国境地帯で射殺される北朝鮮国民が急増している
北朝鮮当局は昨年9月、新型コロナウイルスの国内の流入を防ぐために国境警備を強化するとし、国境から1〜2キロの幅の緩衝地帯を設定し、許可なく近づけば人も動物も無条件で銃撃するとの布告を下した。それ以降、実際に射殺される人が後を絶たない。
一例を挙げると、先月5日から12日まで朝鮮労働党第8回大会の期間中に、平安北道(ピョンアンブクト)の国境では、脱北または密輸しようとした人に銃撃が加えられ、3人が死亡し、2人が負傷した。
平安北道の対岸には、1400キロに達する中朝国境に接する最大の都市、丹東があり、観光客も多く訪れることから、銃撃を行った場合、情報が海外に伝わってしまうリスクが非常に高い。そのせいか、北朝鮮はなるべく銃撃を控えるものだった。
まさにその丹東の向かい、平安北道の新義州(シニジュ)で、何の罪もない男性が国境警備隊に射殺された。
現地のデイリーNK内部情報筋によると、事件が起きたのは今月初め。家で飼っていた山羊が逃げ出したので、飼い主が追いかけたが、知らぬ間に緩衝地帯に入ってしまい、銃撃されたというものだ。国境警備隊は飼い主を撃ち殺した上で、山羊をそのまま奪い去ったという。これでは単なる強盗殺人だ。
現地住民は、下手に国境に近づくと殺されるかも知れないと、恐怖と不安を覚えつつ、国境警備隊のやり方はひどすぎると非難の声を上げている。
「人の命は山羊の命以下だ」
「人民を守るはずの軍隊が、人民を撃ち殺すなんて。そんな軍隊があってたまるか」
「人民を撃ち殺しておいて、山羊だけ連れ去るなんて。どうせ食べるためだろう」
(地域住民)
情報筋によると、今年に入ってから緩衝地帯で人が射殺される事件が既に3件も起きていた。いずれも脱北や密輸目的ではなく、知らずに緩衝地帯に足を踏み込んでしまって射殺された事例だが、4人目の不幸な犠牲者が出てしまった。
国境警備隊や、国境警備強化のために派遣された朝鮮人民軍の特殊部隊「暴風軍団」や第7軍団が、各地で無辜の市民を撃ち殺す事例が相次いでいる。
両江道(リャンガンド)金亨稷(キムヒョンジク)郡では昨年10月、小児マヒを患って障害を持つ40代女性が、夜間通行禁止令が出ているのを認識できずに、国境を流れる鴨緑江に水を汲みに来て射殺される事件が起きている。
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