「米朝会談の決裂直後に金正恩が公の場で泣いた」韓国議員が証言
韓国の野党・正義党の金鍾大(キム・ジョンデ)議員は24日、CBSラジオの番組「キム・ヒョンジョンのニュースショー」に出演し、「韓米情報筋から『(決裂した)ハノイ米朝首脳会談直後に金正恩委員長が公式の席で涙まで流した』という噂を聞いた」と明かした。
ちなみに金鍾大氏は、国会国防委員会の所属だ。このエピソードについては「事実かどうかは確認していない」としながらも、「精通する情報筋から聞いた」と話した。
金正恩氏は打算に長けている一方で、激情型だとも言われる。現地指導中に怒りを爆発させ、スッポン養殖工場の支配人を処刑。自ら激怒する場面の映像をテレビで公開させたエピソードからも、そのことはうかがい知れる。
また、米国から人権問題で制裁指定された際にも、その荒れ方は手が付けられないほどだったとされる。そのようなキャラクターであるだけに、米朝首脳会談の決裂にショックを受け、あるいは怒りの余りに「泣いた」としても不思議ではない。
実際、金正恩氏は北朝鮮メディアで、自身の泣き顔を公開したことがある。2015年12月、交通事故で死亡した金養建(キム・ヤンゴン)朝鮮労働党書記の遺体と対面した際の写真(上)がそれだ。
ちなみに金養建氏は、韓国との交渉経験も豊富な北朝鮮外交のキーパーソンのひとりだったが、その死因については「謀殺説」も取り沙汰された。しかし筆者は、本当に事故死だった可能性が高いと考えている。北朝鮮では、金正恩氏自身も「走り屋」と知られている通り、高位幹部がクルマでガンガン飛ばし、事故を起こす例が珍しくないとされるためだ。
本題に戻ろう。これまで述べたとおり、金正恩氏が米朝首脳会談の決裂後に「涙を見せた」としても不思議でない状況があるのは事実だ。
ただし、今回の情報には判断を留保すべき点もある。金鍾大氏はラジオ番組で「どのような席だったかは正確に分からないが、金委員長が『人民が飢えている時に私は景色の良いところを旅行し、いかなる成果も出せなかった』と悔恨の涙を流したようだ」と述べているのだ。
これまで、北朝鮮の最高指導者が公の場で涙を見せた事実が確認された例は少ない。前述した金正恩氏の金養建氏との対面時の礼を除けば、金正日総書記が父・金日成主席の死に涙した姿くらいしか、筆者は記憶にない。
つまり、北朝鮮の最高指導者が自分より「下位」にある者のために涙した(ことが確認された)例は、金正恩氏の1回しかないのだ。それも、涙した対象は権力の中枢にあった最高幹部の死である。
些細なことで部下を処刑し、国民の苦難をものともせず核開発に突き進む指導者が、本当に「人民の飢え」を思って泣いたのか。これは単に、金正恩氏のイメージ戦略として北朝鮮が流した作り話である可能性はないのか。
今のところはとりあえず、判断は据え置いた方がよさそうだ。
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