指の骨は「鳴らす」のではなく「引っ張る」…ガチガチの「パソコン巻き肩」がやわらかくなる10秒ストレッチ

2024年12月7日(土)9時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

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頑固な肩こりをほぐす方法はあるのか。パーソナルトレーナーの庄島義博さんは「体をほぐしたいなら、硬くなった部位を直接もむよりも、患部の先にある末端をほぐすほうが効果的だ」という――。

※本稿は、庄島義博『朝起きてすぐに動きたくなる体』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/mapo
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■身体をゆるめたいなら、まずは末端から


「肩こりがひどい」
「パソコン作業に集中しすぎて腕が痛い」


そんな痛みや変化を感じたとき。不快な部位(患部、発痛点)をもむなど、そこにピンポイントで働きかけたくなるお気持ちはよくわかります。それでも、ある程度の回復は見込めます。


でも、より根本的に、より早く回復させたいとき。自分の手持ちの点数を、効率よく一挙に増やしたいとき。余裕があるなら「患部の先にある末端」へのアプローチも、おすすめします。


なぜなら、体の末端の力を抜くことなしに、体の体幹がゆるむわけがないからです。


たとえば、こぶしを思いっきり握って、肩の力が抜けることはないでしょう?


肩をゆるめたかったら、先に腕の緊張を取る。腕の緊張を取りたかったら、先に指の緊張を取る。


体にはこんな原則もあります。ですからこの章では、①指、②腕、③肩という順序でメソッドをご紹介してきます。


■オリンピック代表も実践している「指ひっぱり」


小学生からオリンピック出場に照準を合わせて見事出場を果たした、ある選手がいます。自分の体の個性に向き合い、常態を整え、記録を出すというサイクルで、キャリアを着実に積み重ねてこられました。


その選手がレース直前にやっていた事のひとつが、「指ひっぱり」です。


出所=『朝起きてすぐに動きたくなる体』(サンマーク出版)

特に肩関節を大きく動かす競技のため、腕や肩への負担を極限まで軽減し、パフォーマンスを高めていくことが求められます。


肩の疲労を除去したければ、手の力を抜けばいい。手の力を抜きたければ、指の力を抜けばいい。


「指ひっぱり」には、そんな確固たるロジックがあるのです。


■職場のデスクで簡単にできるセルフケア


もちろん、この「指ひっぱり」は机に向き合う前傾姿勢が多い学生さん、パソコン作業が必須のビジネスパーソンにも最適です。今すぐ、一緒にやってみましょう。


あなたが今、電車の座席に座っていても、職場のデスクにいても、即実践できるメソッドです。


指の関節は、最も先端にあるほうから「第一関節」、「第二関節」といいます。手全体の力を抜いて、指もだらんとゆるめて曲がった状態で、指の第一関節を気持ちよく引っ張ってください。もちろん、両手のすべての指に対して行います。


場合によってはポキっと音が出ることもありますが、心配ありません。


整体院などでは、よく仕上げに行われる施術ですから、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。人にやってもらうと、たしかに気持ちがいいでしょう。でもいつでもセルフケアできる「打ち手」としてマスターしておくと最強です。


私たちは、手の指を使い、さまざまな作業をしています。「支える」「握る」「つかむ」「つまむ」「ひっかける」「こする」「めくる」「はじく」……。起きている間は、常になんらかの動きをしているといってもよいでしょう。指は大変な働き者です。


■そもそも指は「突く」動きを想定していない


そこに加えて、近年急増したのがデジタル機器の操作です。


パソコンのキーボードに入力をする動き。スマホの画面にタッチ入力をする動き。これらは明らかに、上から「突く」(叩く)という動作です。


写真=iStock.com/webphotographeer
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ただ残念なことに、解剖学的にみると「突く」というタテの動きに、人体は対応しにくい構造になっています。


ほかには「ピアノ演奏」も、「突く」の範疇に入ります。指で鍵盤を突く行為だからです。実際、腱鞘炎に常に悩まされ続けているピアノの先生は珍しくありません。


デジタル機器など、人が本来不得手である「突く」動きを、長く続けていくために。「指ひっぱり」をはじめ、これからご紹介していくメソッドを習慣化し、ダメージの蓄積を防いでください。


「鏡で見た自分、パソコン巻き肩になってませんか?」


ここで、あなたの「パソコン疲れ」の具合を自己診断してみましょう。


鏡の前で立ち、全身をくまなく見てください。腕はだらんと脱力してください。


「片方の肩が、下がっている気がします!」


このチェックをすると、多くの方が開口一番、肩の高さの左右差を挙げるのですが……。


より大事なのは、じつは手首のねじれ具合。あなたの手の甲は、鏡越しに見て、どう写っていますか。


■親指~中指あたりまで見えたら「パソコン巻き肩」


①手の甲が全面的に見えている人
赤信号です。肩が内側に巻き込まれています。「内側に回っている」ことから「回内(かいない)」と呼ばれます。いわゆる「巻き肩」であり、早いうちに改善が必要です。


②手の甲が半分以上見えている人
黄色信号です。親指から「中指あたり」まで見えているならば、肩が前方に突き出し気味です。私はこれをパソコン巻き肩と呼んでいます。


③親指・人さし指までしか見えていない人
青信号、セーフです! 肩が内側にも前方にもいかず、理想的な位置にあります。


このような前腕の位置を、解剖学の言葉で「中間位」といいます。「極端に偏らず、過不足なく調和がとれている」という意味の言葉「中庸(ちゅうよう)」と、通じるものがありますね。


過度のパソコン作業やスマホ操作は、①の「回内」と呼ばれる状態を招きます。「回内」はテニスヒジ、ゴルフヒジ、野球ヒジなど、スポーツ時の怪我や故障とも関連があります。早めに解消しておくことが重要です。


■巻き肩が改善される体操「ダンベルふるふる」


そのためにご用意したのが「ダンベルふるふる」。ダンベルの実物を持つわけではありませんので、しんどさはありません。


出所=『朝起きてすぐに動きたくなる体』(サンマーク出版)

肩が内側に内旋する「巻き肩」の影響で、腕も、親指も内旋してしまっている……。


それなら親指を外側に向けてやり、腕も肩も一時的に外旋させることで「中間位」に戻せばいい、という考え方です。


では右腕からやってみましょう。右腕だけでダンベルを上げ下ろしするイメージから、この名前をつけました。


まず、左手で右手首を軽くつかみます。右腕が外旋するよう「外向きにねじるような圧」をかけます。左の親指に少し力を入れるといいでしょう。そのまま、右腕をダンベルを上げ下ろしする要領で動かしてください。


コツは右脇をぴっちり閉じること。右腕を体側に付けたまま、手首を上げ下げしましょう。10往復ほど繰り返します。左右逆側も同じように行ってください。


なぜ「外向きにねじるような圧」をかけるのかというと、手首を効率よく外旋させるため。いわばストッパー的な役割です。


「外向きにねじるような圧」をかけずに行うと、腕が「ゆるく内旋」してしまい、効果が薄れます。


■ストレッチの前に筋肉の「錆」を取る


「ダンベルふるふる」で腕の内旋を元に戻したら、次は気持ちよく脱力しながら筋肉の錆を取りましょう。ここでご紹介するのは「腕ふるふる」です。


出所=『朝起きてすぐに動きたくなる体』(サンマーク出版)

疲れたとき。あるいは体を動かしたくなったとき。長年の習慣や思い込みで「ストレッチをしたくなる」、そんな人は多いはず。


でも先述したとおり、カチカチになった筋肉を急に伸ばすと、確実に筋線維を傷めてしまい、逆に硬くなってしまいます。その前にまず筋肉の錆を取りましょう。


ですから、ストレッチの前にまずは「腕ふるふる」です。


実際、どこでもいつでも準備なしで突然行えます。椅子に座ってもよし、立ったままでもよし。とにかく、気づいたときに即やっておくことが大事です。特にデスクワークをしている人にはおすすめ。


■「肩がこったな」と思ったら10秒間やってみよう


「肩がこったな」「指が疲れたな」と感じた瞬間、10秒だけサッとふるふるボディシェイク。ほとんど仕事中の格好と変わらないですし、音も立たないので、オフィスなどで周囲の目を気にすることなく体を回復させられます。



庄島義博『朝起きてすぐに動きたくなる体』(サンマーク出版)

①体を少し後ろに倒す
まず右側からふるふるします。
右腕をだらんとぶら下げ、体を少し右側に、そして少し後ろ重心に傾けます。この「傾き」によって、肩甲骨まわりの錆にもアプローチできます。


②手のひらだけふるふる回す
次に、腕全体の力を抜き、手のひらだけを裏表が交互になるよう、ぶるぶると振ってください。でんでん太鼓のイメージです。回転させるのは、あくまで手のひらだけ。


10往復くらい、繰り返します。左右逆側も同じように行ってください。これだけでも、肩まわりがスッキリします。


錆はきちんと取れたので、このあとに静的ストレッチをすれば効果倍増です。


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庄島 義博(しょうじま・よしひろ)
パーソナルトレーナー
1978年、福岡県生まれ。五感を使った身体調整メソッド『BODY PREPARATION(ボディプリパレーション)』を開発・提唱し、アスリートのパフォーマンスをアップ、不調のある方々を改善へと導く。著名な歌手やトップアスリートからの信頼も厚く、サポートした人数はのべ3万人を超える。同メソッドは小学校、高等学校でカリキュラム化され、児童・学生の心身教育にも力を注ぐ。全国各地で後進育成のためのスクールや講演会も開催。海外からの指導要請も多い。
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(パーソナルトレーナー 庄島 義博)

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