北の貿易会社、石炭の対中輸出再開の動き
北朝鮮の一部の貿易会社が、石炭輸出の再開に向けて動き出した。4月と5月に予定されている南北、米朝首脳会談を契機に制裁が緩和されることを期待してのことだ。
中国のデイリーNK情報筋によると、労働党系の朝鮮金剛貿易総会社、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)系の貿易会社などが、石炭輸出の再開に向けて準備に着手した。米朝首脳会談がうまく行けば、制裁が緩和されるだろうとの期待を込めて、あらかじめ準備しておこうというものだ。
その一環として、炭鉱で使うベルトコンベア用のベルト数千メートル、ヘルメット数百個、カンテラを中国の遼寧省から大量に輸入した。
事あるごとに嫌がらせのように検査を強化していた中国の丹東税関も、今回は問題なく通関させたという。
「炭鉱のコンベヤベルトは軍事用に転用できるとの懸念から、丹東税関が輸出を制限することもあった。そのため今年2月に輸入する時には、中国の漁船を借りて密輸するしかなかったが、今回は問題なく堂々と通関できた」(情報筋)
中国商務省は今のところ、制裁緩和について公式の発表は行っていない。また、丹東税関は今月7日、「積荷がない回送車」を偽って北朝鮮国内で加工したつけまつげやカツラを中国に持ち出そうとしたトラックを摘発し、それ以降検査を強化した。
その翌日に米朝首脳会談の開催が発表されたため、検査が再び緩和された可能性もある。
朝鮮金剛貿易総会社は、労働党財政経理部の傘下にある貿易会社で、最近は軍より権限が強いと言われており、金正恩党委員長の意図を素早く読み取って対処する能力を持っている。
14日の時点で、南北、米朝首脳会談の件について北朝鮮の国営メディアは一切報じていないが、権力中枢に近い企業だけあって、情報を入手しているようだ。
「同じ貿易会社でも力のない会社は公式の方針が出されるまでは何も把握できないが、金剛貿易総会社のような力の強い会社は国内外の情勢はもちろん、政府の動きもよく知っている」(情報筋)
力が強いと言っても独断で動けるわけではない。情報筋は、輸出準備の再開は上からの指示によるものだと見ている。
中国商務省は昨年8月、安保理制裁決議2371号に基づき、北朝鮮産の石炭などの輸入を完全に禁止するとの通告を出した。それにより、地下資源の輸出に関わっていた貿易会社は大変苦しい立場に追い込まれていた。
もし石炭の対中輸出が再開されれば、北朝鮮当局は喜ぶだろうが、庶民にとっては必ずしも喜ばしいことではないかもしれない。経済制裁により輸出ができなくなった石炭を国内の発電所に回したことで、一部地域で電気供給やトロリーバスの運行が概ね正常化していたが、「飢餓輸出」の再開でささやかな幸せが消えてしまうかもしれないからだ。
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