「生活が苦しくて」北朝鮮の大学教授、違法な送金ブローカー業で摘発
韓国の大学教授の年収は、勤務年数、ポストにより異なるが、国公立、私立ともに平均1億ウォン(約900万円)程度で、大企業の部長クラスの年収と同レベルだ。一方で建設労働者の平均年収はその3分の1程度だ。
一方の北朝鮮だが、最高学府の金日成総合大学の教授の月収はわずか4000北朝鮮ウォン(約50円)。これは北朝鮮労働者のごく平均的な月収だ。旧共産圏の国では、知識労働者より肉体労働者の方が優遇されていた。例えば、制裁が強化される以前、対中輸出で儲かっていた炭鉱、製鉄所の労働者は100万北朝鮮ウォン(約1万2000円)の月給が支払われていた。それが北朝鮮では未だに続いているのだ。
そんな子どもの小遣い銭程度にしかならない薄給に耐えてきた両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)にある金正淑(キム・ジョンスク)師範大学の教授4人が、違法行為を行ってきたことが発覚した。
市民の間には衝撃が走り、大学の検閲(監査)を行う国家保衛省(秘密警察)も唖然としている。その違法行為とは、送金ブローカーだ。
北朝鮮から逃れて韓国にたどり着いた3万人余りの脱北者のうち、半分以上が北朝鮮に残してきた家族に送金している。ただ、合法的な手段で韓国から北朝鮮へ送金するのは事実上不可能であるため、ブローカーが送金を請け負っており、手数料は送金額の4〜5割に達する。教授らがやっていたのはこのような仕事だ。
現地のデイリーNK内部情報筋によると、商行為を禁じられている教授が送金ブローカー業を営むようになったのは、超が付く安月給に加え、大学から支給されていた配給が止まり、生活ができなくなってしまったからだ。
当初は携帯電話を利用したキャッシュレスサービス「チョナトン」で、国内の少額送金を請け負う程度だったが、徐々にエスカレート。韓国や中国に住む脱北者からの送金を請け負うようになった。
大学で行われた検閲で摘発された4人だが、通常の安全署(警察署、旧称保安署)での取り調べをすっ飛ばし、保衛部(秘密警察)で取り調べを受けている。政治犯の処罰と同じプロセスだが、市民に与えた衝撃の大きさを考慮して、重い刑が予想されている。
北朝鮮の大学では、入試、在学中の成績、卒業に至るまで、学生やその親が教授にワイロを支払うのが日常化しているが、一般市民にまでは知られてなかったようだ。
4人だけでなく、道内で携帯電話の違法通話、送金、外国映像の輸入や情報の流出で摘発されたのは合計で42人に達する。検閲は、両江道だけではなく、咸鏡北道(ハムギョンブクト)、慈江道(チャガンド)、平安北道(ピョンアンブクト)の中国と国境を接する4つの道で行われ、さらに多くの人が摘発されるものと思われる。
しかし、検閲の嵐が過ぎ去り、ほとぼりが冷めるころには、また何事もなかったかのように不正行為が復活するだろう。不正を働きカネ稼ぎをしなければ餓死してしてしまうという、問題の根本が改善されない限りは。
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