処刑映像を学校で回し見…金正恩式「暴走教室」の末期症状
韓国の政府系研究機関、統一研究院は11日、「北朝鮮人権白書2020」を公開し、北朝鮮においては依然として、恣意的かつ頻繁な死刑執行が続いており、こうした実態は国際人権規約(自由権規約)に抵触すると指摘した。その一方で、公開処刑の頻度が低下し、犯罪に対する調査過程での拷問も減少傾向がうかがえるとしている。
金正恩の「動画」
白書は、韓国入りしてから日の浅い脱北者118人を対象にした面接調査と、北朝鮮の公式文書、北朝鮮が国連人権機関に提出した報告書などを基にまとめられた。ただ、調査は昨年に行われたが、証言の多くは2018年以前の事象に関するものであり、白書の内容と北朝鮮国内の最新情勢にはいくらかの乖離があるようだ。
実際、北朝鮮は国際社会からの人権問題追及を気にしてか、一定の期間、公開処刑をあまり行っていなかった。それが再び活発化したのは、2019年の2月頃からのことだ。
それでも、1990年代と比べると公開処刑の頻度はかなり減ったように感じるのだが、その一方で、今回の人権白書には次のような気になる記述があった。
「北朝鮮離脱住民である某氏は2014年、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)市内にある広場で、韓国ドラマの流布及び麻薬密売の罪状により1人が公開処刑され、本人は直接目撃しなかったが、学校でその動画を回し見したと証言した」
この表現だと、当局が「動画」を見るよう生徒たちに強いたのか、あるいは個人が持ち込んだものを友人同士などで回し見したのかは判然としない。どちらかといえば後者のような気がするが、それでも衝撃的な話だ。映像を使用した恐怖政治の強化は、金正恩党委員長の手法でもある。
同氏は2016年にスッポン養殖工場を視察した際、管理不備に激怒。支配人を銃殺させ、その視察時の映像をテレビで放映させたことがあるのだ。またそれ以前にも、金正恩氏は繰り返し、残酷な手法での公開処刑を行ってきた。「処刑動画」の回し見が、仮に生徒らの個人的な暴走だったとしても、その環境を与えてきたのは金正恩氏の恐怖政治に他ならないのだ。
現代の日本で暮らしていると、このような体験を強いられた人々がどのような心の傷を負い、それが社会にどのような影響を与えるかをリアルに想像することは難しい。
ただ、金正恩体制の退廃は確実に、現在の北朝鮮を生きにくくしているだけでなく、将来の北朝鮮社会にも大きな負の遺産を残すことになるだろう。
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