金正恩氏の命令を「スルー」している北朝鮮の軍隊
米朝首脳会談の「成功」に浮かれる北朝鮮で、金正恩党委員長にとって頭の痛い問題が持ち上がっているもようだ。
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋が米政府系のラジオ・フリー・アジアに語ったところよると、最高司令部(朝鮮労働党中央委員会)は軍の各部隊に対し、「党の政治事業を強化し、すべての幹部と兵士がみだりに平和の幻想を持たないように思想教育を強く推し進めよ」との指示を下した。
南北首脳会談と米朝首脳会談のニュースに接した兵士たちが、平和がひとりでにやってくると思い込み、戦闘準備をおろそかにしたり、規律が緩んだりすることが起きないようにするためのものだという。
そうでなくとも、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の規律はメチャクチャになっている。食料が横流しされて兵士らは餓死の危機に瀕しており、部隊内では窃盗や性的虐待が横行。
兵士が最前線で韓国に亡命する事件も頻発している。
韓国と米国に非核化を約束した金正恩氏にとって、軍の規律はより重要になっている。核兵器という「切り札」が使えなくなる以上、安全保障で頼れるのは軍の一般部隊以外になくなってしまうからだ。
ところが、軍の現場は、上からの指示を守ろうとしない。情報筋によれば、各部隊では、思想教育の計画は立てるものの実行していないか、実行するふりをしているだけの場合が多いという。下級部隊の指揮官の間では、中身のない指示を乱発するだけの上層部に対する不満がたまっているとのことだ。
それはそうだろう。「腹が減っては戦もできぬ」という言葉通り、北朝鮮軍の現場は思想教育どころではないのだ。北朝鮮当局が最近、中国から大量の食糧を調達しているとの情報があるが、それも軍の兵士らを餓死から救うためだとされる。しかし、餓死しない程度の食糧があったところで、軍の状態を正常に保つのに十分であるとはとうてい言えない。
そう考えてみると、非核化を最大の議題とした南北首脳会談や米朝首脳会談は、金正恩氏にとってやむにやまれぬ選択であったのかもしれない。
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