ミサイル爆発で死者発生「失敗隠し」焦る金正恩
北朝鮮は先月16日、首都・平壌郊外の順安(スナン)国際空港付近から、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」を発射したが、直後に空中で爆発して失敗。韓国の情報当局によると、平壌周辺にはミサイルの破片が降り注いだという。
またその際、破片は北朝鮮の工作員養成機関「金正日政治軍事大学」にも落下し、2名が死亡したとの情報も出ている。
北朝鮮のミサイル発射で死者が出たとする情報は今回が初めてではないが、首都近郊に破片が降り注いだというのは例がなく、北朝鮮当局も収拾に躍起になったようだ。
デイリーNKの現地情報筋によると、北朝鮮当局は16日から市外から平壌への出入りの統制を強化。特に、順安と隣接する平城(ピョンソン)から平壌に入るチェックポイントの警備を増やし、一部の人々は平壌入りが許可されなかったという。
北朝鮮では例年、2月16日の光明星節(金正恩総書記の生誕記念日)前後に特別警備期間が設けられた後、4月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)まで警備が緩む。時ならぬ統制強化に、ミサイル発射失敗を知らない市民たちまでもが「何事か」とアンテナを立てる結果になったようだ。
一方、当局は順安区域に位置する姜健(カンゴン)総合軍官学校(陸軍士官学校)をはじめとする各機関に、ミサイルの破片を徹底的に捜索するよう指示したという。その範囲は、発射地点を中心に半径約15キロに及ぶ。
ミサイルの破片が軍事機密であるのはもちろんのこと、発射が失敗した事実を国民に悟られまいとする意思がうかがえる。
金正恩総書記は本来、実験の失敗に対しては寛容だと言われる。2016年には金正日時代に開発された中距離弾道ミサイル「火星10」(ムスダン)の発射で失敗を繰り返しながら、技術陣を叱咤激励してより長射程のミサイル開発を成功させた。
だが、国家として最高指導者の無謬性を宣伝している以上、失敗が国民に広く知られるのは負担に感じられるのだろう。空中爆発を目撃した金正恩氏の焦りはいかばかりだったろうか。
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