【インタビュー】水川あさみが語る“夫婦観”、同業だから「1番褒められたい」
シネマカフェ2020年9月7日(月)8時0分
「飾らない女優」。水川あさみは、そんな言葉がよく似合う。『金田一少年の事件簿 上海魚人伝説』でデビュー以来、十代のころから映画やドラマで活躍してきたベテランながら、等身大の“生きた演技”を披露し続ける人物だ。
看護師に占い師、雑誌編集者。ラブストーリーにホラー、サスペンス…。役柄もジャンルも、なんでもござれの水川さんが、新たに選んだ役どころは、なんと鬼嫁。うだつの上がらない夫に罵詈雑言を浴びせ、尻を叩き続ける妻を人間味たっぷりに演じた映画『喜劇 愛妻物語』が、9月11日に劇場公開を迎える。
『百円の恋』の脚本家・足立紳が、自伝的小説を自ら映画化した本作。濱田岳が、足立監督がモデルとなった主人公・豪太を演じ、水川さんがその妻のチカに扮した。年収50万円の売れない脚本家・豪太は、結婚して10年になる妻・チカとのセックスを望むも、連日拒否されてばかり。そんななか、久方ぶりに脚本の仕事が舞い込む。豪太はチカと娘のアキ(新津ちせ)を連れ、四国への取材旅行に繰り出すのだが…。
出会うべくして出会った「取り繕ったものじゃない面白い役」
「『喜劇 愛妻物語』みたいな作品を、ずっとやりたかったんですよね」と語る水川さん。
「チカはある意味、自分自身もあけっぴろげにならないとできない役だったなと思うし、そういう役を求めていたところもありました。30代も後半に入ってきて、『カッコイイ』とか『キレイ』とか取り繕ったものじゃない面白い役をやりたいな、と思っていたときに、出会うべくして出会わせてくれた。すぐ『やります』って伝えましたね」。
確かに、常にキレ気味で眉にしわを寄せ、「あ?(怒)」と当たり散らす水川さんの姿は、非常に新鮮。そしてまた、口から飛び出すセリフも、衝撃的だ。
あの手この手でセックスに持ち込もうとする豪太に、チカがぶつける暴言の数々は、聞いているだけで吹き出してしまうレベル。予告編にも登場する「うぜー」「うるさい」「消えろ」は、ほんの序の口だ。その詳細は映画を観てのお楽しみだが、よくもまあこんなワードが飛び出してくるものだと驚嘆させられる。
水川さんは、「なかなか普段は使わない罵詈雑言でしたが、躊躇しないくらい、腹立たしかった」と笑う。
「(濱田)岳くんを前にすると、自然に出てきましたね(笑)。隣に監督もいますし、2人の顔を見ていると、チカの気持ち的には『うん、これはそうなるわ。こんなにだらしない夫と10年も一緒にいたら、仕方ない』という感じでした。演じているときは、暴言が滝のようにあふれてくるように見えればと思っていました」。
ちなみに、「映画の中のセリフは、ほとんどが台本通り」とのこと。足立監督の人生経験がにじみ出たワードの数々も面白ければ、10年連れ添った夫婦にしか見えない水川さんと濱田さんの空気感も、実に見事だ。
「実は、撮影中に岳くんと『次のシーンはこうしようね』っていう話は、一切しませんでした。話さなくてもできるというか、お互いを信頼しあっていたんですよね。むしろ作ろうとしなかったからこそ、自然な空気感が生まれたんだと思います。監督が『この人たちならできる』と思ってキャスティングしてくれたとしか思えない(笑)」。
演じる上で大切にしたのは「愛情」
演じるうえでは、“場の力”も大きかったという。というのも本作は、足立監督の自宅を豪太とチカ、アキの家に見立てて撮影しているのだ。
「美術さんが置いてくださったものもありますが、足立さんの家にあるものがそのまま映ってるんです。あの生活感はなかなか出せない。演じるうえで、助けになりましたね」。
「あと、足立さんの家で岳くんと、あるノートを見つけたんです。監督が書いたプロットに、奥さんが赤ペン先生のように大量にダメだしを入れていて。その上に、監督が『クソ野郎!』って書いていたのを見て(笑)、岳くんと『このページだけで夫婦のすべてがわかるね』と話したことを覚えています」。
こういったアイテムのサポートもあり、倦怠期の夫婦になりきっていったふたり。また、水川さんがチカを演じる際、大切にしたのは「愛情」だという。
「長い間一緒にいると、生きることにいっぱいいっぱいになって埋もれてしまうけど、チカも豪太も、根本的にお互いへの愛情がありますよね。そこはすごく、素敵だなと感じた部分です」。
愛しているから、憎まれ口も叩いてしまう。信じているがゆえに、きつく当たったりもする。夫婦というのは、実に不思議ないきものだ。『喜劇 愛妻物語』を観ていると、そのことを改めて痛感させられる。
象徴的なのは、堪忍袋の緒が切れたチカが泣き出してしまうシーン。愛情や怒り、悲しみが混然一体となった水川さんの最大の見せ場は、意外にも「ぶっつけ本番だった」そうだ。
「長回しで撮るって監督は最初から決めていたみたいで、大体の立ち位置を決めたらすぐ本番でした。あのシーンは、泣いてるのに笑ってて、でもものすごく腹が立ってもいて…全部の感情がぐちゃぐちゃに入り混じって、演じていてもすごく面白かったです。自分も好きなシーンですね」。
「それまでのチカって、口ではきつく言ってても、豪太への愛情が歯止めをかけてたんだと思います。でも、それがぷつんと切れてしまう。それなのに豪太はピンと来ていなくて、情けないやら腹が立つやら。でもそういう“人間っぽい”瞬間って、とても魅力的であり、素敵ですよね」。
自身の“夫婦観”は「目指す先が一緒」
2019年に結婚した水川さん。豪太とチカの夫婦を、どう見ているのだろうか?
「撮影当時は結婚前でしたが、いま観たら客観的にグッとくる部分もあって、発見でした。改めて、こんな夫婦になれたらいいな、と思いましたね。どんなにつらいことや悲しいことがあっても、泣いて笑って、次の日には一緒にご飯を食べる。夫婦ってそういうものですよね」。
ちなみに、水川さんのお気に入りの“夫婦映画”は「男女で感情移入の仕方が変わる『ブルーバレンタイン』」だそう。最後に、自身の“夫婦観”を聞いてみた。
「私たちは夫婦で同じ仕事をしているからこそ、目指す先が一緒。同業だからいいことも悪いこともわかる。だから、『1番褒められたい人』かもしれない」。
プロとしてのプライドと、夫婦としての愛情。どちらにも通ずる、信頼――。実に奥深い答えに、うならされた。
最高の伴侶を得て、女優としても女性としても、新たなスタートを切った水川さん。彼女自身がこれから紡いでいく「夫婦の物語」もまた、味わい深いものになっていくことだろう。
看護師に占い師、雑誌編集者。ラブストーリーにホラー、サスペンス…。役柄もジャンルも、なんでもござれの水川さんが、新たに選んだ役どころは、なんと鬼嫁。うだつの上がらない夫に罵詈雑言を浴びせ、尻を叩き続ける妻を人間味たっぷりに演じた映画『喜劇 愛妻物語』が、9月11日に劇場公開を迎える。
『百円の恋』の脚本家・足立紳が、自伝的小説を自ら映画化した本作。濱田岳が、足立監督がモデルとなった主人公・豪太を演じ、水川さんがその妻のチカに扮した。年収50万円の売れない脚本家・豪太は、結婚して10年になる妻・チカとのセックスを望むも、連日拒否されてばかり。そんななか、久方ぶりに脚本の仕事が舞い込む。豪太はチカと娘のアキ(新津ちせ)を連れ、四国への取材旅行に繰り出すのだが…。
出会うべくして出会った「取り繕ったものじゃない面白い役」
「『喜劇 愛妻物語』みたいな作品を、ずっとやりたかったんですよね」と語る水川さん。
「チカはある意味、自分自身もあけっぴろげにならないとできない役だったなと思うし、そういう役を求めていたところもありました。30代も後半に入ってきて、『カッコイイ』とか『キレイ』とか取り繕ったものじゃない面白い役をやりたいな、と思っていたときに、出会うべくして出会わせてくれた。すぐ『やります』って伝えましたね」。
確かに、常にキレ気味で眉にしわを寄せ、「あ?(怒)」と当たり散らす水川さんの姿は、非常に新鮮。そしてまた、口から飛び出すセリフも、衝撃的だ。
あの手この手でセックスに持ち込もうとする豪太に、チカがぶつける暴言の数々は、聞いているだけで吹き出してしまうレベル。予告編にも登場する「うぜー」「うるさい」「消えろ」は、ほんの序の口だ。その詳細は映画を観てのお楽しみだが、よくもまあこんなワードが飛び出してくるものだと驚嘆させられる。
水川さんは、「なかなか普段は使わない罵詈雑言でしたが、躊躇しないくらい、腹立たしかった」と笑う。
「(濱田)岳くんを前にすると、自然に出てきましたね(笑)。隣に監督もいますし、2人の顔を見ていると、チカの気持ち的には『うん、これはそうなるわ。こんなにだらしない夫と10年も一緒にいたら、仕方ない』という感じでした。演じているときは、暴言が滝のようにあふれてくるように見えればと思っていました」。
ちなみに、「映画の中のセリフは、ほとんどが台本通り」とのこと。足立監督の人生経験がにじみ出たワードの数々も面白ければ、10年連れ添った夫婦にしか見えない水川さんと濱田さんの空気感も、実に見事だ。
「実は、撮影中に岳くんと『次のシーンはこうしようね』っていう話は、一切しませんでした。話さなくてもできるというか、お互いを信頼しあっていたんですよね。むしろ作ろうとしなかったからこそ、自然な空気感が生まれたんだと思います。監督が『この人たちならできる』と思ってキャスティングしてくれたとしか思えない(笑)」。
演じる上で大切にしたのは「愛情」
演じるうえでは、“場の力”も大きかったという。というのも本作は、足立監督の自宅を豪太とチカ、アキの家に見立てて撮影しているのだ。
「美術さんが置いてくださったものもありますが、足立さんの家にあるものがそのまま映ってるんです。あの生活感はなかなか出せない。演じるうえで、助けになりましたね」。
「あと、足立さんの家で岳くんと、あるノートを見つけたんです。監督が書いたプロットに、奥さんが赤ペン先生のように大量にダメだしを入れていて。その上に、監督が『クソ野郎!』って書いていたのを見て(笑)、岳くんと『このページだけで夫婦のすべてがわかるね』と話したことを覚えています」。
こういったアイテムのサポートもあり、倦怠期の夫婦になりきっていったふたり。また、水川さんがチカを演じる際、大切にしたのは「愛情」だという。
「長い間一緒にいると、生きることにいっぱいいっぱいになって埋もれてしまうけど、チカも豪太も、根本的にお互いへの愛情がありますよね。そこはすごく、素敵だなと感じた部分です」。
愛しているから、憎まれ口も叩いてしまう。信じているがゆえに、きつく当たったりもする。夫婦というのは、実に不思議ないきものだ。『喜劇 愛妻物語』を観ていると、そのことを改めて痛感させられる。
象徴的なのは、堪忍袋の緒が切れたチカが泣き出してしまうシーン。愛情や怒り、悲しみが混然一体となった水川さんの最大の見せ場は、意外にも「ぶっつけ本番だった」そうだ。
「長回しで撮るって監督は最初から決めていたみたいで、大体の立ち位置を決めたらすぐ本番でした。あのシーンは、泣いてるのに笑ってて、でもものすごく腹が立ってもいて…全部の感情がぐちゃぐちゃに入り混じって、演じていてもすごく面白かったです。自分も好きなシーンですね」。
「それまでのチカって、口ではきつく言ってても、豪太への愛情が歯止めをかけてたんだと思います。でも、それがぷつんと切れてしまう。それなのに豪太はピンと来ていなくて、情けないやら腹が立つやら。でもそういう“人間っぽい”瞬間って、とても魅力的であり、素敵ですよね」。
自身の“夫婦観”は「目指す先が一緒」
2019年に結婚した水川さん。豪太とチカの夫婦を、どう見ているのだろうか?
「撮影当時は結婚前でしたが、いま観たら客観的にグッとくる部分もあって、発見でした。改めて、こんな夫婦になれたらいいな、と思いましたね。どんなにつらいことや悲しいことがあっても、泣いて笑って、次の日には一緒にご飯を食べる。夫婦ってそういうものですよね」。
ちなみに、水川さんのお気に入りの“夫婦映画”は「男女で感情移入の仕方が変わる『ブルーバレンタイン』」だそう。最後に、自身の“夫婦観”を聞いてみた。
「私たちは夫婦で同じ仕事をしているからこそ、目指す先が一緒。同業だからいいことも悪いこともわかる。だから、『1番褒められたい人』かもしれない」。
プロとしてのプライドと、夫婦としての愛情。どちらにも通ずる、信頼――。実に奥深い答えに、うならされた。
最高の伴侶を得て、女優としても女性としても、新たなスタートを切った水川さん。彼女自身がこれから紡いでいく「夫婦の物語」もまた、味わい深いものになっていくことだろう。
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