「核があってこそ国を守れる」ウクライナ侵略巡り北朝鮮高位層で広がる
北朝鮮はロシアのウクライナ侵略に絡み、外務省報道官が「ウクライナ事態の根源は米国と西側の覇権主義政策」にあるとの認識を示している。その一方、侵略そのものについて、同国メディアは一切報じていない。
だからといって、北朝鮮でこの事実が全く知られていないわけではなく、幹部に対してはある程度の情報が伝えられているようだ。それを聞いた幹部からは「核を手放してはならない」という声が上がっているという。
デイリーNKの北朝鮮国内の高位情報筋は、「ウクライナが核を持っていれば戦争が起きただろうか」「ウクライナ事態は、核を保有してこそ誰も侵攻できないという現実を見せつけている」と述べた。
別の高位情報筋も「核があってこそ他の国から侵攻されない」「結局、体制を守る道は、経済的支援を受けることではなく、自衛的国防力を強化すること」だと述べた。
ウクライナは、旧ソ連から受け継いだ核兵器を、1994年のブダペスト覚書に基づいて放棄し、体制の保障と経済支援と引き換えにロシアに返還し、核拡散禁止条約に加盟した。そもそもウクライナは、核兵器を維持する能力を持ち合わせていなかったが、北朝鮮の幹部らは、この核放棄がロシアの侵略を招いたと見ているのだ。
一方、幹部を対象にして定期的に行われる政治講演会では、上述の通り「米国の覇権主義がウクライナ事態を招いた」との説明がなされ、侵略した側のロシアのことについてはふれていないとのことだ。
反帝国主義を社会統合の手段、政治的価値として活用してきた北朝鮮としては、ロシアが侵略したということを幹部や一般国民に知らせつつ、自らの立場を説明するのは荷が重いようだ。
一般国民の間でロシアのウクライナ侵略について情報が広がっているかについて、情報筋の言及はないが、韓国や米国、中国のラジオを密かに聞いている人が少なくないことから、ある程度は認識されているものと思われる。
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