「国のイメージを乱す」金正恩氏、無差別銃撃を中止
北朝鮮の社会安全省(警察庁)が、新型コロナウイルス対策として、国境と接する緩衝地帯に無許可で近づく者には、無差別に銃撃を加えるとの布告を出したのは2020年の8月。
それ以降、国境地帯で射殺される人が相次いでいたが、その方針に変化が生じつつある。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
当局は、中国との国境を流れる豆満江沿いの両江道(リャンガンド)金亨稷(キムヒョンジク)郡、金正淑(キムジョンスク)郡、茂山(ムサン)、咸鏡北道(ハムギョンブクト)各地に駐屯する国境警備隊に対して、「無謀な射撃行為を減らすため」と称して、今月18日から実弾の代わりに照明弾を使うよう指示した。
これは、コロナ鎖国以降の過去2年間の国境警備隊の活動に関する総和(総括、評価)の結果、出された指示だ。防疫対策は金正恩総書記の直轄事項であり、中央レベルで討議された可能性がある。
国境警備隊は国境線から1〜2キロのところに緩衝地帯を設定、そこに接近、侵入する者は人間、動物を問わず無条件で銃撃を加えていたが、国と人民の安寧を守るという人民の軍隊の使命から逸脱していると、総和で指摘された。
また、銃で人民を威嚇する行為は、当局が今日強調する良好な軍民関係を壊し、人民の政府に対する反感を高め、対外的にも国のイメージを乱すとも指摘した。
当局は、実弾使用をやめさせる一方で、国境警備と統制が少しでも緩めば、脱北や密輸が増えかねず、国境警備隊の監視業務が困難になるとの懸念も抱いており、銃撃が避けられない状況を分析。停止命令に従わない場合や、抵抗する場合には容赦なく射殺せよとの指示も付け加えた。
それに加えて当局は、国境警備隊に対して、武器にばかり頼らず、党の政策や意図に合わせて、監視カメラなどの機器を使って警戒を強化し、異常発生時には迅速に対応できるよう勤務体制を強化せよと強調した。
なお、国境警備隊と合わせて国境警備のために派遣されている、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の暴風軍団(第11軍団)と第7軍団に対しても同様の指示が下されたかについて、情報筋は言及していない。
今回の措置に関する地域住民の反応、動きはまだ伝えられていないが、実弾をできる限り使わないようにしていることが知れ渡れば、長らく控えていた密輸に乗り出す地域住民が増えることも考えられる。
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