【モアナを知ろう第6弾】オーガニックに生きる島の人々から学ぶ「本当の豊かさ」とは――監督プロデューサーインタビュー
シネマカフェ2017年7月11日(火)19時30分
魅力的で心惹きつけられるキャラクターとともに、作品に入り込むための世界観づくりを徹底して行うのが「ディズニー・アニメーション」の製作における重要な点であることが今回のウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ本社取材で発見したことだ。先日発売された『モアナと伝説の海』MovieNEX内のボーナス映像『VOICE OF THE ISLAND(南の島の声をたどって)』では、ロン・クレメンツ&ジョン・マスカー監督をはじめとする製作陣の5年に渡るフィールド・ワークの模様が映されているが、今回はその監督&プロデューサーのオスナット・シューラ―に直接インタビューし、南太平洋の文化を肌で感じたその感触や、彼らの目に映った現地でのリアルな光景を語ってもらった。また、本作を先導した彼らだからこそ理解しているキャラクターの魅力についても監督らのコメントとともに紹介していく。
■自然と協力しながら生きる人々の持つ「精神的な豊かさ」
島に生きる人々は食物や原料、自然のものに対して非常にセンシティブである。なぜなら、限られたものの中で、何かを極端に使いすぎたり収穫しすぎたりするとそれがダイレクトに生活に影響するからだ。不足したものをすぐに調達することも難しい環境で、人々は均衡をうまく保ちながら自然と協力して生活している。そのようにして、人々はモノに頼らず、工夫を凝らしながら臨機応変に暮らしているが、その姿にはモノに溢れた生活を送る私たちには無い「精神的な豊かさ」があったという。
オスナット氏「私たちは、島の中でも非常に豊かさを感じました。島の人たちの自然とのつながりや、自然に対する精神性にはとても感動的なものがありました。特に現在、世界で起きていることを考えると、皆がああいう考え方をすることができたら世の中も良くなるのではないかと考えたりもします」。
具体的には、大きな葉っぱを使ってちょっとしたリュックサックを作って漁に持っていったり、ココナッツの木から繊維を取って、パンツの上でよじるようにして縄を作るなど、人々はその場にあるものでなんでも作ってしまうのだ。
モノを買ったり消費することが豊かであるという考えを否定することはないが、物質的な幸せを求めるほど自然とのバランスは崩れ、間接的に島の人々の生活を脅かす環境の一因になっていることも、また否定が出来ない。いまこそ、私たちは南太平洋の人々が持つ、精神的な豊かさから学ぶ必要があるのかもしれない。
監督たちが島に到着した際、島の人々から受けた「カヴァセレモニー」という歓迎があったという。カヴァとは、コショウ科の樹の皮を乾燥させ粉状にして液体に混ぜた飲み物で、唇が少し痺れ筋肉が弛緩する作用があり、飲みすぎると少しヨロヨロしてしまうこともあるのだとか。セレモニーではカヴァの入った杯をもらって飲み、飲み残しは捨てて、杯を返すそう。気になるカヴァの味は、オスナット氏いわく「食器洗い洗剤のような味」と、少し苦みがある感じなんだとか。
ほかにも「カヴァセレモニー」の後、ウムミールという食事をしたのだとか。オスナット氏が当時の模様を教えてくれた。「全てのものを地中に埋め、石を熱して調理するのですが、海からは魚を獲ってきて、ココナッツは木から取ってきたし、タロイモもそこで掘ったものだったし、それを火で調理して割ったものや、葉っぱを利用して食べました。どれ1つとして、よそで作られた物や工場で作られた物ではなかったのです」。
■魅力的なキャラクターづくり
島の人たちや海に愛されるモアナ。責任感が強く冒険心もある彼女の最大の魅力を監督たちに語ってもらった。
オスナット氏「私にとっては素晴らしい美しさと強さを併せ持つキャラクターだということですね。彼女が戦士のように凛々しく立っているところが大好きなんです。若い女性が、世界を救ってヒーローになるという話を語るのは素晴らしいことだと思うし、私たち、特に女性にとっては、本作は「いま」という時代の現実の問題に直結している話だと思うのです」。
ロン監督「それに付け加えたいのですが、モアナは思いやりがあって相手の感情を理解する能力に長けていて、彼女のそういう一面がストーリーで重要な役割を果たしていると思うし、彼女の素晴らしい資質だと思います」。
ジョン監督「モアナの資質ではあと2つ言っておきたいところがありますね。1つは彼女には傷つきやすいところがあるということ。彼女は、自分が正しいことをしているのかどうか、いつも確信を持てているというわけではないのだけれど、自分に対するそういう疑念と戦って物事を成し遂げるのです。もう1つはユーモアのセンスがあるということです。その持ち前のウィットで、自分より大きくて何でもコントロールしたがるマウイをぐうの音も出ないほど追い詰めてしまう。そうやって相手との関係を最上なところに持っていくという才能にも私は惹かれます」。
力強さと思いやりが共存し、かつユーモアのセンスに長けたモアナ。では、モアナをはじめとする、アニメーション作品の興味深いキャラクターづくりや、ほかの登場人物とのダイナミックなつながりを描くうえで監督たちが考えるビジョンとはどんなものなのか?
ロン監督「私がディズニーで働き始めて、一緒に仕事をしてきた人たちから学んだのは、キャラクターと彼らの関係は非常に大事だということです。登場人物たちを興味深いキャラクターにして、彼らの関係をダイナミックにするためにすごく頑張らねばならないのです」。
ジョン監督「キャラクターは作品の中心になるものですからね。キャラクターに感情移入できなかったら…」
オスナット氏「全てがどうでもよくなってしまいますからね」。
ジョン監督「映画に入り込めなってしまいます。だから、観客を作品の世界に誘い込んで、自分や自分の知っている人たちと近しいものを感じられるようなキャラクターであることが必要なのです。同時に、自分とは違うところがあって、驚かせてくれる人物であり、感情移入して彼らが幸せになってくれることを望むような人物でなければならないのです」。
また、キャラクター作りだけでなく、声優のキャスティングも観客を作品に引き込む一環であるとジョン監督は語る。「いかにもそのキャラクターらしい納得のいく声であり、観る人を惹きつけ彼気に入ってもらえる声の持ち主を探さねばなりません」。本作でモアナの声を務めたハワイ出身のアウリィ・カルバーリョは自身のキャラクターに沿ったアドリブなどをしたそう。
観客たちが作品に感情移入して思い入れを持てるようなキャラクターにするというのは、決して容易ではないことながら、これまで7本のディズニーアニメーション作品を手掛け、本作でも海をキャラクターとして描くなど、新たなチャレンジにワクワクしながら取り組んだというロン&ジョン監督。今年でディズニー在籍40周年と43年を迎えた監督たちは、この長い期間の中で“希望が持てなかった”時期、辞職しようと考えた時期もあったそうだが、「自分の声に従う」というテーマが込められた本作から、監督たち自身のスタンスもうかがえるのかもしれない。
『モアナと伝説の海』MovieNEXは発売中、デジタル配信中。
協力:ウォルト・ディズニー・ジャパン
■自然と協力しながら生きる人々の持つ「精神的な豊かさ」
島に生きる人々は食物や原料、自然のものに対して非常にセンシティブである。なぜなら、限られたものの中で、何かを極端に使いすぎたり収穫しすぎたりするとそれがダイレクトに生活に影響するからだ。不足したものをすぐに調達することも難しい環境で、人々は均衡をうまく保ちながら自然と協力して生活している。そのようにして、人々はモノに頼らず、工夫を凝らしながら臨機応変に暮らしているが、その姿にはモノに溢れた生活を送る私たちには無い「精神的な豊かさ」があったという。
オスナット氏「私たちは、島の中でも非常に豊かさを感じました。島の人たちの自然とのつながりや、自然に対する精神性にはとても感動的なものがありました。特に現在、世界で起きていることを考えると、皆がああいう考え方をすることができたら世の中も良くなるのではないかと考えたりもします」。
具体的には、大きな葉っぱを使ってちょっとしたリュックサックを作って漁に持っていったり、ココナッツの木から繊維を取って、パンツの上でよじるようにして縄を作るなど、人々はその場にあるものでなんでも作ってしまうのだ。
モノを買ったり消費することが豊かであるという考えを否定することはないが、物質的な幸せを求めるほど自然とのバランスは崩れ、間接的に島の人々の生活を脅かす環境の一因になっていることも、また否定が出来ない。いまこそ、私たちは南太平洋の人々が持つ、精神的な豊かさから学ぶ必要があるのかもしれない。
監督たちが島に到着した際、島の人々から受けた「カヴァセレモニー」という歓迎があったという。カヴァとは、コショウ科の樹の皮を乾燥させ粉状にして液体に混ぜた飲み物で、唇が少し痺れ筋肉が弛緩する作用があり、飲みすぎると少しヨロヨロしてしまうこともあるのだとか。セレモニーではカヴァの入った杯をもらって飲み、飲み残しは捨てて、杯を返すそう。気になるカヴァの味は、オスナット氏いわく「食器洗い洗剤のような味」と、少し苦みがある感じなんだとか。
ほかにも「カヴァセレモニー」の後、ウムミールという食事をしたのだとか。オスナット氏が当時の模様を教えてくれた。「全てのものを地中に埋め、石を熱して調理するのですが、海からは魚を獲ってきて、ココナッツは木から取ってきたし、タロイモもそこで掘ったものだったし、それを火で調理して割ったものや、葉っぱを利用して食べました。どれ1つとして、よそで作られた物や工場で作られた物ではなかったのです」。
■魅力的なキャラクターづくり
島の人たちや海に愛されるモアナ。責任感が強く冒険心もある彼女の最大の魅力を監督たちに語ってもらった。
オスナット氏「私にとっては素晴らしい美しさと強さを併せ持つキャラクターだということですね。彼女が戦士のように凛々しく立っているところが大好きなんです。若い女性が、世界を救ってヒーローになるという話を語るのは素晴らしいことだと思うし、私たち、特に女性にとっては、本作は「いま」という時代の現実の問題に直結している話だと思うのです」。
ロン監督「それに付け加えたいのですが、モアナは思いやりがあって相手の感情を理解する能力に長けていて、彼女のそういう一面がストーリーで重要な役割を果たしていると思うし、彼女の素晴らしい資質だと思います」。
ジョン監督「モアナの資質ではあと2つ言っておきたいところがありますね。1つは彼女には傷つきやすいところがあるということ。彼女は、自分が正しいことをしているのかどうか、いつも確信を持てているというわけではないのだけれど、自分に対するそういう疑念と戦って物事を成し遂げるのです。もう1つはユーモアのセンスがあるということです。その持ち前のウィットで、自分より大きくて何でもコントロールしたがるマウイをぐうの音も出ないほど追い詰めてしまう。そうやって相手との関係を最上なところに持っていくという才能にも私は惹かれます」。
力強さと思いやりが共存し、かつユーモアのセンスに長けたモアナ。では、モアナをはじめとする、アニメーション作品の興味深いキャラクターづくりや、ほかの登場人物とのダイナミックなつながりを描くうえで監督たちが考えるビジョンとはどんなものなのか?
ロン監督「私がディズニーで働き始めて、一緒に仕事をしてきた人たちから学んだのは、キャラクターと彼らの関係は非常に大事だということです。登場人物たちを興味深いキャラクターにして、彼らの関係をダイナミックにするためにすごく頑張らねばならないのです」。
ジョン監督「キャラクターは作品の中心になるものですからね。キャラクターに感情移入できなかったら…」
オスナット氏「全てがどうでもよくなってしまいますからね」。
ジョン監督「映画に入り込めなってしまいます。だから、観客を作品の世界に誘い込んで、自分や自分の知っている人たちと近しいものを感じられるようなキャラクターであることが必要なのです。同時に、自分とは違うところがあって、驚かせてくれる人物であり、感情移入して彼らが幸せになってくれることを望むような人物でなければならないのです」。
また、キャラクター作りだけでなく、声優のキャスティングも観客を作品に引き込む一環であるとジョン監督は語る。「いかにもそのキャラクターらしい納得のいく声であり、観る人を惹きつけ彼気に入ってもらえる声の持ち主を探さねばなりません」。本作でモアナの声を務めたハワイ出身のアウリィ・カルバーリョは自身のキャラクターに沿ったアドリブなどをしたそう。
観客たちが作品に感情移入して思い入れを持てるようなキャラクターにするというのは、決して容易ではないことながら、これまで7本のディズニーアニメーション作品を手掛け、本作でも海をキャラクターとして描くなど、新たなチャレンジにワクワクしながら取り組んだというロン&ジョン監督。今年でディズニー在籍40周年と43年を迎えた監督たちは、この長い期間の中で“希望が持てなかった”時期、辞職しようと考えた時期もあったそうだが、「自分の声に従う」というテーマが込められた本作から、監督たち自身のスタンスもうかがえるのかもしれない。
『モアナと伝説の海』MovieNEXは発売中、デジタル配信中。
協力:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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