500人死亡「マンション崩壊」惨事で見せた金正恩氏の衝撃の行動
中国国営通信の新華社は8日、北朝鮮の金正恩党委員長が7~8日に遼寧省大連を訪れ、習近平国家主席と会ったと伝えた。両氏は3月下旬に北京で会談したばかりだ。また、北朝鮮の最高指導者は訪中時に列車を使ってきたが、今回は空路で大連入りした。
わずか1カ月余りで同じ外国首脳と会談するのも、飛行機での訪中も、以前の北朝鮮にはなかった大きな「慣例破り」と言える。
実は、金正恩氏は父・金正日総書記から権力を継承して以降、このよな「慣例破り」をいくつも見せてきた。
わかりやすいところで言えば、夫人の李雪主(リ・ソルチュ)氏を首脳外交の場に同伴させていることがある。金正日氏は自分の妻をまったく表に出さなかったし、祖父・金日成主席の後妻・金聖愛(キム・ソンエ)氏が政治の表舞台に立った期間は、ごく短かった。
また、北朝鮮のメディア戦略にも変化が見える。金正日時代まで、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)はなかなかその全容をうかがわせない、謎に満ちた存在だった。ところが金正恩時代になって以降、北朝鮮メディアは最新兵器の写真を次々に掲載。弾道ミサイルの発射シーンも惜しげなく公開した。一時は朝鮮労働党機関紙の労働新聞が、まるでミリタリーマガジンのようになってしまったほどだ。
そしてもうひとつ、金正恩時代になってから、北朝鮮の権力が国民に「謝罪」を行った例を挙げることができる。
2014年5月15日、北朝鮮の首都・平壌で、約500人が犠牲になったとされるマンション崩壊事故が起きた。北朝鮮では「速度戦」の名の下に、無理な工期のごり押しによる手抜き工事が横行。この手の事故が数多く起きている。
そういった事例の中においても、このマンション崩壊の現場はとくに凄惨なものと言われる。遺体の収容作業すら行われないままガレキの撤去が行われ、ちぎれた手足があちこちに転がっていたとされる。
それほどの惨事が起きようとも、以前の北朝鮮当局ならば、徹底的に隠ぺいを図っただろう。ところが金正恩氏は、犠牲者の遺族を集めた場で建設工事の責任者である当局幹部に頭を下げさせ、その写真を労働新聞に掲載させたのだ。
この行動の裏には、金正恩氏なりの計算もあったことだろう。だとしても、これは衝撃的とさえ言える出来事だった。
そして2017年1月1日、金正恩氏は自らの肉声で発表した「新年の辞」の中で、自分の「能力不足」を詫びる。次なるは、朝鮮中央通信が配信した公式訳の一節である。
「新しい一年が始まるこの場に立つと、私を固く信じ、一心同体となって熱烈に支持してくれる、この世で一番素晴らしいわが人民を、どうすれば神聖に、より高く戴くことができるかという心配で心が重くなります。
いつも気持ちだけで、能力が追いつかないもどかしさと自責の念に駆られながら昨年を送りましたが、今年は一層奮発して全身全霊を打ち込み、人民のためにより多くの仕事をするつもりです」
こうした姿勢に込められた金正恩氏の真意が、どのようなものであるかはわからない。ただひとつ言えるのは、金正恩氏が慣例や前例にとらわれることなく行動できる、自立心の強い指導者であるということだ。
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