トイレや豚小屋の地面の土を畑に撒く北朝鮮式の穀物増産
北朝鮮の農業用語に「12地面掘り」というものがある。豚小屋、牛小屋、鶏小屋、人間の使うトイレ、竈の底、沼の底、肥料倉庫など12種類の地面の土には、窒素やリンなど肥料成分が含まれているとして、そこの土を掘り起こして畑に運ぶということを指す。
慢性的に化学肥料が不足している北朝鮮では、人糞や家畜の糞と藁などを混ぜて発酵させて作る堆肥も使用しているが、それでもまだ足りないとして、家畜小屋の地面の土を畑に撒こうという苦し紛れのやり方だ。
農繁期を控え、北朝鮮ではこの「12地面掘り」に人々が動員されているが、ともかく評判が悪い。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
各協同農場に最近、農村指導小組が派遣され、12地面掘りの実態を調査した。国から指示されただけ進められなかった農場の幹部や農場員は処罰を受けることになった。
北朝鮮の農業は機械化が遅れているうえ、機械があっても動かす燃料が不足しているため、働き手が減ることは作業の遅れ、ひいては収穫の減少に繋がりかねない。それもあって、「彼ら(指導小組)は農業を手伝いに来たのか、人を捕まえに来たのかわからない」と怨嗟の声が上がっている。
農民は何らかの肥料が必要であることは理解しているものの、1ヘクタール当たり1トン以上の増産という国の指示を達成するには、ともかく化学肥料が必要だ。住民を総動員してトイレや豚小屋の地面の土をかき集めさせ、畑に散布させたところで、どれだけの効果があるのかわからないと、このやり方の効果には懐疑的だ。
ちなみに、国の増産指示は、先進国並みの量を求めている。
当局も手をこまねいてみているのではなく、中国から積極的に化学肥料やビニール膜を輸入して農場に供給しているが、どれくらい行き渡っているかは不明だ。
なお、先月21日に発表された中国の海関総書によると、北朝鮮は3月、化学肥料の原料となるリン酸アンモニウムを1012万7350ドル(約13億9300万円)分輸入し、インディカ米の1333万7400ドル(約18億3500万円)に次いで多くなっている。
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