金正恩氏「実の叔父」処刑後の大粛清をいまだに継続中
韓国紙・朝鮮日報は先月末、北朝鮮の代表的な米国通と知られていた韓成烈(ハン・ソンリョル)外務次官の失脚が確認されたと伝えた。韓国統一省が最近発行した「2019北朝鮮人名録」から、韓成烈氏の名前が消えており、これについて韓国政府の消息筋が「昨年下半期に、韓成烈氏の身辺に異常があったという情報を関係機関から伝えられ、これを反映した」と説明したという。
おぞましい実態
同紙はこれを巡り、「韓成烈の失脚を連座という観点から分析する見方もある」と伝えた。
韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使は、2017年2月に行われた北朝鮮戦略センターのインビューで「2013年に処刑された(金正恩委員長の叔父に当たる)張成沢(チャン・ソンテク)氏の事件に連座して、韓成烈次官の姻戚が粛清された。娘婿と孫も収容所へ送られた」と語っている指摘。「『張成沢の残党』を一掃する作業は現在進行形ということだ」と解説しているのだ。
張成沢元党行政部長の処刑に続き、北朝鮮では大規模な粛清が行われた。その過程では、北朝鮮権力層のおぞましい実態も明らかになった。
北朝鮮では、有名女優が権力者の妻になったり愛人になったりすることが多いが、目立つ存在であるだけに、粛清の巻き添えになって命を落とすことが少なくない。
張成沢氏の処刑に際してはそれに加え、彼の「ライン(系列)」とみなされた外交官も数多く粛清された。そうした人々が復権したという話は聞こえてこないから、大粛清はいまだに続いているということになる。
朝鮮日報は、北朝鮮の事情に詳しい消息筋の話しとして「昨年9月、韓成烈氏が局長級の幹部5人と共に『革命化処罰』を受け、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の剣徳(コムドク)鉱山で思想教育中」であるとも伝えた。
革命化とは再教育のことで、農村に下放されたり党学校で思想教育漬けにされたりと様々な形があるが、鉱山送りはなかなか厳しい処分だ。
失脚の理由として、同紙は他にも「金正恩労働党委員長に上げた朝米首脳会談関連の提案書が、党の方針に背いていると批判されたらしい」 「対米窓口役を長く務め、『米帝のスパイ』のような疑いをかけられやすかった」などの説を紹介しているが、米朝関係がこれだけ大きく動いている時期に、外交当局の中枢がそれほど荒れた状況になるとはなかなか想像しにくい。
同紙はさらに、別の消息筋の話として、かつて北朝鮮外交のエースだった姜錫柱(カン・ソクチュ)が死亡して以降、韓成烈氏ら彼の系列だった外交官らの地位が下がり、今は李スヨン党副委員長の系列が主流派を占めていると指摘。両者の間で勢力争いが起きているとの情報も伝えている。
ただ、李スヨン氏が北朝鮮権力層の中でも特別に洗練された人物として知られ、部下への気配りも欠かさないとされていることを考えると、これもまた容易には納得しにくい。やはり、金正恩氏の個人的な怨恨が込められている、張成沢氏の一件が何らかの影響を与えているようにも思えるのだ。
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