやってはいけませんよ。だって、不自然ですからね。コツは、例えばコップを手に取って水をひと口飲んだ後にテーブルの上に戻すタイミングで、元々置いてあった場所よりもほんの数センチメートルだけ、相手側に寄せて置くのです。これなら相手に気づかれずに済みます。
自分側のスペースを広くするのは、いってみれば縄張りを広げるようなもので、広いほうが狭いほうに対して心理的なマウントを取ることができます。
心理コーチとよかわ『マウント取る人 消す魔法』(KADOKAWA)
ちなみに、物を使った心理作戦は、マウント防止やダメージ低減に活用することもできます。あなたにマウントを取ってきて鬱陶しい人がいたら、その人との間になるべく「物」を挟むようにしてみてください。
例えば隣の席の人だったら、その人とのあいだにデスクの備品を置きます。向かい合って話しているときにマウントを取ってきたのなら、その人とあなたの真ん中にコップや食器、荷物などを置くのです。
すると、「物」が心理的にも物理的にも「壁」の役割を果たしてくれるので、気持ちが楽になります。ただし、大切なのは、相手に気づかれないことです。できる限り、さりげなく物を動かすようにしてください。
いずれも、とても簡単で効果抜群の方法です。マウントを取ったり取られたりすることを、過剰に恐れる必要はありません。これからは、(平和利用を目的に)マウントを自在に使いこなしちゃってください!
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心理コーチとよかわ(しんりこーち・とよかわ)
心理コーチ
手取り5万円の高卒フリーターから未経験でIT業界に入り、デジタルマーケティング業界、海外での新規事業開発などを経験する。シリコンバレーで認知科学と出会い、帰国後に起業。上場企業のDX人材育成に従事したことをきっかけにコーチング業界の道へと進む。コーチングの世界的権威に認められその伝統を受け継ぎ、コーチングにおける各種世界ライセンスを保持する。2022年に開設したYouTubeチャンネル「心理コーチとよかわ」では、主に人間関係の悩みを解決するコンテンツを配信し人気を集めている。
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(心理コーチ 心理コーチとよかわ)
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