与謝野晶子が考える、現代に通じる<愛のかたち>とは。「真に深く愛することは、真に深く生きること」
与謝野さん「愛は成長する可能性をもっている」(写真提供:Photo AC)
今年1月からNHKで放送中の大河ドラマ『光る君へ』。主人公は平安時代のベストセラー『源氏物語』を書いた紫式部。そんな彼女と同じように、近代の女流歌人として活躍し、『源氏物語』の翻訳を3度試みた与謝野晶子。今回は与謝野晶子が書いた評論集の中から、選りすぐりの言葉や詩を紹介します。与謝野さんいわく、「愛は成長する可能性をもっている」そうで——。
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愛は訓練されなければ
人生においては、訓練や努力なしには、何ごともなし遂げられません。
人生の完成を望む人は、自分の品性、そして周囲の人々をよりよいものにするために、さまざまな悲痛にも耐えなければなりません。
愛もまた必ず訓練されなければならないものです。
愛は成長する可能性をもっています。
その可能性をできるだけ大きくするために、私たちはみずからを訓練するのです。
母として子を愛するにしても、素朴で本能的な愛のままでは、動物の母親が子どもを世話する程度の愛にとどまるでしょう。
訓練によって、聡明さと綿密さ、そして人間的な深みが加わっていき、人間の母としての愛が完成されます。男女間の愛もまたそうなのです。
「愛の訓練」(『愛、理性及び勇気』より)
深く愛して深く生きる
真に深く愛することは、真に深く生きることです。
誰かを、あるいは何かを真剣に愛さない人には、自分の生命の尊厳とエネルギーを体験することはできないでしょう。
また、そういう人は、人生を断片的に生きるに過ぎません。
人生全体を直感的にとらえる喜びは、愛のなかからだけ汲みとることができるのです。
愛さなければ、一つの美術品の美しさを心の底から受けとめることはできません。
愛がなかったならば、男が女を、女が男を、友が友を、親が子を、子が親を理解することができるでしょうか。
愛を基礎としない思想はすぐれた思想とはいえず、愛のともなわない経験は豊かな経験ではないのです。
「愛の訓練」(『愛、理性及び勇気』より)
愛をもって交流する
「共感」は、「愛」というものの別の表現でもあります。
「私は」と言うべきところで、うっかり「人は」と言ったとき、無意識のうちに「愛」が自分から他者に向けられているのだと思います。
「愛」に恵まれない思想は枯渇し、「愛」の足りない生活は破綻します(写真提供:Photo AC)
「愛」は無限です。
永久に若い夏の女王としてずんずんと成長します。
「愛」に恵まれない思想は枯渇し、「愛」の足りない生活は破綻します。
それは、「愛」が男女の結婚、もしくは社会民衆の問題に働くとき、最も顕著に経験されます。
愛の生活
人は「愛」をもって他者と深く交じわることで自らの生活を深くすることができます。
それは、自らの生活を深く愛することになります。
個人の愛の生活の極限は、全人類の愛の生活と響きあいます。
私たちの生活の理想は、常にこの音楽的な境地にあるべきだと思います。
「愛の生活」(『人及び女として』より)
※本稿は、『与謝野晶子 愛と理性の言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
婦人公論.jp
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