金正恩氏が「飲み会禁止令」…軍幹部14人をまとめて処刑も
北朝鮮当局が恐れているものの一つが、口コミだ。国民に知られたくない都合の悪い情報ほど、口コミを通じてあっという間に全国に広がってしまう。たとえば1990年代にあった国民虐殺や、最近のマンション崩壊事故なども、すっかり公然の秘密となっている。
これが体制を揺るがす流れにつながるのを、極度に恐れているのだ。
当局は、2月末の米朝首脳会談が「決裂した」という話を抑えるために、口コミの発信源となる市場で集まってうわさ話をすることを禁止した。
今度はそこから一歩踏み込んで、そもそも集まること自体を禁止する方針を示した。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、先月初めに人民班(町内会)を通じて「集まりを持つな」との指示が下された。「何人かが集まって酒を飲んだりトランプに興じたりするのは、社会主義生活様式に反する資本主義生活様式として処罰される」(情報筋)というのだ。
違反者がどのような罪に問われるは不明だが、北朝鮮の刑法にはこのような項目が存在する。
第211条(虚偽風説捏造、流布罪) 国家に対する不信を造成しうる虚偽風説をでっち上げたり、流布したりして社会的混乱を与えたものは、1年以下の労働鍛錬刑に処す。
過去にも当局は人が集まることを嫌い「飲み会禁止令」や「世間話禁止令」などを出してきた。それは娯楽の少ない国に住む庶民からささやかな楽しみを奪うものだ。
金正恩党委員長は過去に、飲酒に絡んで朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の幹部を処刑したことがある。2012年には、「故金正日氏の追悼期間中に飲酒した北朝鮮軍の高級幹部14人を迫撃砲で処刑した」との情報も伝えられた。迫撃砲というのは、本来は敵の陣地を攻撃するのに用いられるもので、人間のような小さな目標に命中させるのは難しい。しかし威力が大きいため、至近距離に着弾しただけで人体はバラバラになってしまう。これは軍紀の乱れに対する処罰というより、軍に対して恐怖心を植え付ける目的からのものだったと思われる。
禁止されたのは飲み会や世間話だけではない。
先月に入ってから、一般国民に対する統制が以前にもまして強化された。2月末にベトナムのハノイで行われた米朝首脳会談以降、全国各地から「大勢が逮捕された」とのうわさが流れ、住民は震え上がり、ちょっとした集まりも避けているという。
平壌、咸興(ハムン)、清津(チョンジン)では、宗教行為、売春、違法映像の流通以外にも、米朝首脳会談についての批判をしたことで逮捕されるという事件が複数起きているというのだ。
これは最高指導者に対する批判とみなされるとあって、コネやカネで解決できるものではなく、重い刑罰は避けられないだろうと情報筋は見ている。一方で、飲酒や遊興で逮捕された場合には後に釈放はされるものの、高額の罰金を要求されるという。
別の情報筋によると、その額は少なくとも中国人民元で数千元だ。(1000元は約1万6600円)取り締まりを口実に庶民の懐からカネを搾り取ろうというものなのか、実際に社会的に危険とみなしているのか。住民は疑いの目で見ている。
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