金正恩「拷問部隊トップ」を待つ運命…米朝決裂で幹部ら責任追及
ベトナム・ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談が物別れに終わったことを受けて、金正恩党委員長が3人の部下を問責したと、韓国紙・朝鮮日報が6日付で伝えた。
同紙によれば、問責の対象となったのは事前の実務交渉を担当した金赫哲(キム・ヒョクチョル)国務委員会対米特別代表と金聖恵(キム・ソンヘ)統一戦線部統一策略室長、そして首脳会談で金正恩氏の通訳を務めたシン・ヘヨン通訳官だ。
金赫哲氏と金聖恵氏は、米国側の意向を正確に把握できなかったことを咎められ、シン・ヘヨン氏は通訳ミスがあったためだという。金赫哲氏と金聖恵氏はプロの外交官と情報官僚であり、交渉の雲行きを見ながら、自分たちがどのような立場に置かれるか、覚悟を決めていたかもしれない。一方、今回が金正恩氏を担当する「1号通訳」としてのデビューだったシン・ヘヨン氏は、さぞや激しく緊張し、動揺したことだろう。
金正恩氏が2015年8月、視察したスッポン養殖工場の管理不備に激怒し、支配人を処刑してしまったことは、その際の動画が放映されたこともあり北朝鮮国民なら誰でも知っている。
自らの運命を悲観するシン・ヘヨン氏の心情は、果たしてどのようなものだろうか。もっとも、対外的な目もあることから、彼ら3人は処刑や革命化(再教育)などの罰を与えられているわけではないようだ。
一方、この3人とは別に、将来が不安視される幹部もいる。国家保衛省の元トップで、2017年に失脚した金元弘(キム・ウォノン)氏だ。国家保衛省は、拷問などの手段を用いながら、北朝鮮の恐怖政治を支えてきた秘密警察だ。
すでに失脚している金元弘氏だが、北朝鮮から解放直後に死亡した米バージニア大学生、オットー・ワームビアさん(当時22歳)がスパイ容疑で拘束された2016年1月には、同省トップの地位にあった。金正恩氏は今回の首脳会談でトランプ米大統領に対し、ワームビアさんの件について「この件を非常によく知っているが、後になって知ったのだ」と語ったという。
この金正恩氏の言葉が事実かどうかはさておき、彼は米国人に対する人権侵害を、世界が注目する場で釈明させられたのだ。そしてその甲斐もなく、会談は物別れに終わった。
さらに悪いことに、トンランプ米大統領は会談後、金正恩氏の釈明を受け入れたことを米世論から批判されてしまった。今後、金正恩氏と向き合うことになる米国の大統領は、この問題で厳しい姿勢を取らざるを得ないかもしれない。
そうなれば、ただでさえ難しい米朝対話が、さらに膠着してしまう可能性もある。
これは、金正恩氏の怒りの矛先が、「ワームビア問題」の端緒を作った金元弘氏に向くのに十分な状況と言える。果たして現在、金元弘氏は北朝鮮国内でどのような環境に置かれているのだろうか。
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