「死体になっても連れ戻せ」金正恩氏、工作機関将校の脱北で厳命
北朝鮮の工作機関・敵軍瓦解工作局(敵工局)所属の将校が亡命に失敗し、北朝鮮側によりロシア・ウラジオストクで監禁されていると伝えられる中、金正恩総書記が直接、この将校を無条件で連れ戻すよう厳命していたことが、韓国デイリーNKの取材でわかった。
この将校は、敵工局傘下の563部隊126部に所属するチェ・グムチョル少佐。米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)によれば、昨年7月にウラジオストクで北朝鮮の支配下から離脱し、亡命を準備していたが、同9月20日にロシアの警察により連行された。
北朝鮮のデイリーNK内部情報筋によれば、送還命令は金正恩氏が決裁する「1号」批准命令として1月中旬に下された。命令には「精神が完全でないか、死亡していても必ず送還し、チェ少佐の所在地が外部に露出しないように徹底した保安を維持しなければならない」との内容が含まれていたという。
北朝鮮は2020年1月、新型コロナウイルス対策として国境を封鎖して以降、中国などで摘発された脱北者の送還を受け入れていないが、チェ少佐に関しては「最大限早く送還するよう指示する内容も含まれていた」という。
敵工局は対韓国の心理戦を主任務とし、海外では韓国に対するサイバー攻撃や、ハッキングによる仮想通貨の窃盗にも関わっている可能性がある。金策工業大学を卒業したチェ少佐は、暗号技術などITの専門家と伝えられている。
ただし情報筋によると、ロシアにおけるチェ少佐の役割は、現地に派遣された北朝鮮労働者と駐在員の満了したビザと旅券を管理し、書類を偽造してロシア当局から延長許可を受けることだったという。ロシアに駐在する北朝鮮の保安当局者らは当初、チェ少佐の離脱を初級将校の単純な脱北行為と見て、現地で処理すべきと判断。金正恩氏にまで報告が達したのは、12月のことだったという。
だが、チェ少佐がIT専門家として軍に勤務しながら集めた機密情報をデータ化し、これを事前に脱北協力者を通じて引き出していたことが発覚し、北朝鮮当局はチェ少佐の脱北企図を非常事態と認識したものとみられる。
情報筋は「1号批准命令が下された以上、チェ少佐が解放される可能性はなく、すでに身体的あるいは精神的に正常ではない状況ではないか」と指摘。「1号批准まで通達された事案なので、直ちに死刑を執行できるが、チェ少佐が流出させた資料の行方によっては日程が変わる可能性がある」と話した。
一方、別の高位情報筋によると、国家保衛省が最近、豆満江(トゥマンガン)沿いの朝ロ国境地帯に派遣組を急派し、身柄引渡しの準備に入ったという。
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