『GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代』 アダム・グラント 利他的に行動し、ウィンウィンを目指そう

2023年7月27日(木)14時0分 KADOKAWA


著者のグラントは「人には3種類いる」と言う。これはアップルパイを2人で切り分ける時の行動で分かる。
①テイカー:自分が多めに取る。「全部オレのモノ」というジャイアンタイプ
②マッチャー:平等に二等分する。冷静に損得を公平に考えるタイプ
③ギバー:相手に多めに与える。常に他人に与え続けるお人好しなタイプ
テイカーが一番得をし、ギバーは常に損するように見えるが、グラントは逆に、常に相手の立場で考えるギバーが成功するという。本書はその仕組みを解き明かした一冊だ。
グラントはビジネススクールとして世界で最も高い評価を受けるウォートン校で最年少の28歳で終身教授になった組織心理学者である。
現実には人は状況により3つの顔を使い分けている。子供には親としてギバーになり、価格を値切る場合はテイカーになる。しかし仕事では、どれか1つのスタイルになる。
仕事で他人とどのように接するかで、その人がどのタイプかが分かる。
テイカーは上司には従順だが部下を支配する。ギバーは誰に対しても与えようとする。
ただギバーが常に成功するとは限らない。グラントがエンジニアを調査した結果、最も生産性が低いエンジニアはギバーだった。常に他人を手伝い、自分の仕事は後回し。
しかし最も生産性が高いエンジニアもギバーだった。テイカーとマッチャーはほどほどの成功に留まった。医学生、販売業など様々な分野でもこのパターンは変わらなかった。
リンカーンも希代のギバーだった。選挙ではあろうことか他陣営を応援し、落選することもしばしば。しかし歴史に残る米国大統領になった。


なぜ成功するギバーと成功しないギバーに分かれるのか?
世の中には、余裕がないのにボランティア活動に身を捧げる人がいる。「他人の幸せの前に、自分の幸せを考えようよ」と言いたくなる人もいる。自己犠牲で与え続けるギバーは燃え尽き、なかなか幸せになれないのだ。
成功するギバーは他者に与えるだけではない。他人の視点でモノゴトを見て、全体のパイを大きくすることを考える。自分の利益も同時に考え、ともに勝つウィンウィンを目指す。だから最後には大きく成功する。
リンカーンが他陣営を応援したのも、自分の政策を実現し米国をよくするためだった。
テイカーは「パイの大きさは変わらない」と考え、勝ち負けにこだわる。「パイを大きくする」という発想に辿り着けないので、独り占めを目指す。中には相手の利益を考えずに自分中心に考え、こう言う人もいる。「これをやると、お互いにウィンウィンですよ」。これはまさにテイカーやマッチャーの発想そのものだ。



配偶者や交際相手がいる人に、相手との関係を維持する全努力のうち、自分の努力が何%か尋ねた調査がある。互いの貢献を正しく評価できれば自分の答えと相手の答えは合計100%になるはずだ。
しかし4組に3組のカップルは合計100%を大幅に超えるという。人は悪気がなくても自分の貢献は過大評価し、他人の貢献は過小評価する。これを行動経済学で「責任のバイアス」という。成功するギバーはこのことを知っている。だからうまくいかない時は自分が責任を負い、うまくいっている時は他の人を褒める。


ギバーであることは幸福感にもつながる。24歳以上の米国人2800人の調査では、ボランティア活動の1年後には幸福度や人生の満足度が上がり、うつ病が軽減したという。またボランティア活動をする高齢者は長生きすることも確認されている。
「なるほど、ギバーは得なのか! これからはギバーになろう」と思うかもしれない。
しかしギバーが見返りを得るまでの時間は長い。「ギバーとして行動しているのに、見返りがないじゃないか!」と思ったとしたら、それはテイカーやマッチャーの考え方だ。


すぐれたリーダーはギバーが多い。世の中はますます透明になっている。SNS普及のおかげで、あなたがギバー・テイカー・マッチャーのどのタイプなのか、他人には丸見えである。こんな時代だからこそ、本書の考え方は理解したい。


【POINT】
成功するギバーは与え続けて全体のパイを拡大し、皆を幸せにする


【出版情報】
『GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代』三笠書房刊行 著:アダム・グラント 刊行日:2014/1/10


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