風間俊介「マイペースな僕でも、頑固な部分がある。異端児から、芝居に溶け込む役者に」
演劇ユニット・地球ゴージャスの結成30周年記念公演『儚き光のラプソディ』に出演する風間俊介さん(撮影◎本社 奥西義和 以下すべて)
岸谷五朗と寺脇康文による演劇ユニット・地球ゴージャスの結成30周年記念公演『儚き光のラプソディ』が東京・明治座と大阪・SkyシアターMBSで上演される。 物語の舞台は謎の白い部屋。そこへそれぞれに何かから逃げたいと考えている7人の男女が時空を超えて集まってきて……。7人のうちの一人を演じる風間俊介さんが「もう二度とお見せすることのできない芝居をします」と断言する理由とは?(構成◎丸山あかね 撮影◎本社 奥西義和)
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<前編>から続く
「いい演技」より「いい作品」
地球ゴージャスの舞台は全部観てますが、いつも心を鷲掴みにされて、でもそれだけではなく希望というお土産がついていて……。僕が過去に出演させていただいた2作は争いをテーマにしていたりして、人間の愚かさや悲しみが渦巻いているのですが、そうした負の感情もエンターテイメントに包んでいて。しかも大切なメッセージをダイレクトにではなく、さりげなく届けるってところが地球ゴージャスの舞台の魅力だと思います。
今回の舞台に対する意気込みについて尋ねられれば、「頑張ります!」と。もちろんそれは本心なのですが、演じ始めたら無我夢中になって、いい演技をしているだろうか、どんなふうに観られているのだろうかなんて意識はぶっ飛んでしまうでしょうね。
その意味で言えば僕にとっては「いい演技」をすることより、「いい作品に出る」ことのほうが大事だというか……。上手く言えないのですが、舞台はみんなで作り上げていくものなので、自分だけが輝こうなんて発想はおこがましいと思うし、役者の自己満足はお客さんには関係ない。それより、いい作品になるように貢献して、芝居に溶け込むことのほうがずっと大事なことなんじゃないかなって。
そもそも地球ゴージャスの舞台ってアンサンブル(編集部注:メインの登場人物以外、役名のない役)という概念がないんですよ。登場人物のそれぞれに物語があって、そこに優劣はない。たとえば『海盗セブン』(2012年)とか『The Love Bugs』(2016年)には、登場人物が順番に自分のストーリーで舞台を埋め尽くす場面が用意されていて、一色、二色、三色と時間経過とともに色が足されていき、最終的には一つの物語の色に染め上がるという展開。こういうスタイルの芝居が地球ゴージャスの代名詞だなと思いながら、これまで僕は客席から観ているだけだったのですが、もしかしたら……。本当にもしかしたらですけれど『儚き光のラプソティ』では、ずっと仲間に入れて欲しかった未体験ゾーンに踏み込めるかもしれないと勝手に想像を膨らませています。
フレキシブルな生き方をしたい
演じることは同じでも、舞台はドラマや映画とは違いますね。よく舞台は映像作品と違ってお客さんの反応がダイレクトに伝わってくると言っている人がいて、確かにそれもあります。ただ僕は少し違ったことを強く感じていて。舞台には映像作品に出演しても感じない儚さがつきまとうんですよ。映像ってあとから何度でも観ることができるけど、自分が出たリアルな舞台を客席から観ることは一生できない、僕は観られないんだって思うわけです。なので周囲の人の感想を聞きまくりますし、自己評価をしないように心がけています。
こういう役者になりたいという目標はあえて掲げていません。目標を作れば最短距離でいけるのかもしれませんが。僕は自分がどこにたどり着くかわからないまま歩んで行く中で、いろいろな人や作品に出会うことによって導かれる道を進んでいくのも素敵だなって。
あくまで自分の場合はなのですが、目標を定めてしまうと、その目標に必要なことだけしか吸収できなくなってしまいそうで。なのでフレキシブルに、最後にどんな景色の場所にたどり着くかわからないというようでいたいなと思ってます。
「こういう役者になりたいという目標はあえて掲げていません」
独立後もマイペースで
仕事を取り巻く環境が変わり、今年からSNSなるものを始めました。といっても、それ以外に特に変わったことはなく。仕事に対する考え方や取り組み方はこれまで通りです。本当はもっとしっかり自己管理をしなくてはとか、意識を変えていかなくちゃいけないのかもしれませんが、僕は相変わらずマイペースで。
でもマイペースだと思っているのは自分だけで、周囲の人からみたらちょっと変わった人なのかもしれませんね。僕は前の事務所でも、踊らない、歌わない異端児でしたが、それが許されていたことに感謝しなくてはいけないと思っています。
ただ自分の我儘を通したいというのはないんです。みんなが円滑に動けばいいなと思っているし、円滑に動かなかった時に何とかしたいという気持ちもあります。なのでギスギスしているのは嫌だというところは我儘。で、みんなが心地よく自分達のペースで動いているなと感じられることが僕の中でのベストなマイペースです。マイペースというと穏やかでおっとりとしていてというイメージを抱きがちですが、わりと芯はあるのかも。ブレていたいなぁと思いつつ、ずっと変わらないので頑固です(笑)。
40歳という年齢については、先輩たちが「40になると途端に体力が落ちた」と口をそろえて言うので、きっとそうなんだろうなと。でも年齢にはあまりこだわってないというのが正直なところです。できなくなったことを惜しむより、できるようになったことをみつめていたいと思うだけです。
たとえば昔は長ゼリフも一発で覚えることができたけど、今はそうはいかなくなりました。その代わりにその場に応じて演じることの大切さに気づいた自分がいます。僕がセリフを言う、すると相手がこういうトーンで返す、とは限らない。僕は相手が強い口調で返すことを想定していたのに、相手が意外とサラッと返してきた場合、そのトーンを受けて自分がどう出るのか? といった柔軟性をもっと養っていきたいと考えています。とにかくいい作品作りに貢献したい。『儚き光のラプソディ』に出演できること自体が嬉しいし、たくさんの方に観ていただけたら最高です。
「できなくなったことを惜しむより、できるようになったことをみつめていたい」
婦人公論.jp
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