米朝会談に潜む金正恩氏「トイレ問題」の不安
北朝鮮の金正恩党委員長が、自身の会談要請を受諾したトランプ米大統領の決断を吟味しているという。
訪米中の康京和(カン・ギョンファ)韓国外相は米メディアとのインタビューで、北朝鮮側からいまだ公式な発表が出ていないことについて「北朝鮮の指導者は現在、吟味を重ねているのだと思う」と述べた。しかし、韓国の特使を通じての提案ではあっても、米朝首脳会談を要請したのは金正恩氏だ。もしかすると金正恩氏はトランプ氏の意外な決断の早さに戸惑っているのかもしれない。それに加えて会談が実現した時の開催場所などについても悩んでいるだろう。
トイレ問題
筆者は、金正恩氏は会談を望んでおり、実現の可能性は高いと見ている。議題となるのはもちろん非核化の問題だが、北朝鮮では、どこを着地点にするのか真剣な議論が行われているだろう。
加えて、開催場所の問題が出てくる。これは金正恩氏にとっては悩ましいところだ。
実は、金正恩氏は北朝鮮の最高指導者になって以降、外遊はおろか外国の国家元首と会うこともしていない。国内では頻繁に現地指導で地方を訪れているが、特殊な動線の問題から多大なストレスを強いられており、とりわけトイレ問題は深刻だとされる。
金正恩氏としては平壌での開催がベストだろう。移動のストレスもなく、なによりも建国以来70年以上にわたって対立してきた米国の指導者を自国に呼び寄せることになるのだ。実現すれば、祖父・金日成主席と父・金正日総書記を超える「偉業」を達成したことになる。
ただしホワイトハウスは、平壌開催を望まないと言明している。となると南北軍事境界線がある板門店(パンムンジョム)という選択肢もあるが、ここはやはり中立的な立場にある第三国で行われる可能性が高いのではないか。
実際、北朝鮮の外相がスウェーデンやフィンランドを歴訪しており、開催場所について当該国に相談している可能性もある。
一方、金正恩氏は米国での開催も選択肢の一つにしているかもしれない。しかし「血なまぐさい人間殺りく行為もためらわない人権蹂躙の元凶、平和の絞殺者」などと過激なレトリックで非難してきた米国に、のこのこ出ていくようでは国内的に面子が立たないだろう。金正恩氏は極めて自尊心が強い性格として知られており、彼のプライドを傷つければ、存在自体が消し去られかねない。
ただし金正恩氏が自身のプライドを保つことが出来るのは、北朝鮮国内に限った話であり、トイレ問題しかり、海外では我が物顔で振る舞うことは出来ない。そうした意味で米朝首脳会談が朝鮮半島以外で開催されるならば、金正恩氏は己の立ち位置を知る良い機会になるかもしれない。
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