墓石販売で運営資金を調達する北朝鮮のセメント工場
北朝鮮の金正日総書記は1984年8月3日、平壌市軽工業製品展示場を現地指導した際に「廃材や副産物を使った人民消費品(生活必需品や食料品)生産運動を全群衆的に拡大実施せよ」との指示を下した。これを8.3人民消費品創造運動、製造された製品を8.3製品と呼ぶ。
首都・平壌郊外のセメント工場は、変わった8.3製品を作って、工場の運営資金を調達している。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、「今月5日の清明節を迎え、平壌郊外にある勝利里(スンホリ)セメント工場の焼成職場では、工場で生産されるセメントを使って床石(墓石)を8.3製品として製造して、市場に卸している」と伝えた。
この床石とは、墓の前に置かれた石製のテーブルのようなもので、先祖へのお供え物を並べるのに使われる。石の代わりにセメントを使ったものは2万北朝鮮ウォン(約360円)で販売されている。
購入者の要望に応じて個人の名前、死亡日などをノミで刻み込み、赤い文字にする。これには1万北朝鮮ウォン(約180円)の追加料金がかかる。
さらに、工場では墓石の配達も請け負っており、墓地のある山まで運ぶ場合、4キロあたり3000北朝鮮ウォン(約56円)の料金がかかる。このようにして得た利益は、工場の運営資金として使われる。
平安北道(ピョンアンブクト)徳川(トクチョン)の情報筋は、徳川炭鉱そばの市場で墓石や床石を販売する男性たちがいて、いずれも周囲のセメント工場の8.3作業班所属の労働者だと伝えた。
この8.3作業班とは、工場の運営資金を得るために市場で売る8.3製品を製造、販売する部署で、墓石の需要が増えるこの時期には、迅速に注文をさばいていく。買い求める人には、昨年亡くなった人の喪主や、墓地を改葬する所有主もいる。
費用は平壌の工場と同じレベルだが、こちらではコメや燃料などの物々交換でも購入可能だ。
ちなみに、北朝鮮では韓国と違って土饅頭がないという。1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の時期、死者の急増に伴って山が墓だらけになったことから、金正日総書記は、都市の景観を乱すとして土饅頭と墓石をなくせとの指示を下したという。それ以降、墓は平らになり、墓石も姿を消したが、その代わりに床石に故人の名前と死亡日を刻むようになったという。
Copyright(C)DailyNKJapan 2014
「北朝鮮」をもっと詳しく
「北朝鮮」のニュース
-
日米など北朝鮮制裁の監視継続を求める共同声明 専門家パネルは事実上廃止5月2日12時38分
-
「朝鮮王朝時代と何が違うのか」多額の借金に苦しむ北朝鮮の農民5月2日12時6分
-
迎撃ミサイルの拡充強調 米海軍長官、中国・北朝鮮に対応5月2日10時8分
-
Pythonベースのトロイの木馬配布するサイバー攻撃確認、北朝鮮関与の疑い5月2日8時56分
-
北朝鮮監視の必要性強調 50カ国共同声明5月2日5時40分
-
「女子生徒の学習意欲が低下」北朝鮮、金正恩の単純労働強制で5月2日5時10分
-
男女26人が葬られた、金正恩「温泉リゾート」の秘密5月2日4時1分
-
記者会見する拉致被害者家族ら5月1日17時4分
-
国連「専門家パネル」任期切れ 北朝鮮制裁の監視が弱体化5月1日16時45分
-
北朝鮮の金正恩氏とシリアのアサド大統領がメッセージ交換5月1日15時26分