バキバキ肩コリは肩を揉んでも治らない…〈整体師直伝〉歪んだ体を自宅で整える「人気時代劇のポーズ」とは

2024年12月8日(日)9時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/koumaru

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疲れにくい体を作るためにはどうしたらいいのか。整体師の奥中伸さんは「首や肩がコリやすい人は、骨盤を上手く使えていない。特に視線を動かすときに、不必要に首を動かしてしまっていることが多い。視線と胸の向きが一緒になるように体を動かせば、自然と疲れにくい体は作れる」という――。(第4回)

※本稿は、奥中伸『読むと「全自動」で健康になるすごい本』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/koumaru
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■筋肉を使うのではなく、骨格を使う


本稿では、実際にご家庭でできる日常動作を用いて、整体の身体操法を行っていきます。その前に、改めて筋肉と骨について整理をしておきます。


まず単純に、筋肉は「力を入れる」ことができますよね。しかも気持ちとか思いを乗せて「オリャー!」って力を入れることができますよね。一方で骨は「力を入れる」という感覚がありませんよね。ここが整体の体操や身体操法でポイントになってきます。


私の言う体操や動作は、基本的に「骨格」の「形状」で行うイメージでやってください。体の部位を動かすのに最低限の力は必要ですが、力を入れて何かをトレーニングするものではありません。とにかく力を入れてはダメということでもありません。ソフトにやれというものでもありません。これはやっていくうちに分かってきますので、とにかく覚えておいてください。


「せっかく整体の体操をやるんだから、健康を目指して頑張るぞ!」という気持ちが先行する人が多いです。その結果、必要以上に力を入れて、必要以上に圧力をかけて、どこが骨的によいポイントかが分からなくなる人が多いのです。


その気持ちが体によけいな力を加え、かえって健康から遠ざかるのです。シンプルに骨格を動かす。それだけで十分ですので、ついつい力に頼っていると実感したときは、ここを思い出してください。


■「反り腰はダメ」の本当の意味


まず正座になります。ひざなどの問題で正座ができない人はイスに腰かけても結構です。やることは同じです。


正しい正座の作り方。猫背の姿勢から、骨盤の動きを使って姿勢を整える(出所=『読むと「全自動」で健康になるすごい本』)

次に、猫背になります。良い姿勢のすべての起点は骨盤です。正座の状態で骨盤を回し落としていくと、猫背になります。まず1回猫背になって、ダメな人間になります。次に、両手を腰に当てて、骨盤の動きを確認しながら猫背を解除します。


小指が後ろ方向に行き、親指が前方向に動きます。骨盤の回転です。回転によって背骨が押し上げられ、その結果、胸(胸骨)がナナメ上に上げられ、顔が前を向きます。正座で行うと分かりやすいでしょう。


骨盤を動かしてみて、「反り腰」になったように感じたかもしれません。よく「反り腰はダメだ」と聞いたりしますが、本当にそうでしょうか? 反り腰がよくないのは、骨盤の力が背骨に連動して伝わっていないからです。骨盤の回転が、背骨をつぶして胸椎を押し上げる力につながっていれば、それはとてもよいことなのです。ぜひこれを意識してやってみてください。


さらに、正座の状態で両足を立てた「跪坐(きざ)」だと、より分かりやすくなります。ポイントは、しっかり両足に自分のお尻の重みを乗せきることです。自分の重みで足が痛くなることを嫌って、上半身を前に傾ける人が大変多いのですが、ここが辛抱のしどころです。


■体の実力がわかる「助さん格さん座り」


本当にキツくなってきたら、体勢そのものを解除して休憩し、またトライしてください。足が痛くても、自分を預けられるものは自分以外にないのです。このポイントを必ず忘れないようにしてください。これが、自分の体だけで姿勢を完結させる練習になります。


自分以外を頼ると、どんどん弱っていきます。体が壊れていく第一歩です。自分の体は、自分の体の中で収めきりましょう。


せっかく「跪坐」の状態になったので、さらに発展させましょう。どちらの足でも結構ですので、跪坐の状態から少し足を上げます。この体勢を、私は「助さん格さん座り」と言っています。この後で立ち座りの途中姿勢にもなりますし、整体的にはその人の実力を示す姿勢でもあります。


体の状態が一発でわかる「助さん格さん座り」(出所=『読むと「全自動」で健康になるすごい本』)

まず、この状態で長時間静止していられるか、どうか。長ければ長いほどよく、その人に実力があることを示しています。この体勢は、御用を聞いている昔の番頭さんのポーズです。小僧さんが親方に叱られているポーズでもあります(笑)。この状態でいつまでも人の話が聞けて、用事が終わったらサッと立ち上がってその場を去らないといけない。それが本来の日本人でした。


これはもう慣れるしかありません。修行です(笑)。


■スマホをいじりながら姿勢を作ってもOK


体を整えるために、できれば和式トイレ座りを1日に1回以上行ってほしいのですが、この「助さん格さん座り」も1日に1回、できるだけ長く行ってほしいです。和式トイレ座りとセットで行うのがおすすめです。


今だったらスマホをチェックすることが多いと思いますので、この姿勢でメールやSNSをチェックするのもいいですよ。ポイントは、跪坐と同じで両足にしっかりお尻を乗せきることです。跪坐と違って足がズレていますので、下になった足に6割、ひざを浮かせたほうの足に4割ぐらいの重量配分で結構です。その状態でいつまでも居てください。


それができる時点で、自分のことは自分の中に収める実力があります。この助さん格さん座りでも、基本的には骨盤が回転して入った状態で静止してください。


和式トイレ座り、正座、跪坐、助さん格さん座り。いずれの状態でも、骨盤を起点に、猫背からシャキッとした状態にまでなっていただきました。まずは猫背になって、骨盤の回転力を知りましょう。自分の体の「変化の振り幅」をつかむためとも言えます。まずはダメな体勢になって、それから骨盤を回して背骨の押し上げを実感して、その両方を知ってほしいのです。


■骨盤が使えていないから首コリがひどくなる


ではなぜ、猫背を解除して骨盤を回し入れるのか? 前方を見るためです。


骨盤を回し入れることで、正しく前を向くことができる(出所=『読むと「全自動」で健康になるすごい本』)

正座、跪坐、助さん格さん座りで、前を見るために骨盤を入れたのです。立っている状態でも同じです。今自分がどこを向いて、何を見るかで、その後の動作や結果が決まります。それを決めているのは骨盤なのです。


これを多くの人は首でやってしまっています。キョロキョロと首を使って顔を動かし、視線をコントロールしています。首だけを使うとラクなので、知らず知らずに横着が始まり、どんどん骨盤を使わなくなってしまいます。これでさらに骨盤が動かなくなり、首を置く場所もなくなり、首がおかしなこり方をします。


また、首をよく使うので首の付け根がかたいほうが都合がよくなり、肩こりの原因にもなります。すべては骨盤から始まります。視線のコントロール、視線の向き、何を見るのか、どこを見るのか……、すべて骨盤が起点です。首でコントロールするのではありません。


和式トイレ座りで顔を動かすのではないと言いましたが、首を動かして顔の向きを変えることに慣れると「見たつもり」で終わります。また、「人をあごで使う」という日本語があるように、首だけを使う動作はいかにも誠意のない軽い動作になります。そういった所作は、信頼される人、安心感のある人が持つ印象からはほど遠いものです。首を使わずに骨盤から、前を見にいってください。


■「首を使わない視線の動かし方」が重要


前のページで、視線と骨盤の関係を説明しました。では実際に、それを体得する動きをやってみましょう。とても簡単です。


顔の前にどちらかの手を持ってきて、視線の方向に人差し指を向けてください。さらに、もう片方の手を自分の胸(胸骨)の前に持ってきて、同じように胸の前方向に人差し指を出してください。この顔の前の人差し指と、胸の前の人差し指が同じ方向を向くように、上を向いたり、下を向いたりしてみてください。これが、整った人の体の動きです。


視線と胸骨の向きを合わせることで、上手く骨盤を使うことができる(出所=『読むと「全自動」で健康になるすごい本』)

上を見るときは胸も上を向く、下を見るときは胸も下を向く。左のときも、右のときも同様に。常に目線と胸の向きが同じになるように、体を使ってください。これによって「首を使わない」動きになります。実際には、さまざまな場面で多少は首を使います。


ただし、それはあくまで最後の「添え使い」くらいの感覚で、どうしても可動域が足りないときにだけ首は使うものです。左側から誰かに呼ばれたら、胸ごと視線をそちらに向けるのが本来の動きです。


これは相手への礼儀にも直結しますね。整体的な知識がなくても、礼儀作法の面でこれを行っている人は、知らず知らずに整体的に正しい動作を行っていたのです。首だけでそちらを向くのは相手を軽んじている態度にもなります。「うん」とうなずく動作も同じです。首だけでうなずかず、胸と一緒に視線を動かすようにしてください。立った状態なら、股関節やひざまで使われることが実感できるでしょう。


■視線の移動だけで、体全身を使うことができる


この動作により、首を使う頻度が大幅に減ると、首が守られます。


首ばかりを動かすと、その都度不安定な状態になり、結果として首を支える頻度が増えます。首をかたくし、その土台である肩周辺の強度も必要になってくるので、首と肩がこります。首を使わない動きをするだけで、むだなコリをつくる必要もなくなります。


さらに、体全体を使って視線を動かすだけで、冗談抜きでやせていきます。本当ですよ。毎日の生活の中で、視線の移動は無限に行われています。今までは首だけヒョイと向けていた人が体全体で動くようになったら、そりゃやせるでしょうに。


24時間365日、その動きで視線を移動させればその効果は計り知れません。これが本来の視線の動かし方です。一度体で覚えてしまえば、首だけを使った視線移動が逆に気持ち悪くなります。まずはやってみて、体に染み込ませてください。


■正しい立ち方と正しい座り方が、体を整える


跪坐、助さん格さん座りまで来ましたので、ではここから立ち上がりましょう。これが本来の日本人の立ち方になります。助さん格さん座りで、しっかり骨盤が前に回転している状態で、しっかり前の壁を見て、その状態で頭が前後にぶれず、お尻が後ろに出ていかないように「真っ直ぐ」立ち上がります。


正しい立ち方では、足の指で床をつかむような意識で行う(出所=『読むと「全自動」で健康になるすごい本』)

奥中伸『読むと「全自動」で健康になるすごい本』(KADOKAWA)

ここは脚のパワーを使ってください。どうでしょうか? 「真っ直ぐ」立てましたか?


少しフラフラしたとか、キツかったという人は、今度は立ち上がる際に足のつま先に意識を持っていってください。足の指で床をつかむような意識で、同じことをしてください。さっきよりラクに立ち上がれるのなら、この意識を忘れずに。


まだ終わりませんよ。立った状態はどうでしょうか? 助さん格さん座りから立ち上がったので、足は少し前後にズレた状態で立っているはずです。今度はその体勢が座る際の体勢です。今立ち上がったのと真逆に、そのまま「真っ直ぐ」座ってください。この「立ち座り」の往復動作は、日常での「床付近の用事」の基本形になります。


■日常動作を整えることが、健康への第一歩


例えば、


・靴の向きを整えるのに床に腰を下ろすとき
・床に落ちているものを拾うとき・下の道具を拾うとき
・下のほうの棚のものを出し入れするとき


……などなど、床に腰を下ろす用事、仕事はすべてこの動作の往復で行います。


1日の中で床付近の用事は結構あります。そのすべてをこの往復動作で行います。もうこれだけで十分体は整います。特に特別な整体の体操をしなくても、この動作だけで整います。本当に骨格に無理がなく、使うべき筋肉をしっかり使い、真っ直ぐの背骨が保たれているのならば十分整います。


図表6を見てください。まず近いところから。まず日常から。


身近なところから少しずつ整えていくことが重要(出所=『読むと「全自動」で健康になるすごい本』)

日常の中での床付近の用事、仕事はたくさんあります。これをこのきれいな動作で行う実力があれば、その人は十分きれいな体です。他の動作を知らなくても、勝手に他の動作もきれいになり、骨格的に無理のない動作になっていきます。


一つのきれいな動作が、すべてを整えていきます。それは、まず近いところから整えているからです。遠くの夢物語の健康を見ていないから、整うのです。すべての床付近の動作は、これで行ってください。


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奥中 伸(おくなか・しん)
整体師
奥中整体主宰。1975年生まれ。会社員を経て、2003年より奈良県で整体を開始。当初は、一般的な「コリをもみほぐす施術」を行うも、それが対症療法でしかないことに限界を感じ、より本質的な整体を探求する道へと入っていく。まず「人体は物質であり、構造である」という点に着目し、「体の正しい矢印」を知ってもらうことで、物理的・人体力学的に理にかなった体に導いていく教育的アプローチを実践。中でも、骨こそが力を伝える最重要パーツと捉え、日常動作から見直し、指導する整体に行き着く。フォロワーは4万人(2024年7月現在)。
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(整体師 奥中 伸)

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