赤楚衛二「父の言葉に背中を押され役者の道へ。『チェリまほ』が転機、海外にも興味が。30歳の抱負は〈年相応の男〉に見られること」
「どちらも本当に素敵なドラマで、《やってよかった!》と心から思いますし、あの現場を経験したからこそ心身が鍛えられた」(撮影=宅間國博)
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2020年に放送された主演ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』で注目を集め、22年の連続テレビ小説『舞いあがれ!』でヒロインの相手役を演じ、幅広い世代から人気急上昇中の赤楚衛二さん。23年は『ペンディングトレイン—8時23分、明日君と』『こっち向いてよ向井くん』とメインキャストとしての出演が続きました。演じた人物が実在するかのように思わせてしまう表現力を持つ赤楚衛二さんの素顔は。本日4月11日から放送開始の主演ドラマ『Re:リベンジ—欲望の果てに—』では、新たな役柄への挑戦となるそうで——。(撮影:宅間國博 構成:上田恵子)
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2つの作品で心身を鍛えられた
この3月で30歳になりました。20代、特に仕事に関しては「後悔なく頑張った」という感覚です。
20代最後の年は、ドラマ『ペンディングトレイン—8時23分、明日君と』『こっち向いてよ向井くん』と、ありがたいことに出演作が続きました。
静岡の樹海で撮影した『ペンディング〜』では、4ヵ月間の過酷なロケで肉体を使い、『〜向井くん』では、台本7〜10ページに及ぶ会話劇で脳みそを使い……。(笑)
とはいえ、どちらも本当に素敵なドラマで、「やってよかった!」と心から思いますし、あの現場を経験したからこそ心身が鍛えられた。どちらも間違いなく僕を強くしてくれた作品です。
「理想の自分と現実とのギャップを目の当たりにして、自分のことが嫌いになったりもしました」
先のことは決めず、流れるように生きる
子どもの頃は、ものすごくわんぱくな少年でした。好奇心が抑えられず、思い立ったら即行動。「ここから飛び降りたら、どうなるんだろう?」と、階段の一番上からジャンプして、案の定ケガをしたり(笑)。小中学校時代は、しょっちゅう親や先生に叱られていました。
そんな〈やんちゃ〉な性格が変わったのは、映画好きの家族に喜んでほしくて役者を目指し、名古屋から上京したことがきっかけです。当時は演技のレッスンを受けても、たった1ページの台本がまともに演じられなくて。「普通に歩いて」と言われているのに、緊張で右手と右足が同時に出てしまったり……。
お芝居が下手すぎて厳しく指導され、子どもの頃のアグレッシブなパワーは100%消滅(笑)。理想の自分と現実とのギャップを目の当たりにして、自分のことが嫌いになったりもしました。
でも、コロナ禍で自身とじっくり向き合う時間ができたとき、あがいたところで僕は僕でしかないな、と気づいて。ありのままを受け入れて、流れるように生きていこうと思ったんです。
昔はカナダの俳優ライアン・ゴズリングに憧れていた時期もあれば、我を貫き通す職人さんのような役者になりたいとか、ただかっこいい大人になりたいと思ったこともありましたが、どれも僕には無理なので(笑)。
今はあまり先のことを決めず、自分らしくいることを大事にしたい。そして、歩いてきた道を振り返ったときに、「これが自分の人生なんだな」と納得できたらいいなと思っています。
2020年に出演したドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(通称・チェリまほ)も、大きな転機になりました。この作品は国内だけではなく、海外にまで広がった。
日本のお芝居が世界に届くことを肌で感じましたし、国内で観てくださる方々はもちろん、海外にも意識を向けなくてはいけないんだなと。それからは、いつも心の片隅で「世界の皆さんに」と思いながら演じるようになりました。
イメージを裏切っていきたい
この春、ドラマ『Re:リベンジ—欲望の果てに—』に出演します。フジテレビでゴールデン帯の主役をやらせていただくのは夢のひとつでもあったので、精いっぱい頑張って面白いものを届けたいです。
舞台は、日本屈指の巨大病院。僕は同院の理事長の息子で、週刊誌の記者をしている主人公・天堂海斗を演じます。海斗は父親との間に確執を抱えているのですが、ひとつの事件を機に、院内で理事長の座を巡って権力争いが勃発。病院とは距離を置いてきた海斗が、大切なものを守るため、権力争いに挑んでいきます。
度を越した欲望や野望を抱いた人々の行動原理が生々しく描かれている脚本に、圧倒されました。人間の醜さと言えばそうなのかもしれませんが、僕はそこに、「これが人間だ」というある種の美しさも感じます。普段フタをしている感情が表出したときに人はどう変わるのか。ゾワゾワしながら楽しんでください。
実は海斗は、いつかやってみたいと思っていた役柄なんです。権力争いに嫌悪感を抱く彼自身も、復讐心や野心、保身、男女の欲望など、人が持つほとんどすべての欲望を持っている。
えぐみや振り幅のある役なのでプレッシャーも感じつつ、これを乗り越えたら役者としての幅も広がるはず。皆さんに好かれる役かどうかはわかりませんが。(笑)
僕自身は、欲望や野望というほどのものは抱いていません。いたってのんびりした人間です。人を描く職業に就いている以上、そういうエネルギーも大事にしたい気持ちはありますし、面白い作品を届けたいという思いの中にも、「やるならど真ん中で演じさせていただきたい」という欲はあります。
とはいえプライベートでは怒ることもめったにないので、極めておだやかなタイプだと思っているんです。
ドラマでは父親との確執も描かれています。僕自身はそういった経験もなく……(笑)。父には厳しく育てられましたが、何くそ根性で「絶対に負けたくない!」と思いながら乗り越えてきました。
相手と対峙せずに諦めてしまえば、確執ができてしまう。逆に、逃げずに向き合えば、軋轢は生まれないと思います。僕がお芝居の世界に入りたいと伝えたときも、父は「やりたいことを見つけたならそれが一番だ」と背中を押してくれました。両親は僕の活動を楽しみにしているようで、よく「ドラマ観たよ」と連絡がきます。
今年、プライベートでやりたいことですか?うーん、中学時代の友だちと旅行したいねと話していて、それくらいかな。休みをもらえたら嬉しいですが、あっても何をしようか悩んで、結局、洗濯や掃除をして一日が終わるんです。面白みがなくてすみません。(笑)
30歳の抱負としては、やはり役者として皆さんに楽しんでいただくのが一番です。そのためにも少しずつイメージを裏切っていかなくてはいけないと思っています。あとは、「年相応の男」に見られることですね。頑張ります。(笑)
婦人公論.jp
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